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俺たち、一斉攻撃します

 さてと、6000バカ近い実力のある相手だ。こちらも最初から全力で行かせてもらうぜ。俺は「馬」を連呼し、モードチェンジの呪文を叫んだ。

「一角昇華、ダバダバダーッ!」

 そして、あれよという間にモードユニコーンへと変化した。


「うむ、それが終点童子を倒したというユニコーンか。軒並みならぬ力があるようじゃが、わしの足もとには及ぶまい」

「それはどうかな、ティンティン丸。俺の真の力を見せてやるぜ」

 意気込んで啖呵を切ったのだが、ティンティン丸は激しく肩を震わせている。どうした、ビビッてうんぽこぽんでもしたくなったのか。失禁するなら、きちんと介護用パンツ履いてからにしろよ。


「貴様、どこでその名を」

 あれ、まさか怒ってる。そういえば、ティンティン丸は自ら名乗ってなかったよな。もしかして、名前を呼んではいけないあの人的な雰囲気なのか。


「あなた、そんな名前でしたの。初めて知りましたわ」

 いや、あんた、仲間のくせに本名知らなかったのかよ。まあ、ティンティン丸なんて名前を堂々と名乗れる方がおかしいが。


「えーマジティンティン!?」

「キモーイ」

「ティンティンって呼んで許されるのは小学生までだよねー」

「キャハハハハ」

 うちの女性陣からも思い切りコケにされてますが。あーあ、どうしよう。温泉の回で出会ったゆでだこおっちゃんよりも激しく顔を赤らめてるぞ。


「初めてだ。このわしをここまでコケにしたおバカさんたちは」

 そう言うや、ティンティン丸の体が金色に輝きだした。おい、やばいぞ、これ。


(馬神様、まさかティンティン丸のやつ)

(モードチェンジしたんだな。わし、ワクワクすっぞ)

 俺は全然ワクワクしません。ステータスを覗いたらかなり絶望的なことになっていた。


オティムコ・ティンティン丸 モードサ〇ヤ人 13932バカ


 2倍以上バカが跳ね上がってるじゃねえか。まさか、とんでもない地雷を踏んでしまったのか。

「わしの兄が親戚一同に混じって飛ばした紙飛行機に書かれていた名前がティンティン丸じゃった。生まれてこのかた五百年、そのあまりにふざけた名前を隠して生きて来たのだが、よもやそれが露呈してしまうとは。こうなれば、貴様らを生きて帰すわけにはいかん」

 怒号とともにティンティン丸は団扇を振るう。すると、いきなり台風並みの暴風が発生し、俺たちを巻き込んだ。こいつ、初っ端からガチの攻撃技使いやがって。またアドマイヤの顔が不細工になってるじゃないか。

「名前を呼んだのが運の尽きじゃったな。この屈辱的な名を呼ばれると、わしの全身の血がたぎるのじゃ」

 モードチェンジのきっかけがそれだったか。今更だけど、アドマイヤが酒乱モードになってから、モードチェンジが恒例になってきてないか。ユニコーンになった俺が言うのもあれだけどさ。


 無駄かもしれんが、このまま反撃せずにやられるのも癪だ。俺は尻を向けるや、

「海王帝邪神の弾丸ポセイディア・バレット

 肛門から無数のバフンウニを連射した。一秒間に五十連発のウニだ。耄碌している天狗がまともに受ければひとたまりもない。


 躱すかと思いきや、それはあっさりと全弾命中した。けれども、ティンティン丸は涼しい顔で低空浮遊している。バカの加護で通じなかったのか。

「残念。貴様が当てたのは残像じゃ」

 そうだ。こいつ分身していたんだった。ええい、しゃらくさい。


「パワーアップしたなら、それだけ養分があるはず。根こそぎいただく」

 主人公側にあるまじき発現をしながら、マン・ドラ子が両手を伸ばす。それはティンティン丸の全身に絡みつき、やつの養分を吸収していく。

 そのはずであったが、触手が巻き付いたと思った矢先、突如ティンティン丸の体が消え失せた。おいおいまさか。

「それも残像だ」

 本体を狙わないとダメージすら与えられないなんて。どうすんだよ、これ。王道の異能バトルとか出てきそうな強敵を倒さなきゃならない羽目になったぞ。


「動きが早いのなら、それを止めればいいのですわ。不健全な仕置き(バニッシュメント・メイル)」

 ホクトがそう叫ぶと、ティンティン丸の周囲に不自然に湯気が発生した。これはいけるかもしれない。あの湯気を無理に振り払おうとしたら、たちまち全裸になる。それが嫌ならじっと待っているしかない。そうなれば自然と分身も消え去ることになる。あとは、止まっているあいつを集中砲火だ。


 案の定、分身は瞬く間に消え去り、不自然な湯気に纏わりつかれている一体のみになった。それにしても不自然な湯気君、男が相手だからって股間にばかり集中しないでください。

 相手が12000バカだろうが、俺たちが一斉攻撃すれば勝機があるかもしれない。

「みんな、あいつを袋叩きにするぞ」

「分かった」

 先陣を切ったのはマン・ドラ子だった。大きく息を吸って、それを一気に吐き出す。


「おかあさあああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアん」


 耳をつんざくデス・ボイス。肥料モードが継続しているのでそこそこ手痛いダメージになったはずだ。だって、アドマイヤが巻き添えをくらってダウンしてるし。

「私も負けていられませんわ。火のファイヤ・ボール

 声の波動に便乗してアドマイヤが炎の攻撃魔法を発動する。よし、俺も負けてられるか。

「海王帝邪神の弾丸ポセイディア・バレット

 再度尻からバフンウニを連射する。それはホクトの炎の魔法と調和し、おいしそうな焼きウニになった。攻撃魔法同士が重なり合ってより強力になるって描写はよくあるけどさ、初めてそれをやった結果が焼きウニかよ。

「おババ様と初めての共同作業ですわ」

 ホクトが喜んでるけど、絶対別の意味で喜んでるよね。


 ともあれ、焼きウニの弾丸をまともに受けたからには、さすがのティンティン丸もダウンだろ。しかし、ウニの応酬が終わり、湯気が晴れるや、そこには無傷のティンティン丸が仁王立ちしていたのだ。

「くそ、やはりバカの加護で阻まれたか」

「違うな。これも分身だ」

「またかよ」

 いくら攻撃しても分身じゃキリがない。なにか、なにか突破口はないのか。


「さて、そろそろ終わりにしてやろう。空気の刃でずたずたに切り裂き、馬肉としてトノサマに献上するのじゃ」

 え? ターゲット俺ですか。いやいや、おかしいだろ。どうせならマン・ドラ子とかにしてくれません。分身の養分を思い切り吸ってたよね。

「名前の恨み、思い知るがいい」

 ティンティン丸って呼んだことをまだ根に持ってるのか。こうなりゃ、風に対抗できるものを生み出すしかない。頼むぞ、俺の鼻。


「奇跡の鼻息ミラクル・スノース

 ティンティン丸が風の刃を発動するより早く、俺の鼻から息が噴出された。今回はまともに鼻息が放たれたみたいだ。奇をてらってタバスコとか出たらどうしようかと思ったぞ。

 でも、ただの鼻息じゃダメだ。これでは到底風の刃なんか防げるわけがない。

「それが貴様の最後っ屁か。哀れなものだ。思い残すことがないよう、一思いに消し去ってくれる」

 風の刃が来る。もうだめだ、やられる。観念して俺は目を閉じる。

 やつが刃を発動する。まさにその瞬間、信じがたいことが起こった。


「ブアックショイ」


 盛大にくしゃみをしたティンティン丸。そのせいで、風の刃は大きく軌道を変え、海の彼方へと飛び去って行った。かなり偶然だけど、どうにか助かったみたいだな。それよか、どうしたっていうんだ、急にくしゃみなんかして。

(お前さん、やりおるのう。さっき風邪菌を出したじゃろ)

 風邪のウイルスって、細菌兵器なんか繰り出してたのか。火炎放射以来となるガチの攻撃技のような。


「うむぅ、単なる偶然とはいえ、わしの必殺技を躱したか。なかなかに見どころのある馬ではないか。だが、勝負はここから。まだわしには風の……えっクシュ」

 発言の途中ですが、くしゃみで中断したことをお詫びします。

「お前が謝らなくっしゅ、ていいっしゅ、くそ、鼻が詰まってうまくっしゅ、しゃべれな、ウィッシュ」

 気の毒になりそうなぐらいくしゃみを連発している。あの風邪菌が効いたのか。

(年寄りに病気は大敵じゃからのう。あの風邪菌は殊の外効果があったのじゃろ)

 実際、バカが5800ぐらいまで低下していた。今なら俺の技で十分倒せるぜ。


「なめるなよ、こぞっしゅ。わしにはまだ分身がおる。この四体のうち、どれが本物か分かるかっしゅ」

 かっこつけてるようですが、くしゃみのせいで間抜けにしか思えません。でも、分身があるってのは厄介だよな。四体のうち、どれが本体か。


 手掛かりがあればいいが、分身は本体と全く同じ見た目をしている。攻撃を命中させるのは勘に頼るしかない。まったく、武術大会で四体に分身してくる相手と戦った姫様の気持ちが痛いほど分かるぜ。


 でもな、ぬかったな、ティンティン丸よ。

「四体に分裂したなら、俺たち四人で総攻撃すればいいじゃない」

「その手があったかぁっしゅ」

 アドマイヤの攻撃が本体に命中したら負けだけどな。でも、四分の一よりはマシな賭けだぜ。


「海王帝邪神の弾丸ポセイディア・バレット

「火のファイヤ・ボール

「オトうちゃあああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン」

「地獄の一閃ヘル・スラッシュ


 俺のウニにホクトの火の玉、マン・ドラ子の音波が立て続けに放たれる。それをバックにアドマイヤが剣を構えて突っ走る。彼女だけ遠距離攻撃を持っていないのがつらいところ。


 それぞれ別の分身を狙った一斉攻撃だが、結果的にティンティン丸はぶっ倒れることになった。

「せめて焼いたウニを食べたかった」

 そう、俺のバフンウニを喰らって。


 一時はどうなることかと思ったが、俺たちの連携攻撃の前にはどんな敵も怖くないぜ。

「っていうか、私噛ませ犬にされてばかりよね」

 アドマイヤがじと目で睨んでくる。ごめんなさい、許して。

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