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マン・ドラ子、ウリイイイイイ

新作の連載でしばらく間が空いたけど、エタったわけじゃないのよ。

 しばらく日干しさせてしまったとはいえ、鬼ヶ島に行って帰ってくるだけで干物になるなんて。まずいぞ、アドマイヤが涎を垂らしている。酒乱状態だから、つまみが欲しくて仕方ないようだ。カッパを食わせるわけにはいかないから、そこらへんの塩昆布で我慢してください。


 まさか、俺たちが出払っている間に襲撃されたのか。慌てて馬車を探す。うん、無事だ。中を確認したが、きちんとアドマイヤやホクトの下着まで残っていた。別にやましいことはしていないぞ。窃盗されていないか確認しただけだからな。

「おババ様。私の下着が見たいなら生脱ぎしてさしあげますわ」

 興味はあるが、削除対象となるのでやらないでいただきたい。


 さて、カッパ日干し事件。犯人は誰か推理する必要がある。とはいえ、容疑者が思い当たらない。

「なあ、ホクト。これ誰の仕業だと思う」

「ぬちゃぬちゃお茶漬け丸の親戚のびちょびちょ梅干し丸じゃないでしょうか」

 だから、誰だよそれ。びちょびちょの梅干なんて食いたくないぞ。


 よし、考えろ、考えるんだ、俺。カッパに恨みがあるやつ。あ、いるじゃん。

「これ、あのクソガキのせいじゃね?」

 カッパをいじめていたけど、ホクトのうんぽこぽん体操で退散したガキども。あいつらならやりかねない。でも、問い詰めようにもあいつらの住所知らねえからな。どうしたものか。


「おババ様。ここに妙なものがありますわ」

 ホクトが何かを発見したらしく、カッパの日干しのすぐそばに生えているものを指差した。


 そいつは雑草だった。うん、雑草です。誰が何と言おうと雑草です。でも、おかしいです。だって、ここ海岸だぜ。そこにぽつんと雑草が生えているって違和感仕事しろって話だ。

「いかにも怪しいよな、この雑草」

「アルキメンデスじゃないでしょうか」

「進化すると臭い花になるからご免被りたいな」

 夜中にひとりでに歩く草がこんなところに居てたまるか。絶対違うと思うぞ。


 草を見つめているうち、俺はうずうずして仕方なくなってきた。ああ、なんだろ、躰の奥底からうずいてくる。どうしても抑えきれないこの気持ち。これは、恋? いや、もっと野蛮で嗜虐的で残虐なものだ。


 俺はこいつを食べたい。


(そりゃ、お前は馬だからな。草食動物の本能は避けられんだろ)

 解説あざーす。でも、俺の食欲は抑えきれないぜ。

(食うなよ、絶対に食うなよ)

 馬神様、しくじったな。それは俺にこう命令してることに他ならないぜ。


 食え。


 俺は謎の草に噛みつくと、一気に引っこ抜いた。


「エンだあああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


 あ、野生のホ〇ットニー・ヒューストンが現れた。じゃねえよ。なんだ、こいつ。


 砂浜の中から出現したのはほとんど全裸の少女だった。直立しても、ホクトの胸のあたりまでしか身長がない。つまりはロリっ子だ。大事な部分は草木に覆われているから見えない。それが残念だ。いや、それはそれとして、かなり可愛い。うん、そんなこと言っている場合じゃなくて、


「地中から人間が出てきやがった」

 なんなの、これ。ホラー映画? 頭が雑草の人間が砂浜に埋まってるって軽くホラーだよね。カッパが干上がったのなんて、子供だましだよ。

 驚愕する俺をよそに、ホクトはいたって冷静だった。

「珍しいですわね。彼女はファンタジー生物のマンドラゴラですわ」

「マンドラゴラだって」

 どっかで聞いたことあるな。勇気を魔法に変える戦隊をサポートする珍獣だっけ。


「不覚です。私の絶叫攻撃が効かないなんて」

「攻撃してたのか、今ので」

 うっさいなと思っただけだが。とりあえず、こいつのステータスでも覗いてみるか。


(馬神様、ステータスお願いします)

(こっちんこ、ちんこ、ちんこ、ちんこ)

(花〇か天使てんてん君のOPをそうやって区切って歌わないでください)

 最後はまともにち〇こって歌ってるけどさ、あの曲。


マンドラゴラ マン・ドラ子 80バカ

吸魂ヨウブン・ゲッツ

泣き叫ぶ(エンだああああアアアアアアアアアアアアああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア)


 そうか、80バカしかないから攻撃が通じなかったんだ。俺って、モードユニコーンにならなくても1600バカぐらいあるからな。


「まったく、せっかく食事をしていたのに、邪魔しないでくれる」

「食事って、お前何を食うんだ」

「養分」

 随分大雑把だな、おい。食べ物食べれば、大抵は養分になると思うぞ。


「せっかくカッパの養分を吸い取ってたのに」


 おまわりさん、こいつです。あっさり犯人が判明しました。堂々と犯行を自白してどうすんだよ。アホなの、この子。


「このカッパの血は私の体によく馴染む。最高にハイって気分よ」

 さりげなく、無駄無駄言ってる吸血鬼みたいなこと言わないでくれますか。

「どうしてこんなことをしたんだ。カッパは悪いことしてないだろ」

「お腹空いたから食事をしていただけよ。悪い」

 開き直りやがったぞ、この糞草。

「あなたも、生理現象に任せるがまま、私の頭に噛みついたじゃない」

 しかも痛いところを突いてきやがった。クソ、生理現象なら仕方ないじゃないか。


「カッパの養分だけじゃ私の血肉は満たされない。あなたの養分もいただく」

 そういうと、マン・ドラ子は大きく口を開けた。いや、待て、怖いから。可愛い顔して、その口の中は牙が生えそろっていた。そいつで吸血する気か。


 相手がそう来るなら、お仕置きするしかない。80バカ相手にモードユニコーンはもったいないぜ。蹴る(アトミック・ゴット・シュート)で一発だ。

「待ってください、おババ様。マンドラゴラは保護対象生物ですわ。彼女を攻撃するなら、私が相手になりますわ」

 レジスタンスの意地か、ホクトが敵にまわりそうだった。さすがにホクトを攻撃するのは躊躇われる。ならば、素直に吸血されるしかないのか。それもいやだ。どうしたらいいんだ。


 マン・ドラ子が俺の足に噛みつこうとする。まさにその直前だった。

「わーい、つまみがあるぞ」

 ずっと二日酔い状態だったアドマイヤがフラフラと近寄り、なんら躊躇なくマン・ドラ子の頭をかぶりついたのだ。口の中でくちゃくちゃと咀嚼する。


「あ、だめ、そこは、あ、あ、あふぅん、いや」


 えっと、どういうこと、これ。美少女が美少女の頭をしゃぶってるって。新手のプレーですか。

「ねえ、やめさせてよぉ、私おかしくなっちゃう」

 消費者金融のCMに出て来た子犬みたいな眼で見つめるな。でも、どうやって止めるんだ、これ。アドマイヤの酒乱モードって5000バカ近い実力があるから、迂闊に近づけないし。


 なんて心配してたけど、どうやら杞憂だったようだ。

「うえええ、まじいいい」

 ヒロインにあるまじきだみ声を出し、アドマイヤは嘔吐した。彼女のヒロインとしての品格が下落一方なのだが大丈夫か。よりによって新たな美少女ヒロインが初登場してしまったし。


「って、私今まで何やってたんだ」

 あれで正気に戻ったのかい。どうなってんの、あの葉っぱ。

「私の葉っぱは酔い覚ましの効果もある」

 便利だな。アドマイヤ酒乱モードになった時はぜひとも使わせてもらいたい。


 完全に伸びてるけど、ようやくアドマイヤが酔いから目覚めた。でも、目の前の問題はなんら解決していない。このマン・ドラ子とやら、どうするべきか。


 そんな悩みを抱えていたのだが、それ以上の心配事が突如降りかかってしまうのであった。

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