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アドマイヤ、酔っ払います

 妖怪だいだらぼっち。ではなく、超巨大な鬼であった。体長二十メートル近くあるんじゃないか。もはや、ちょっとした山だ。いかつい顔をしたおっさんで、憤怒しているのに同期しているかごとく、全身が真っ赤だった。もちろんトラのパンツを穿いているが、巨大すぎるせいであまり意味を為していない。

「何者だ、お前」

 ビビッてなんかいないからな。それを隠すために大声で問いかけたんじゃないからな。まずは、先制で威圧を与えるってのが鉄則だろ。


 すると、超巨大な鬼は人差し指で首元を指した後、両手を広げてサーフィンしているかのようなポーズをとった。そして、こう言い放ったのだ。

「鬼、参上」


 あ、いや、分かってますから。あんた、どっからどう見ても鬼ですよね。その成りでだいだらぼっちとか名乗ったら仰天しますけど。

「貴様ら、この島への侵入者か。目的は何だ」

「この島で奴隷にされている人々を解放すること。そして、あんたを倒すことよ」

 アドマイヤが見えを切る。しかし、超巨大鬼は笑止とばかりに鼻を鳴らす。それだけでアドマイヤたちの水着の紐が吹き切れそうになる。忘れてはならないが、彼女らは遠泳してそのままだから、現在進行形で水着のままなのである。


「この俺を倒すとはいい度胸だ。だが、それは無理だな」

「なんだと」

「なぜなら俺には見えている。お前らの人生という名の終着駅が。そう、俺は終着駅を告げる鬼、終点童子である」

 仰々しい名乗りありがとうございます。終点童子か。強いのか弱いのかよく分からん名前だな。


(馬神様。ステータスお願いします)

(分かりましたわ、お兄様)

(魔〇科高校の劣等生って、鬼い様とかやりたかったんですか)

 だが、提示されたステータスはお兄様も真っ青になりそうな代物だった。


妖怪 終点童子 5000バカ

酒乱乱舞サケハ・ノンデモ・ノマレルナ


 おい、勝てる気がしねぇぞ。5000ってあのおっちゃんよりも強いじゃないか。バカの加護のせいで、俺たちの攻撃が一切通じないというのが確定だし。


 でも、とりあえず攻撃してみるしかない。

「邪神の弾丸デズモ・バレット

 俺はうんぽこぽんを連射する。相手が巨躯なだけあり、いとも簡単に全発命中する。このままうんぽこぽんまみれにしてやるぜ。


 しかし、終点童子は身震いしたかと思うと、一気にうんぽこぽんを振り払ったのだ。跳ね返されたそれのせいで、こっちが被害を受ける始末だ。

「この程度か。大したことないな」

「ならば、これでもくら……」

 アドマイヤが切りかかろうとしたら、一蹴りされて数十メートル吹っ飛ばされた。命に別状はありません。主にホクトのおかげで。


「今度はこっちからいかしてもらう。酒乱乱舞サケハ・ノンデモ・ノマレルナ

 そういうと、終点童子は大きく息を吸い込んだ。戦国時代のエロ法師の左手のごとく体が吸い込まれそうになる。奈〇の毒虫でも用意しておけばよかったぜ。


 そして、口から猛烈に臭い息を吹きかけた。やばい、これ、鼻がもげる。仕事終わりのおっさん百人分ぐらいの体臭と同程度の威力はある。

 しかも、段々気持ちよくなってくる。ほれ、どうにゃってんのかにゃあ。うんにゃ、なんか、身体が浮き上がってきてるようなぁ。うーん、なんじゃこりゃあ。


「ああ~お馬様ぁ。気持ちよくなってきましたわぁ」

「そうだにゃあ」

「ハハハ。馬のくせに、にゃあって言ってますわぁ」

「そうかにゃあ。あ、ほんとだ、アハ」

 ああ、頭がぼーっとしてきた。でも、とにかく、あいつをやっつけないとなぁ。あ、でも、身体がフラフラするよぉ。足元がおぼつかないっていうか~。


「フフフ。俺の術中にいとも簡単にはまったようだな。酒乱乱舞はアルコールを含んだ息により強制的に酔っ払わせる術。そうなってはまともに戦えまい」

 何言ってんだ、こいつ。俺は酔っ払ってないっちゅーに。


「おババ様。行きますわよ~。不健全な仕置き(バニッシュメント・メイル)」

 ホクトがふらつきながら不自然な湯気を発生させる。それは俺と共に、終点童子にもまとわりつく。ってなんじゃこりゃ。邪魔くせえなぁ。さっさと取っ払っちゃえ。

(バカ者。そんなことしたら……あ、大丈夫か)

 あ、そうか。自分で取ったら全裸になるんだっけ。あ、でも、問題ないにゃあ。だってさあ。


 俺って、元から全裸じゃん。


 現に、自ら湯気から脱出してるけどぉ、まったく体に変化ないし。


 あ、それに、終点童子は動けないからチャンスじゃね。

「奇跡の鼻息ミラクル・スノース

 俺の鼻がムズムズとうずく。激しく暴れてんじゃねえよ、鼻の奥でよ。ええい、さっさと出やがれ糞野郎。

 罵倒を浴びせかけられながら俺の鼻から飛び出たのは、まあ、なんということでしょう。


 新鮮な鮭だった。


 当然、そんなもんで攻撃できるわけなく、終点童子の足もとでびちびち跳ね回っている。酒だから、鮭ってか。ハハハ、冗談きつ……グボロロロオロ。


 ま、まずい、急に吐き気が襲ってきた。口からもんじゃ焼きを発射しそうだ。

「この程度で二日酔いとは情けない。目を覚まさせてやろう」

 終点童子は棍棒で地面を叩く。すると地響きと共に、俺たちの体は激しく揺らされる。いや、逆に吐き気を誘発してるんですけど。やめろ、もんじゃが出ちまう。

「ガハハハ。どうだ、マグニチュード六ぐらいの威力はあるぞ」

 意図的に地震を起こせるって、まともにやばい技使うじゃねえか。あ、ダメだ、もんじゃが。


 二人前のもんじゃが出来上がって少し気分が晴れたところで、改めて終点童子と対峙する。5000バカもあるだけあり、さすがは一筋縄でいきそうにない。どうすりゃいい。

 それにしても、さっきからアドマイヤが静かだな。酔いつぶれているわけでもなさそうだし。直立したまま微動だにしないってのが妙だし。おーい、生きてますか。俺が鼻面を摺り寄せた時だった。


「ヒャッハー! 酒汁ブシャー!!」

 アドマイヤが壊れた。奇声と共に愛刀を抜刀。そして地面を蹴りあげ、ワイヤーもないのに数メートルほど跳びあがったのだ。おい、どうなってる。

 それにとどまらず、その刀で終点童子を無茶苦茶に斬りまわる。5バカの攻撃なんて通じるわけ。


 いや、通じている。腕で防御する終点童子の皮膚に、確実に裂傷が生じているのだ。更には、そこから血液が滲んでいる。どうなってるんだ。俺よりもバカが十分の一以下のアドマイヤが決定打を与えているなんて。


「フハハッハハ! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」


 怖いよ。怖すぎるよ。終点童子よりもよっぽど鬼らしいことしてるよ。超巨大な鬼が防戦一方ってどういうこと。


(ああ、多分酔っ払いモードのせいじゃろ。これがアドマイヤの現在のステータスじゃ)


アドマイヤ モード酔っ払い 4444バカ


 なんだ、モード酔っ払いって。しかも、滅茶苦茶強くなってるじゃねえか。あれ、こんだけバカが高いと、俺っていらなくね。

(でも、持続時間が短いのが弱点じゃな)


 馬神様の言う通り、すぐさまもんじゃを終点童子にぶっかけたかと思うと、大の字に転がって目を回している。それで、ステータスも5バカに戻っている。まさか、アドマイヤってアルコールが入ると急激に強くなる体質だったのか。未成年だから気が付かなかったけど。

「そういえば、トノサマが来る前は普通にワインとか飲んでましたけど、その度にバーを壊滅させそうになってましたわ」

 そういうことは先に言ってください。アドマイヤと二人で和〇行ったことあるけど、あやうく大惨事を引き起こしかねなかったぜ。飲んでたのが第三のビールでよかった。


 ともあれ、終点童子は体のあちこちに切り傷を負っている。アドマイヤには気の毒だが、もう一度酔わせれば勝てる。と、思われたが。

「この程度の傷、こうしてくれよう」

 終点童子は粉砕した岩山から酒樽を持ってくると、それをラッパ飲みした。よいこはお酒を一気飲みしちゃいけません。

 すると、せっかく与えた傷がたちどころに塞がっているではないか。あいつ、酒を飲むと体力を回復できるのか。攻撃して回復しての繰り返しじゃ、アドマイヤがアルコール中毒になっちまう。くそ、俺も酔っ払いモードみたいなことができれば。


(できるぞ、モードチェンジ)

 え? できるんですか。

(ちょっと前に1500バカに到達したじゃろ。その時に新しくモードチェンジできるようになったんじゃ)

(それを早く言ってください)

 なんだよ、起死回生の一手があるじゃないか。よく見たらステータスにこんな技が追加されていた。


一角昇華


 かなり真っ当な技みたいだが、果たしてどうなるか。でも、5000バカの化け物に勝つにはこれしかない。よっしゃ、いっちょやったるで。

※未成年は飲酒してはいけません

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