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少女のように夢を見ても、現実はどうしようもないことを大人になった王妃は知っていた。
最悪の事態を想定しなければならないし、覚悟を決める必要もある。
私はそれでも死の方が自分を呼び寄せるまでは生きねばならない。自分から死を呼び寄せてはならない。
しかし、そんな決意とは裏腹に涙がぼろぼろと零れ出た。本当は死にたい。もう、解放されたい。
どうして覚悟を決めようと思ったそばから自分はこんなにも頼りないのだろう。
「王妃様」
部屋の隅で黙ってレース編みをしていたソレイユ夫人が声をかけた。
ソレイユ夫人は、王妃がこの部屋に来てから、彼女が塞ぎ込んでいても苛々としていてもなるべく平静を心掛けているらしく、あまり干渉はしてこなかった。
それは彼女の静かな思いやりでもあり、優しさでもあった。
人が困難の中にある時には、ただ手を差し伸べるだけでなく、寄り添わねばならないのだ、その人の苦しみや悲しみに。それが彼女の持論であった。
「私はね、貴方と同じよ。帰る場所なんてないの」
「お姉様には、故国があるわ」
「そうね、でも私は他国に嫁ぐ為に生まれたようなものよ。王女は王の駒だもの。故国に私の居場所はないの」
帰る場所もない、子もいない、頼る人もいない。金銭的には恵まれた保障はあったけれども、精神の安穏はなかった。
「お姉様は、なぜ恋人をおつくりにならなかったの」
王妃は正直に聞いた。




