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王家の崩壊  作者: 千歳
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身分が低いが為にウィステリアがあのように侮蔑と悪口に囲まれているのだと彼女の噂を聞いた時に彼は思い、憐れみを寄せていた。しかし、実際の彼女を初めて見た時に彼は仰天した。


 それは近衛隊も新年の祝宴に招かれたときのことである。

まだ王は第二王子のエッジワース伯で王妃はエッジワース伯妃の頃であった。


近衛隊が大広間に足を踏み入れた瞬間に一同の目に飛び込んできたのは、正妻以上に華美な装いと尊大な態度でエッジワース伯の腕にまとわりついていたウィステリアであった。


エッジワース伯妃は彼等を見ると小さく会釈して側に来るように示してみせたが、お噂のお妾夫人は一同を品定めするかのようにじろじろと見ていた。こちらからは派手な宝石を埋め込んだティアラが彼女の髪に刺さっているのが見えた。

エッジワース伯の方はそんな妾の態度を諌めもしない。そうして何も問題無いかのように彼は振舞っていた。


これには一同吃驚仰天して、その日の宿舎ではお妾夫人を罵倒する言葉で一杯になった。

しかし、肝心のエッジワース伯の方は彼らに対してはむしろ親しみさえ感じるほど気軽にと言葉を交わした。

正直言ってシャールはそんなエッジワース伯に困惑した。

話してみれば悪い人ではない。


しかし、第二王子があのような女を、自分の正妻がいる中で出しゃばらせるとは。これさえなければ、第二王子と言葉を交わした感激はもっと熱烈なものとなっただろうに。


全く、あの場にあんな女を列席させるとはなんという事であろう。

妾の列席、それ自体は以前にも例はあった。


それでもあの正妻をないがしろにする女はいけない。


シャールはその面では彼を激しく非難した。その為に彼の忠誠心は疑惑という劇薬を仕込みながら近衛隊の紋章を背負うことになってしまったのだった。


そういった経緯故に近衛隊長はこれっぽっちもあの女に同情を持たなかったが、彼女の今の状況については是非とも知りたいところだった。あの女はいまや重要な人質だ。すぐには殺さないだろう。

恐らく王への交渉に彼女を使う気なのだ。王は彼女の解放の為に出来得る限りのことはするだろう。迅速な始末を急ぐ余りに、少し考えれば得られる利益を取り零す程連中も馬鹿ではないだろう。



そう踏んでいた近衛隊長は、王室からの確固とした声明を出す必要があると感じていた。あの女がどのような状況に陥ろうと、王室側は一切関与しない。その言葉が今や王室を守る唯一の盾となるのだ。

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