【1-2】魔王軍元幹部、勇者一行に入る。
どーも!
夜凪ひなたです。
これから3〜5日に一回くらいの頻度で投稿していきます。
調子がいい時は毎日投稿するかもです!
カイが、弓を引き絞ったのが見えた。
「口だけならいくらでも言えるんだよ」
『Wind《風よ》』
風が、鋭く鳴った。
オレが口を開く前に、矢は放たれた。
風魔術が付与された矢は、暗い夜の空を裂き、一直線にオレの方へーー
その瞬間だった。
『Freeze《凍てつけ》』
賢者の、静かな詠唱。
矢は、先端から瞬時に凍りつき、オレの目前で止まった。
『Cruch《砕けろ》』
シリルが、ほっそりとしたその手を夜空に向かって突き上げ、ぐっと握りしめる。
空中で止まっていた矢は音もなく、それを包んでいた氷と共に砕けた。
粉々になった氷が夜の空を舞う。
それが、あまりにも綺麗でオレは、息を呑んだ。
「シリ、ル?なんで、ソイツを、魔王軍幹部を庇うんだ?
ソイツは、今まで、俺たちの平穏な生活をを壊してきた魔王軍なんだぞ?」
カイが、信じられないという表情で、魔王軍幹部を庇った賢者に目を向け、抗議する。
「彼は重要な情報源だ。ここで殺してしまえば、得られたかもしれない情報が失われる」
困惑するカイに対し、シリルは淡々と答えた。
魔術を発動した直後の彼の周りには、まだうっすらと冷気が漂っている。
夜の闇の中で、アイスブルーの色のローブを身につけ、白い冷気を纏った彼は、まるで氷の精霊のように美しかった。
「…それに」
シリルが再び口を開く。
「彼はまだ僕たちに一度も攻撃をしていない。そんな相手をいきなり殺すのは、勇者一行としてどうなのか」
カイは言い返せずに、黙って俯く。
しばらくの間、沈黙が流れた。
「……ま、まぁ、カイの言うことも一理あるよな。ハハハ」
沈黙を破ったのは勇者レオンだった。そして、笑顔で剣を鞘に収める。
「確かに彼は魔王軍幹部だった。でも、攻撃してきていないからには、勇者として、いきなり殺すのはシリルの言う通り、違うとは思う」
なんて気のいいやつだ。カイは人間として普通の反応をしたまでだ。攻撃しないからといって、魔族を、しかも魔王軍元幹部を殺さないなんて、頭がイカれてるのではないか。
ふと、今まで一度も発言をしていない剣聖シズに目を向けると、彼女の鋭い視線を受けた。彼女だけが、オレに対する警戒を一切緩めず、剣を構え続けている。
彼女は勇者パーティー唯一の女性だ。かといって、「か弱いので守ってくださぁい」なんてわけではもちろんない、と思う。
なんだか、彼女のオレに対する視線が怖くなってきたので、レオンたちに視線を戻した。
「なぁ勇者サマ、殺さなかったとして、この後オレをどうするつもりだよ」
オレの言葉に、レオンは一瞬考えたが、すぐに話し始めた。
「ここで君を殺さずに野放しにするとする。
もしも、もしもだよ?君が本当は魔王軍を抜けなんかなくて、人々を襲ったら?」
口を閉じた勇者は、じっとオレを見つめている。これはオレへの問いかけなのだろうか。
「そりゃ、勇者御一行サマ面目丸潰れだろうな」
思ったことをそのまま口に出すと、もちろんカイから鋭く睨まれた。
勇者が再び口を開く。
「だろ?だから、考えたんだよね、殺さなかった場合、君を見張っとける方法!」
なんだか、ものすごく嫌な予感がする。
「俺たちと、来い」
嫌な予感が的中してしまった。
レオンのその言葉に、シズは一瞬視線をオレからレオンにずらし、シリルは目を細め、カイは眉を跳ね上げ、声を荒げた。
「なんでだよ!お前頭イカれてんじゃねーか?
この間まで敵だったヤツを普通仲間に入れるか?」
オレも同感だ。
「いいんじゃないかちょうどもう一人後衛が欲しかったんだよね
君、いつも前に出る方じゃなかったろ?」
シリルが口を開いた。オレのこれまでの戦い方を覚えているとは…さすが賢者といったところか。
「あぁ、確かにそうだ。
ところで、オレが勇者一行に入るとして、なにか、条件があるんだろう?」
レオンが頷く。
「もちろん全く無条件、というわけにはいかない。一行に入るにあたって、三つ、約束してほしい」
レオンは三本、指を立ててオレに向けた。
「まず、逃げないこと。
次に、隠し事を絶対にしないこと。
そして…」
レオンが一歩オレに近寄る。
「裏切らないこと。
もし、裏切るようなことがあったら、必ずオレが止める」
まっすぐな視線がオレを貫く。
これは、脅しなんかじゃない。レオンの、勇者の誓いだ。彼の声に滲んだ覚悟が、それを物語っていた。
今回から、後書きにキャラの一言入れていこうと思います。
毎回違うキャラにします!
今回は主人公くんです
名前は次回判明します!
??「勇者サマってどいつもこいつもレオンみたいに、
頭イカれてやがるお人好しばっかりなのかなぁ」




