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話の通じる魔王秘書

作者: ヤスヤナ
掲載日:2025/12/08

異世界に召喚、ただし魔王。

「これ、5冊下さい」

「お、おう。

一応聞こうか」

「?」

「お嬢さん、大人だよな?」

「はい、大人です」

「…すごいな」


「はあ」

街を歩きながら、少女はため息を吐き、肩を下げる。

「大人、ね。私が、大人」

ははは、壊れたように笑う。

(まだ17歳なんだが!?)

と突っ込むが、ふと、考える。

(この世界の大人って、どういう意味だ?)

成人、じゃなく、18歳以上でもない、『大人』。


考えてはいけない、そう自分に言い聞かせる。考えたらダメなやつだ。


「さて」

周りを確認すると、

「帰るか。頼まれたのは買ったし」




「お待ちしておりました」

「ありがとう。じゃあ、帰ろうか」

「わかりました、秘書様」


馬車に乗り、ユラユラとする。


その馬車は、ヒトには見えない。

自分と、『それ』が触れているものは、見えない。そして、『それ』は馬に乗り、操っている。馬といっても、少女の知る馬とはかけはなれた姿をしているのだが。


「自分がわからなくなる」

少女は呟く。

手を見て、安心する。自分はヒトだと。


異世界に召喚された、17歳の少女。

ただし、召喚したのは王様ではない。魔法使いでも。


魔物の国の、魔王が召喚した。

『全ての国のものと会話をすることができる』という、いわゆるチート能力つきで。

英語、韓国語、日本語。そのようなもので、その異世界にも様々な言語がある。彼女に、それは関係ない。彼女の言葉は翻訳なしで、自然と相手に伝わる。そう、自然と。


『魔王の秘書』

与えられた彼女の役目。


馬車で揺れながら、ラジオを聴く。

元の世界の、ラジオ。

「異世界に来た」と、両親、友達、先生に言ったが「嘘を吐くな」と返され、『つながり』は切られた。SNSに投稿しても「AI?」て言われるだけだろう。

だから、ラジオで。ラジオのアプリで。


『まだ元の世界に帰れるかもしれない』

希望をなくさないためにも、元の世界のラジオを聴く。


「こんなものを買わせる奴に一生仕える?

ハッ」

隣の『それら』を見る。

大人じゃないと買えない『それら』を。




そして、

「おおっ! 帰って来たか、お嬢さん」

魔王は笑顔で両手を広げる。

「長旅ご苦労様。食事はあるぞ、今日は肉だ。生肉はダメらしいから焼いたぞ!」

秘書は強く『それら』を握り締める。


「さあ、くれるんだ。

エロ本を!」

「こんなもん買わせんなや!」


「叩きつけるとは。やれやれ、お腹が減っているんだな。

人間共がどのようなものに欲情し致すか、気になるのでな」

魔王は、床に叩きつけられた『それら』つまり『エロ本』を微笑みながら拾う。

角が2本ある以外はヒトと同じ。

美青年、角がなければ、たいそうヒトたちにも人気が出ただろう。

「ありがとう」

頭を撫で、去っていく。

魔王の部屋に行くのだろう。エロ本を持って。


「こんな所で死ねるかー!」

魔王秘書は叫んだ。


ありがとうございました。



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