表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サービス終了したゲームの世界で、俺はまだラーメンを作っている  作者: アザネ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/75

73話 撮影開始──インフルエンサーの光と影

店の前にできた人だかりは、もはや“行列”というレベルではなかった。

ハーチナが魔導水晶を向けるたび、歓声が起こり、

光導板には光のエフェクトが飛び交う。


「じゃあ店長さーん!

 撮影しながら“鬼盛りラーメン↑↑”作っちゃってくださーい♡」


「いや勝手に撮影すんな……って言っても無駄なんだよな」


俺は観念し、厨房へ戻った。


鍋に火をかけ、麺をほぐす。

ハーチナはその手元をライブ配信でアップにする。


光導板にコメントが流れる。


《きた鬼盛り!》《職人の手つきやん》《盛れ盛れ!》《スープうまそう!》

《ハーチナの声かわいい》《店長手がキレイ》《レイリンちゃん映せ!》


レイリンは照れて隅っこに隠れたが、

ハーチナは遠慮なしに魔導水晶を向けてくる。


「レイリーン♡ 今日も天使〜〜♡

 この店、可愛い子しかいない説〜〜!」


「や、やめてよハーチナさん……!」


レイリンの頬が赤くなる。

光導板のコメント欄が爆発する。


《レイリン可愛い!!》《彼女?》《付き合ってる?》

《メンドラ美女多すぎ問題》《店行くしかなくね?》


……おい、変な勘違い生むなよ。


俺が盛り付けに集中していると、

ハーチナがいきなり厨房に飛び込んできた。


「店長〜、その盛り、もっと“アゲ↑↑”でいこ!」


「アゲって言われてもな……」


「ほらぁ、こう!!」


ハーチナは俺の横に並び、麺の山の角度まで指定してくる。

しかも魔導水晶で撮影しながら。


「見て見てフォロワーちゃん♡

 店長、アゲ盛りチャレンジ中だよ〜〜!」


(……俺はいつからチャレンジ参加させられてんだ)


だが配信はすさまじい反響だ。


《麺の角度120点》《鬼盛りすぎwww》《これは映える!》

《店長イケメン?》《レイリンの笑顔尊い》《ハーチナ最高!》


数分で、視聴者数がとんでもない数に跳ね上がる。


「ハーチナ……すげぇな」


俺がつぶやくと、

ハーチナは得意げに鼻を鳴らし、


「まあね♡ あたしのバイブスは光だから〜!

 みんなを照らしちゃうの!」


――この瞬間。


俺は初めて少しだけ“バイブス”の意味が分かった気がした。


光のように人を照らし、

空気ごと明るくする力。


ハーチナにはそれがある。


◆ ◆ ◆


「できたぞ、鬼盛りラーメン。

 ……崩れないように持てよ?」


俺が丼を差し出すと、

ハーチナは瞳をキラキラさせた。


「うっそ、なにこれ!

 え、まって、写真で見たのより100倍かわいい!!♡♡」


魔導水晶のシャッター音が止まらない。


撮る角度、照明、丼の高さ――

ハーチナはまるで芸術家のように撮影を続けた。


そのたびにコメントが流れ、

光導板がうねるほどの勢いで盛り上がる。


レイリンは感心して言った。


「すごい……こんなに人を引きつけるなんて……

 まるで魔法みたいだよ」


確かに。

これは別の意味で“光魔法”だ。


しかし――

その“光”が強ければ強いほど、影も大きくなる。


店の外で、小さなざわめきが聞こえた。


「……ハーチナいるらしいぞ」

「撮影OKって言ってたっけ?」

「勝手に店映して大丈夫なの?」

「炎上しても知らないぞ」


囁く声が混じり始める。


レイリンが不安げに俺を見る。


「ロン……ちょっと、雰囲気変わってきてない?」


「ああ……気づいてる」


ハーチナ自身は無邪気だ。

でも光導板というものは、本人が意図しなくても

“悪意”や“嫉妬”を呼び寄せることがある。


その証拠に、光導板にも一部こんなコメントが流れ始めた。


《また店の迷惑考えないの?》《肖像権どうしてるん?》

《客の顔映るぞ》《ハーチナって配慮足りなくね?》


ハーチナは気づいていない。

光の中心で笑い続けている。


その姿は眩しいほどで、だからこそ危なっかしい。


俺は声をかけた。


「ハーチナ、ちょっと待て。店の外……」


だが彼女は楽しさが勝っているみたいで、

俺の言葉より撮影のほうが先に動いた。


「はーいみんな!! 次は店長さんと“ラーメン愛のポーズ♡”いくよ〜!」


「いや、だから聞けって……!」


俺が制止しようとした、その瞬間。


店の外から強い光が差し込み、

扉が勢いよく開いた。


「ハーチナ様っ!! もう勝手に飛び出しちゃダメです!!」


白いジャケットを着た

ハーチナ専属スタッフらしき人物が飛び込んできた。


店内の空気が一変する。


ハーチナは驚いて目を丸くした。


「あ、マネージャー……?」


スタッフは深いため息をつき、俺に頭を下げた。


「本当に申し訳ありません! ハーチナは……

 悪気はないんですが、度々こうして……」


言いかけて、光導板を一度見て絶句した。


視聴者数はとんでもない数字になっている。


そして、批判コメントも増えつつある。


ハーチナの瞳が揺れた。


「……あれ? みんな、楽しんでくれてたんじゃないの……?」


今まで一度も曇らなかった笑顔に、

わずかな影が差す。


俺はその表情を見て、胸が締め付けられた。


(……そうか。

 この子も、ただ“強く見せてるだけ”なんだ)


光の強さに隠れて見えなかったけれど、

ハーチナは“誰よりも傷つきやすい”のかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ