71話 魔導競技会── ごー・ふぁい・うぃん
観客席は満員。
魔導競技会〈アーク杯〉がいよいよ始まった。
レチリアの演武の番が近づくほど、
彼女の肩は震えていった。
「……だめだ、手が……震えて……」
「大丈夫。俺たちもいる」
声を掛けると、レイリンも頷く。
「そうだよ。今日のレチリアちゃんは強い」
だが、それでも緊張は消えない。
魔導書が微かに震え――
魔力が暴発の兆候を見せ始めた、まさにその時。
「レチリアーーーッ!!!」
響き渡る大声。
舞台脇に立つシャンフ・メリア。
完全チアガール姿。
杖の先には紫のポンポン。
「あなたの魔法は世界一綺麗なんだから!!
胸張りなさいって言ったでしょ!!」
レチリアの表情が変わった。
その瞬間――
「……ごー・ふぁい・うぃん……」
青緑の光がシャンフのポンポンから溢れ、
レチリアの魔導書へ吸い込まれる。
観客席にどよめきが走る。
「え!? チアの応援で魔力強化が!?」
「なんだあの支援……!?」
「シャンフ様すげぇ……!!」
レチリアの魔力が収束し、
魔導書が静かに開く。
そして――
彼女の術式演武が始まった。
水花の陣が舞い、
青い花弁が観客席に舞い散る。
暴発どころか、
学院史に残るほど美しい演舞。
最後の流れ――
レチリアは涙ぐみながら叫んだ。
「先輩……! 見ててください!!」
魔力花陣〈水花鏡流〉が咲き誇り、
観客席は総立ち。
レチリアは大歓声の中、
最高の笑顔で礼をした。
競技会が終わり、
夜の演習場は静かに風が吹いていた。
メリアはひとり、
ポンポンを丁寧に袋にしまっていた。
「……疲れた……
応援って……こんなに……大変なのね……」
だが、その表情は穏やかだった。
背後から、小走りで来る足音。
「せんぱいっ!!」
レチリアが駆け寄る。
「さっきの応援……本当に、本当に心強かったです……!」
メリアは一瞬、視線をそらし――
そっと笑った。
「……レチリアが頑張ったからよ。
私は……ちょっと背中を押しただけ」
「そんなことありません……先輩がいてくれたから……!」
その涙に、メリアの瞳が揺れる。
そして照れ隠しのように、
レチリアの頭をぽんぽんと撫でた。
「……よく頑張ったわ。
本当に、綺麗だった」
レチリアの顔が真っ赤に染まる。
少し離れたところで、
俺とレイリンがそのやり取りを見ていた。
「ふふっ。いいねぇ、こういうの」
「学院って……なんか青春してんな……」
メリアは風に吹かれながら、
しまったポンポンの袋に手を置いた。
「……応援って、悪くないのね。
また……やってもいいかも……」
レチリアが無邪気に笑う。
「じゃあ来年もお願いします!!」
「ちょ、ちょっと気が早い!」
笑い声が風門庭園に響く。
しかし。
学院の噂はこう語る。
「来年のアーク杯、
チア部門が新設されるらしい……?」




