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サービス終了したゲームの世界で、俺はまだラーメンを作っている  作者: アザネ


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63話 学院地下の異変──魔力溜まりの波紋

学院地下へ続く階段は、

地上の華やかさとは打って変わって薄暗く、

魔力のざらつきが足元から伝わってきた。


魔導図書館で話した“魔力層の異常”――

レチリアの案内で、その発生源まで向かっている。


「こ、こっちです……。

 ここの階段、冷気が強いので気をつけて……」


レチリアが小さなランタンを掲げ、

俺とレイリンを導く。


一歩進むごとに、空気が重くなっていく。


レイリンは周囲を警戒しながら言った。


「……なんだろうね、この感じ。

 地下なのに、風が揺れてるというか……魔力が脈打ってる」


同じように感じていた。

胸の奥に不穏な鼓動のようなものが響く。


(これが魔力溜まりか……。

 ただのエネルギー貯蔵じゃない。

 生き物みたいに“うねってる”)


階段を降り切ると、

透明な結界の張られた広いホールが現れた。


壁に埋め込まれたいくつもの魔石が青く点滅している。

魔力を循環するための装置だ。


レチリアが端末に魔導書をかざすと、

結界がふわりと開いた。


「ここが……“魔力溜まり管理室”です。

 本来は学院の魔導書全体の魔力供給を統制する場所で……

 普段は教師が必ず常駐してるんですけど……

 今は不在のようです……」


レチリアが小さく震える。


「不在? こんな重要な場所で?」

レイリンも不安を隠せない。


レチリアは唇を噛んだ。


「たぶん、誰かが他の異変の応対に行ったんだと思います。

 最近、学院中で小さな魔力暴走が頻発していて……」


その説明を聞くほど、

胸に引っかかるものが大きくなる。


部屋の中央――

円形の窪地になった“魔力槽”の水面が、

不自然な波紋を繰り返していた。


まるで、水ではなく“魔力の液体”がうねっているように。


レイリンが近づき、手を伸ばす。


「……この揺れ、普通じゃないよ。

 魔力量が急に増えてる。

 まるで、外から大量に魔力を流し込まれたみたいな……」


レチリアが魔導書を開き、震える声で補足する。


「魔力濃度……本当に高いです。

 もうすぐ“魔導生命体”が生まれちゃうレベル……」


「生命体?」


眉をひそめた。


レチリアはうつむき、

小さく、しかし真剣な声で説明した。


「魔力は、溜まりすぎると……自分で形を持とうとするんです。

 本来は結界が抑制してくれるんですが……

 最近、制御パネルの反応が鈍くて……」


その時だった。


ぴしっ……!


空気が裂けるような音。


レチリアが振り向く間もなく――

魔力槽の中心から光の柱が突き上がった。


「――っ!?」


眩い光が結界を歪め、

衝撃が空気を震わせる。


レイリンを庇いながら叫んだ。


「レチリア、離れろ!」


しかし、警告は遅かった。


どんっ!!


魔力槽の中心から漏れ出した“魔力生命体”が炸裂し、

レチリアの立っていた床ごと、

半円状にえぐり取られるように吹き飛ばされた。


「きゃああっ!」


レチリアの身体が宙に弾かれ、

そのまま崖のような段差の向こうへ落ちかける。


「レチリア!!」


叫ぶと同時に即座に駆け出したが、

轟音と共に魔力生命体が姿を現した。


――青と紫の光を帯びた、

人型と獣型を混ぜたような不定形の魔力の塊。


「みんなを守る!」


叫ぶと、床から水が巻き上がり、

魔力生命体と俺たちを隔てるように壁を構築した。


ごうっ……!


生命体の攻撃が壁に激突し、

壁と魔力の火花が散る。


壁の隙間をすり抜け、

段差の縁に駆け寄った。


レチリアは下の階層で膝を抱えていた。

魔導書が転がり、ページがバラバラにめくれている。


「レチリア、無事か!?」


「ロンさん、だめ! そっちに行っちゃ……!」


レチリアの叫びが震えている。


だが、逃げる時間すら与えられなかった。


上階の壁が砕け、

魔力生命体が視界に飛び込んでくる。


即座にレチリアの前へ立ち塞がった。


「ッ……くるなら来い!」


背後でレチリアの息が止まる気配。


(ここで守らなきゃ、誰が守るんだ――!)


生命体が襲い来る。

しかし――


レイリンの声が響く。


「ロン、下がって!

 この子の魔力、想像以上に強い……!

 壁が持たないよ!」


レチリアは震えながら言った。


「わ、わたしのせいだ……!

 わたしが地下に来なければ……!

 魔導書も、ちゃんと扱えなくて……!」


尻尾が垂れ、耳も萎れ、

目には涙が浮かんでいる。


この状況で、レチリアが動けない理由が痛いほど伝わってきた。


それでも――


レチリアの方に振り向き、しっかりと目を見る。


「レチリア。

 お前のせいなんかじゃない」


「っ……!」


「学院のために動いて、異変を見つけて、

 俺たちに説明して……全部“勇気ある行動”だった。

 だから――最後まで責任を押し付けるな」


レチリアの瞳が揺れた。


「俺は前を守る。

 レイリンは後ろを支える。

 ――お前は、自分の魔導書を信じろ」


「…………!」


レチリアの小さな手が震えながら魔導書へ伸びる。


魔力生命体が天井へ跳ね上がり、

俺たちを押し潰すように降りてくる。


レイリンが叫ぶ。


「レチリアちゃん! 今だよ!」


レチリアは目を閉じ、震える声で呟いた。


「――《水の魔道書・序》!!」


瞬間、

下階全体が淡い水色で満ちた。


生命体の巨体が水の膜に触れた途端、

動きが鈍る。


「効いてる……!」


レチリアが吠えるように続ける。


「――《ローズウォーター》!!」


二条の水弾が、

恐怖に震えていた手から放たれた。


軌道は乱れている。

しかし――


一発目が、生命体の中心核をかすめた。


二発目が、核の真芯を撃ち抜いた。


青紫の巨体が悲鳴をあげ、光が乱れる。


レチリアは震えた声で叫んだ。


「わ、わたし……やった……!」


恐怖で泣きそうになりながらも、

確かに前へ踏み出した一撃。


だが、まだ終わりじゃない。


魔力生命体は崩れかけながらも再構築しようと、

再び光を集め始めた。



「このまま押し切るぞ!」


レイリンに向かって叫ぶと


すぐにレイリンが杖を構え――


その瞬間。


――ゴォッ!!


横から突風が吹き荒れ、

花びらが舞い散るエフェクトが視界を染めた。


レチリアもレイリンも驚いて振り向く。


風の流れに乗って、

杖の先端から青い輝きが走る。


「鏡花水月――」


凛とした少女の声。


魔力生命体の中心部へ、

鋭い風刃が一線を描いた。


――ズシャァァァァンッ!!


魔力生命体のコアが一刀のごとく割れ、

魔力は霧散した。


沈黙。

霧が晴れ、風だけが余韻を残す。


廊下の奥へ、杖を下ろした少女が静かに歩み出る。


淡い茶髪のツインテール。

青緑の瞳。

花と風の魔力をまとった装束。


その存在感に、一目で分かった。


(…シャンフ・メリア……)



レチリアは驚きと安堵が溶けた声を漏らした。


「メリア……先輩……!」


レチリアの瞳が潤む。


俺とレイリンは顔を見合わせる。


この学院で、新たな物語が始まった。


そしてその中心には――

確かに、レチリアの“成長”の光が灯り始めていた。


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