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サービス終了したゲームの世界で、俺はまだラーメンを作っている  作者: アザネ


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58話 断崖の異変──砂煙の向こうの脅威

焦熱の断崖道を少し進むと、風の匂いが突然変わった。


乾いた砂と石の香りに――

“生き物の匂い” が混ざったような、妙なざわつきがある。


ウカが足を止めた。


「……来る」


その小さな声は、はっきりした緊張を帯びていた。


レイリンが驚いて振り返る。


「来るって……何が?」


俺も辺りを見渡すが、まだ何も見えない。


けれど――次の瞬間。


ズズッ……ズンッ……!


断崖全体が微かに震えた。


地面の下から、何か巨大なものが這い上がってくるような、鈍い振動。


(まさか……地震?

 いや、違う……これは“魔物が地面を押し上げる”時の振動だ)


砂粒が跳ね、岩壁の上部から小石が落ち、

ウカの三つ編みが揺れる。


彼女は刀に手を添えながら呟いた。


「間に合った……」


「間に合った………?」


問い返すと、ウカは呼吸を整えながら言葉をつなぐ。


「さっき……この断崖を、隊商キャラヴァンが通る予定だったの。

 でも、砂の下に……嫌な気配があって……

 わたし、急いで走って“こっちに来るな”って伝えたの」


レイリンが息を呑む。


「じゃあ……」


「うん。

 キャラヴァンのみんなは、今ごろ安全な別ルートへ向かってる。

 わたしは……囮になって走ってきたの。

 この悪い気配を、私に気づかせるために」


(囮……一人で……?)


ウカは淡々と話すが、その行動は無茶そのものだ。

ただのRキャラどころか、実際の彼女は命知らずの護衛だ。


「ふたりとも、下がって」


ウカは刀をゆっくり抜いた。


“シャキン” と青白い刃が光をまとい、

熱気の中で涼しげな光線を描き出す。


直後――

砂丘が爆ぜるように割れた。


ドゴォッッ!!


砂煙が天へ向かって吹き上がり、

巨大な影がそこから次々と姿を現す。


「なっ……!」


レイリンが声を失い、

俺も思わず身構えた。


姿を現したのは――

全身が砂色の甲殻で覆われた“巨大な獣”。


四つん這いで地を這い、牙は大人の腕ほどの長さ。

背中には硬い殻が砂のようにめくれ、

目は赤く光り、渇いた舌が口の端から垂れ下がっている。


サンドストーカー。


旅人を砂の中へ引きずり込み、物資を奪い、

場合によっては隊商を壊滅させる凶悪な魔物。


一体でも危険だが――

今回は群れだった。


数えてみれば、五体……いや六体。

後方の砂煙からさらに影が見える。


(これは……複数のキャラヴァンが消されたって話も嘘じゃないな……

 こんな群れ、普通の旅人じゃ絶対太刀打ちできない)


レイリンが震える声を出す。


「ウカちゃん……これを一人で囮にしてたの?!」


ウカは刀を構えながら首を振る。


「ううん。一人じゃないよ」


「……え?」


「キャラヴァンのみんなが、

 “わたしが一番足が速いから”って言ってくれたんだ」


ウカの赤い瞳には、恐怖よりも“信頼と責任”が宿っていた。


「だからね……

 ここで止められたら、わたしの勝ちなの」


(ウカ……あんた……)


小柄なのに、あまりにも強い意志。


こんな場所で、巨大なザックを背負いながら

ひとりで走り回って……

冒険でも武勇伝でもなく、

単に人を守るためだけに。


胸が熱くなる。


レイリンも同じだった。


「……ほんとに、放っておけない子だね……」


「うん。

 だからこそ、俺たちがついてる」


サンドストーカーの群れが、

ずしん、ずしん、と地響きを立てながらこちらへ迫る。


砂が崩れ、岩が震え、風が熱を帯びて唸り始める。


ウカは刀を大きく構え、背中のザックが揺れる。


「ロンさん、レイリンさん……お願いがある」


「なんだ?」


「わたしから離れないで。

 ……ここで倒れるわけにはいかないから」


その言葉は、弱さではない。

自分の限界を理解したうえで、仲間を信じる強さだ。


レイリンが杖を握り、俺も剣を前に向ける。


「行くよ、ロン!」

「おう。やるしかない!」


ウカが一歩踏み出す。


砂煙の先で、サンドストーカーが牙を剥いた。


風が止まる。


世界が静まる。


そして――

三人は同時に駆け出した。


「来いっ!」


熱気の中で、ウカの刀が冷光を放ち、

レイリンの炎が揺らめき、

俺の剣が水音を立てた。


焦熱の断崖道での戦いが、

今まさに幕を開ける。


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