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サービス終了したゲームの世界で、俺はまだラーメンを作っている  作者: アザネ


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53話 巣喰い甲蜂との交戦──甘い香りと毒の刃

巣箱の周囲に、重たい羽音が響いていた。


巣喰い甲蜂――

本来なら弱った巣を狙うのスカベンジャーはずだが、

目の前の“そいつ”はまったく別物だった。


外殻は黒く膨れ、

腹部は魔蜜で異様に肥大化している。

刃のような腕は毒に濡れ、落ちた草を黒く枯らしていた。


「……完全に狂ってるな、こいつ」


俺が呟くと、後ろでレイリンが身を寄せた。


「たぶん、何度も巣を襲って……

 魔蜜を限界まで吸って自分を強化してるんだよ。

 森が壊される前に、絶対止めなきゃ」


メルは小刻みに震えながらも、前を見ていた。


「ロンさん……レイリンさん……

 どうか、この子たちの家を守ってください……!」


(あぁ、守るさ。ここで引く理由なんてない)


巣喰い甲蜂との距離を詰める。


その瞬間――

腹部がドクンと膨らんだ。


「ロン、来るよ!」


レイリンの叫びと同時に、

巣喰い甲蜂が黒い毒霧を吐き散らす。


シューッ……!!


地面に触れた枯草から、白い煙があがった。


「――ちぃっ!!」


すばやく横に跳び、ギリギリで毒霧を回避したが、

霧の端が腕にかすっただけで、皮膚にチリっと痺れが走る。


(小さな傷でもやばい……猛毒ってやつか)


巣喰い甲蜂は、

こちらの反応を楽しむように、腹を揺らしながら迫ってきた。


ズシャァッ!!


刃の一撃を受け止めると、骨ごと押し込まれるような重さだ。


「うおっ……!」


一瞬で理解する。

こいつは“普通の蜂”じゃない。

魔物として完成してしまっている。


だが――

ここで引けるか。


「レイリン、行くぞ!」


「了解っ!」


レイリンが小さく手をかざすと、

柔らかな光が俺へ降り注いだ。


「――元気の源!」


痛みが和らぎ、痺れが少し消える。

呼吸が整い、握力も戻る。


「助かる。……本当に、助かる」


レイリンが照れ笑い。


「お店でも使ってるでしょ?

 お客さんの顔色も治してるんだよ、あれ」


(いや、実戦で使うとこんなに頼もしいのか……)


だが、巣喰い甲蜂は間を与えない。


ギギギギギ……!!


刃を構え、跳びかかってくる。


「レイリン下がれ! みんなを守る!」


腕を広げ、レイリンとメルの前へ滑り込む。


バシィィィッ!!


体に青い膜のような魔力が走った。

仲間を守る意思に反応して、スキルが発動する。


「ロン、そのスキル……!」


「大丈夫だ。これくらいなら……!」


刃が防御膜を叩きつけ、

重い衝撃が肩から腰へ一気に抜けていく。


(う、おお……! だが……まだ……耐えられる!)


巣喰い甲蜂の攻撃を受け止めながら、

反撃のタイミングを探る。


その間にも、レイリンが追加の支援を飛ばす。


「ロン、火力を上げるよ!

 ――秘密のスパイス!」


光の粒が、俺の腕に、剣に、筋肉に染み込んでいく。


(火がついたみたいだ……!)


全身の力が、じわりと上がる。


レイリンが構え直し、次のスキルを唱える。


「蜂さんたちも傷ついてるし……

 ――至高のおもてなし!」


白い光が周囲を包むと、

弱っていた魔蜂たちが一斉に元気を取り戻し、

羽音が復活する。


ピルルルル……!


メルが驚きの声をあげた。


「みんな……!生き返ってる……!」


蜂たちが周囲を飛び回り、

巣喰い甲蜂の周囲をかく乱し始めた。


視界が揺らぎ、

巣喰い甲蜂の動きがわずかに鈍る。


「今だ……!」


毒霧の途切れた“薄いライン”を見逃さず、

前へと踏み込んだ。


巣喰い甲蜂が腹を膨らませて反撃しようとする。


(させない!)


勢いを乗せ、剣を振り抜く。


「――俺に任せろッ!」


水属性の気流が刀身を包み、

青白い斬撃が一直線に巣喰い甲蜂へ走る。


ガァァンッ!!


外殻が裂け、

毒蜜が破裂するように飛び散った。


巣喰い甲蜂が、苦しげに体を震わせる。


ギィィィィィッ!!!!


体勢を崩した――

あと一押しだ。


「ロン!もう一撃!!」


レイリンの声が背中を押す。


「任せろ――!!」


さらに踏み込み、

胸殻と腹部の隙間へ渾身の斬撃を叩き込む。


「はああぁぁッ!!」


バキィィィンッ!!


巣喰い甲蜂の巨体が、

地響きを立てて倒れ込んだ。


ドッ……ゴォォン……!


蜂たちが一斉に歓喜の羽音を鳴らし、

メルは胸に手を当て涙ぐむ。


「……守れた……

 みんなの巣箱、守れたんだ……!」


レイリンが優しく笑う。


「ロンが止めを刺してくれたからだよ。

 すごいよ、今日は」


大きく息を吐き、剣を収めた。


「いや……レイリンの支援が無かったら、

 絶対押し負けてた」


(本当に、互いの力で勝った戦いだった)


だが――

まだ終わりじゃない。


メルは森の奥、淡い光を見つめる。


「……あそこが、“蜜洞”です。

 お姉ちゃんたちが、いつも守っていた場所……

 巣喰い甲蜂がここまで強くなれた理由も、

 きっと、あの奥に……」


俺たちは顔を見合わせ、頷き合った。


巣箱を守っただけでは、

この森を救ったことにはならない。


「行こう。全部確かめに」


メルは決意を宿した目で、杖を握った。


森の甘い香り――

その奥に潜む、ほのかな“苦味の気配”。


それを突き止めるため、俺たちは蜜の森のさらに深くへ進んだ。

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