5話 お仕置きも人生も大満足!
誤字報告ありましたので訂正しました。
報告ありがとうございます❀
数ある作品から覗いて下さり、ありがとうございます❀
波乱の夜会から数日経った。
コリーナはあの日から社交界に顔を出していない。
のんびり過ごしているかと思われているが、真逆だ。
日の出から日の入りまで、コリーナは次の計画の為に走り回っている。
コリーナがやりたい事。
それは、ウエディングドレスの製作だった。
前世ではウエディングドレスの需要も減り、また新規参入は難しい世界だった。アパレルの会社を小さいながらも経営していた。業績は悪くなかった。新規参入する事も考えたが、社員を抱えている以上我が儘での挑戦は出来なかった⋯⋯。
この世界のウエディングドレスは肌を露出せず、隠すデザインばかりだった。
でも夜会での露出の派手なドレスは好評だった。
それならば、ウエディングドレスも変えてみようと考えたのだ。
仲良い婚約者が増えた。
揃いの衣装やアクセサリーも流行っている。
ならば真っ白の衣装で揃えた結婚式を提案する。
この世界で前世のやり残しを叶えるのだ。
エリックに相談すると、知り合いを紹介してくれた。
伯爵家の嫡男と同じ伯爵家の令嬢との結婚だった。嫡男は商会を探していたらしい。
家の事情もありお金をかけれない。
だが、愛する婚約者の花嫁衣装は用意したい。と、エリックに相談していたのだ。
コリーナは嫡男であるパトリックと会った。彼から事情を聞き、取り引きをした。
コリーナが婚約者のリアナ様の衣装をデザイン作成する。それを着てもらう代わりにお金は請求しない。
パトリック様の衣装も手掛けることも付け足した。
パトリック様は驚いてしまう。
お金の話だけではない。有名なココのオーナがコリーナである事は、あの夜会から皆に知られている。
そのオーナからの提案なのだ。
「本当に良いのですか?コリーナ様が損をしてしまうのでは?」
心配するパトリックに。
「初めて手掛ける衣装なの。この世界で初めて見せるウエディングドレスよ。失敗するかもしれない⋯⋯。でも、私が全力で成功するようにする。
だから、協力して欲しいのです。」
コリーナは頭を下げお願いした。
「コリーナ嬢!頭をあげて下さい!婚約者であるリアナは貴女の衣装の信奉者なのです。
ですが、中々手が出せずにいました。それが、結婚式で着れる。しかも、ココの初めての取り組みに自身が関われる。リアナにとっては逆に褒美のようなお話です!」
パトリックがコリーナの手を握り、ブンブン振る。
「最高の贈り物になります!こちらこそ、ありがとうございます。
パトリックと仲良くしていて初めて良かったと思いました。」
パトリックの言葉を聞き、エリックが苦笑いで問いかけた。
「初めてって⋯⋯。酷くないか?」
パトリックは
「婚約者を放置して、女遊びをする奴を良い人とは言わないだろ?エリック自身は良い人なのは知っている。でも、女遊びをするお前は嫌いだったからな。
色々あったのは理解出来たから、相談もしたんだ。本当に嫌いだったら相談しないし。」
エリックは苦笑いをして、パトリックの話を聞き入れた。
次の日からリアナ様の採寸をし、デザインを提案していく。
式は一月後。何としても間に合わせるのだ。
忙しい日々を送る中、王宮からの呼び出しがあった。
両陛下からとの事で、書簡を受け取ると直ぐに王宮へと向かった。
案内された先は中庭だった。
そこには両陛下と宰相が座り、コリーナを待っていた。
コリーナはカーテシーをし。
「お待たせしました。お呼びと聞き参じました。」
両陛下が手招きをし、席へと促す。
「今日呼んだのは他でもない。エリザベス嬢とアリアナ嬢達の処罰について。また、ライオット公爵家とコーエン侯爵家の処罰についてもだ。」
話を聞き、コリーナが首を傾げる。
「修道院送りに決まったのでは?」
そう答えた。
「どの修道院に送るか。また年季も考えねばならぬ。それにコリーナ嬢が家を取り潰すと申したのであろう?」
陛下に問われ、コリーナは夜会での会話を思い出す。
「そんな事を言った気がしますが、脅し文句ですよ?諸悪の根源の娘と母親が処罰されるだけで十分です。」
コリーナは出された極上の紅茶を口にした。
「お家の事もあって、宰相までいるのね。家には何も処罰は望まない。それで良いかしら?」
宰相に視線をやると、苦笑いされながらも頷いた。宰相が説明する。
「両家は共に婿養子でして、当主と言えど口を出せないのです。私も陛下もあの二人が妻や娘のやらかしに走り回って謝罪をする姿を見てきました。散財する母娘を抑えられない。たが領民に負担があってはならないと⋯⋯。」
宰相は婿入りした二人の当主に同情する。
「良い当主なのね。妻と娘に未練がないなら良いけど⋯⋯。」
長年連れ添った妻であり、血を分けた娘なのだ。思う事もあるかもしれないと気遣う。
「あの二人の当主は未練はないな。清々しておるだろう。散財する者がいなくなるのだ、自身も領民も楽になるだけだからな。」
陛下のその言葉に、王妃様も宰相も同意する。
「それでね。あの母娘の修道院先だけど、南の修道院に送ろうと思うのよ。」
王妃様の言葉に
「北ではなくてですか?」
コリーナが問いかけた。
「厳しいのは北よ。寒さも指導も一番厳しいわ。でもね、南はあの母娘達が陥れたり身代わりで切り捨てた夫人や令嬢が沢山いるのよ?」
王妃様がニッコリ笑う。
その笑いは恐怖でしかない。
「修道院は先に入った者の言う事が絶対らしいの。そんな中に新参者のあの人達が行けばどうなるかしらねー?」
(王妃様!笑顔が怖いっ!!)
コリーナは口元が引き攣るのを止められない。
そんなコリーナを見て、両陛下が大笑いをする。
「コリーナ嬢は直ぐに顔に出る。普通の貴族であればそれは不利に働いてしまう。だが、コリーナ嬢は何故か不利にならぬ。面白くて仕方ない。」
陛下は初めて会った時から、面白いコリーナを気に入っていたと教えてくれた。
面白いコリーナを両陛下はこの先も手放す事なく可愛がるのだ。
「そうだ。修道院への期間はどのくらいにするつもりだ?」
コリーナが暫し考え答えた。
「心から反省するまで。でも反省した振りをして出てきて公爵家とかに負担が行くのは良くないから。公爵家と侯爵の当主と陛下達で決めて下さい。」
コリーナがそう伝えた。
「自身で仕置きせず良いのか?」
陛下の問いに。
「あの夜会でのお仕置きで十分ですし、私がエリックと結婚して幸せになる。それを寂しい修道院で聞く。聞くと言うより耳に入るように定期的に修道院へ広めてやるわ!それが一番のお仕置きでしょう?」
ニッコリ笑うコリーナ。
「地味なお仕置きだけど、長く続くのは嫌ね!コリーナちゃんは本当に性格が悪いわね!」
王妃様の突っ込みにその場は笑いで溢れた。
彼女たちに関わるつもりはない。
お互い関係のない場所で生きていくのだ。
エリザベス嬢とアリアナ嬢は本気でエリックを好いていたのだ。
修道院で耳にするコリーナとエリックの仲睦まじい話が一番効果があったのは、コリーナだけが理解している。
〜❀〜
今日はパトリック様とリアナ様の結婚式が大聖堂で行われる。
高位貴族しか使われない(高額な為)大聖堂で、伯爵家が婚儀をあげる。
しかも監修をココが手掛けるとなると、見物人で街も大聖堂の周囲も溢れかえった。
前世の知識から貴族が喜びそうな仕掛けを幾つも用意する。
伯爵家から大聖堂までオープン馬車に乗り、新郎新婦の顔見せをする。
パトリックは拒否したが、信奉者であるリアナに押し切られパトリックの負けでの顔見せだ。
沿道からは美しい揃いの真っ白な衣装に歓声があがる。
沿道の若い女性達はその光景を目に焼き付けている。
自分の未来を夢見ているのだろう。
コリーナはオープン馬車の少し後ろから馬車でついて行き、人々の様子を伺う。
(憧れの表情から暗い表情になる⋯⋯。夢を見るけど、貴族だから出来る事だと諦めてるのよね。)
コリーナは馬車に同乗するエリックに自身の思いを語る。
「貴族だから出来る結婚式は意味がない。貴族と平民で差をつければ問題ないわよね?私は幸せな花嫁を沢山送り出したい。だから、平民向けの結婚式も手掛けるわ。」
強く揺るがない眼差しでエリックを見つめる。
エリックはコリーナの頰を撫でる。
「私は貴女が望む事を否定しない。やりたい様にやって下さい。
貴女のその輝きを私は愛していますよ。」
エリックがコリーナの唇を親指でスッ撫で、チュッと口付けを落とした。
「愛してます。コリーナ。」
エリックは優しくコリーナを抱きしめた。
その優しい温もりに、コリーナは静かに涙を流す。
胸が熱い。エリックの言葉に幸せな想いが込みあげてくる。
コリーナは抱きしめられたまま顔だけ上に向けると、自らエリックに口付けをした。
「エリック。私も貴方を愛しています。」
エリックは甘く溶けそうな笑顔をコリーナに向ける。
暫く抱きしめ合う⋯⋯。
神殿が近くなるとエリックがコリーナの化粧を始めた。
いつの間にかエリックは、コリーナの身支度全てを行う。
曰く、自分の容姿に無頓着なコリーナを、美しく仕立て上げる喜びを知ったらしい。
自分の手で美しく輝くコリーナを見ると、満足するらしいのだ。
端から聞くとエリックは少し危ない性格な気がするが、コリーナが受け入れている以上口には出来なかった⋯⋯。
馬車が速度を落とした。
コリーナ達は直ぐ様馬車から降りて、新郎新婦の馬車に近付く。
パトリックが先に降りて、リアナの手を取り馬車から降ろす。
リアナの顔は前にもショートベールが掛かり透けて見える。
神秘的なベールの使い方に女性陣からはため息が聞こえる。
パトリックの衣装はタキシードだ。リアナに手を差し出しエスコートする。
以前の王太子夫妻の婚儀には、ロングベールのみ採用したが。
今回はドレスの後ろの裾も長く仕立てた。
両肩を出し露出を多くした。
マーメイドラインのドレスに、ロングベール。
幸せな花嫁が進む度に、後ろではベールが風でフワリと揺れる。
ベールがどれだけ軽く作られているかが解る。
二人は馬車から大聖堂の入り口までゆっくりと歩を進め揃いの衣装を披露する。
大聖堂での式の流れには手もつけなかった。
神の前で行なう神事に口を出すべきではない。コリーナがそう判断した。
神殿の関係者は、大聖堂で婚儀を行なう話を聞いた時には転生者とはなんたる我が儘だと思った。
だが、神殿を使いたいだけで神事に口を出さないどころか、敬ってくれる言動に神官達からは好感を持たれ協力まで得たのだ。
この世界は二人で神官の前で署名して、婚儀が終わる。
コリーナは神官に二つの提案をした。
神前での誓いの口付けと指輪の交換。
結婚指輪がないこの世界で絶対に広めたかった。
何故なら、コリーナ自身が前世から結婚指輪に憧れていたからだ。
神官様達に奥様とのそろいの指輪を贈り、了承を得た。(決して賄賂ではない!はず⋯⋯。)
誓いの口付けも、指輪の交換も、女性達のギラついた瞳を見ればこれから流行る事が解る。
式が終わり新郎新婦が大聖堂から出ると、大歓声が沸き起こる。
幸せそうな二人を見て、コリーナはホッと息を吐いた。
エリックが手を繋いできて、お互い見つめ合い次の会場へと手を繋いで向かう。
この世界に披露がなかったので、やるのだ!
立食パーティーの形式で、沢山の料理や飲み物を提供する。
お茶会のような食事会。
参加した者は楽しんで料理をつまみ、お酒を飲み、挨拶に回る新郎新婦を祝った。
ココが手掛けた結婚式は大成功となって、コリーナは一日を終えた。
コリーナは忙しさからか体調を崩して寝込んでしまう。
だがエリックの甲斐甲斐しい看病もあり、元気に社交界へと復帰した。
この時、エリックはコリーナを独占する喜びを知った。
忙しい日々の中で学園を卒業し、キャシーとの別れもあった。卒業と同時に隣国へ渡り結婚式を挙げる事になる、
結婚したくない!
コリーナから離れたくない!
と、マリッジブルーを殿下ではなく私が原因でキャシーが起こしてしまう。
「殿下と結婚しないなら、私がキャシーの為に作ったウエディングドレスはゴミになるのよね。白銀で作られたドレスは他の人は着れないから、仕方ないわよね⋯⋯。嫌がるキャシーに無理は言えないものね⋯⋯。」
とても、とーっても悲しそうな顔と泣きそうな声でキャシーに伝えた。
キャシーはコリーナを悲しませた自分を許せず、殿下を引き連れ卒業式を終えると早々に隣国へと向かった。
勿論キャシーと殿下の結婚式はコリーナが手掛ける。
国同士の繋がりを強化する意味もあり、コリーナとエリックは気合を入れて挑んだ。
パトリック達と同じような流れだが、今回は新しい事を追加した。
神殿から王宮へと戻る馬車を適当な場所で一旦停止させた。
沿道の人々は何事か?!
と、ざわめき始めた。そこに沿道に向けて、キャシーが手に持つブーケを投げたのだ。
一人の女性がブーケを受け取った。呆然とキャシーを見つめる女性に。
「次は貴女が幸せになってね!そして幸せなブーケを次の人に渡してね!!」
キャシーが伝え終えると、馬車が進み大歓声を浴びながら王宮へと消える。
隣国で流行ったブーケトスは、世界へと広がった。
コリーナは幸せな結婚式が広がる事をとても喜んだ。
才能ある者を受け入れ、知識を伝える事を惜しまない。
キャシーと殿下の結婚式の半年後に、コリーナとエリックの結婚式が行われた。
コリーナは携わる事を許されず、エリックが全てを指揮した。
エリックのプランはコリーナにとって最高の出来事となった。
何が最高か⋯⋯。
それは、両陛下と平民が同じ式典に参加したからだ。
コリーナは従業員に結婚式に参加して欲しかった。だが転生者の結婚式ともなれば、両陛下が来られる。
その場に平民を入れる事は暗黙の了解で許されなかった。
エリックはコリーナの心残りを全て無くす為に尽力した。
両陛下と王太子夫妻はエリックの提案に快い返事をくれた。
だが、一部の高位貴族からは反対された。
反対するのならば、結婚式への参加は拒否する旨を書簡にして各家に送りつけたのだ。
書簡は記録に残る。
転生者様の幸せを反対した。
転生者様の結婚式への参加を拒否された。
それは歴史として記録されてしまう。
反対をしていた当主は直ぐ様エリックに賛成の意見を書簡を送り、無かったことにして欲しいと伝えた。
エリックは受け入れたが、式が終わるまでは書簡は破棄しない旨を伝えてある。
式を終え夜も深くなる頃、コリーナとエリックは初夜を迎える。
どんどん執着心が強くなるエリックは、コリーナを三日に渡り独占した。
部屋から出さずに甘やかし尽くし、コリーナは何度も気を失った。
流石に心配した侯爵夫妻によって、四日目でやっと部屋の外へと出れたコリーナだった。
コリーナの忙しい日々は続くが、元気に楽しく生きている。
時折エリックに攫われて、コリーナは数週間ほど社交界から消える。
コリーナが何気なく話した別荘と言う邸の話をエリックが気に入り、二人だけで過ごす邸を作ったのだ。
建てた場所は明かされず、魔法で隠された。
エリックは貴族向けに別荘を手掛け、財を築き上げた。
エリックが独占欲と執着心を出す原因を作ったコリーナは、エリックに逆らう事なく別荘の檻に入る。
コリーナが前世ではあるが、恋人がいた事など色々聞かれたのでエリックについ話をしてしまったのだ。
前世であっても肌を重ねた事実を知り、エリックの嫉妬心に火がついた。
そんな危ないエリックたが、コリーナはすんなり受け入れる。
コリーナは溺愛、執着に抵抗がないのだ、
お似合いの夫婦が出来上がっただけである。
何年過ぎようと仲睦まじい二人は、社交界での憧れの的になる。
二人の様な夫婦になりたいと、若い世代は愛人を持つ貴族を嫌悪するようになる。
夫婦仲や婚約者の仲が良くなると、国の経済も上向きになる。
全てが上手く回る。
幸せを平等に!と、コリーナは結婚式の貸衣裳を手掛け平民達も式を挙げる事になる。
大聖堂が平民向けに小さな神殿を建てた。
そこでは長年連れ添った夫婦も式を挙げたり、毎日結婚式が行われた。
コリーナは前世からの夢を叶えた。
子供も男女二人授かり、幸せそのものだ。
前世の頑張った自分を褒めたい。
前世頑張ったからこそ、転生したこの世界で幸せを手にした。
中庭で遊ぶ二人の子供を眺め、隣に座るエリックを見つめる。
「エリック。幸せをありがとう。」
満面の笑みで伝えるコリーナをエリックが優しく抱きしめる。
「コリーナがお仕置きをしてくれなければ、きっと私は何も気付かぬまま堕落しただろう。
私こそ、幸せをありがとう。」
コリーナに優しく口付け抱きしめる。
子供達のはしゃぎ声とエリックの胸の音を聞きコリーナは自身のお腹を撫でた。
その動作に気が付いたエリックによって、抱きかかえられ邸に連れ戻されるまで後少し。
妊娠中は心配性を全開にするエリックに、邸に軟禁されるのは明らかだった。
暫く抱きしめられる温もりに身を任せる事にする⋯⋯。
今は何も考えず、幸せに揺られるのだ。




