コリーナお仕置きを楽しむ(後)
会場中が両陛下と王太子ご夫妻のドレスと燕尾服に魅了されている。
「あら!?両陛下と王太子ご夫妻の胸元に青薔薇が⋯⋯。」
「本当!王家の受注で他家の衣装を断ってたのかしら?」
「そうね。王家からの受注を優先されるのは、仕方ありませんわよね。」
本心ではココで衣装を作れなかった事に不満があったが、王家が絡むならと納得するしかなかった。
女性達がヒソヒソ噂話を始めた。
コリーナとキャシーはエリック達と別れた。
これも、態とだ。
ありきたりな、「アレ」をするとコリーナが予測する。二人は飲み物が置かれたテーブルへと向かった。
キャシーを壁側に立て、コリーナがホール側に背中を向ける。
背後に近寄る気配を感じる⋯⋯。
(やっぱり来たわ!)
パシャッ!
何かをかける音がした。
「な!なんなのよー!!」
金切り声が背後で聞こえる。
「エリザベス様!大丈夫ですの?」
「コリーナ嬢にかけられたのですね!なんて酷い!」
「下位貴族がこんな事をして、ただで済むと思わない事ね!」
取り巻きも含め、煩い。
またもや野次馬の壁が沢山出来た。
コリーナが騒がしい背後に体を向け、ニッコリ微笑む。
「あら。エリザベス様。いくら赤い色がお好きでも自分で染めるのはどうかと。斑模様で、センスがなくってよ?」
扇子を顎にあて、コテンと首を傾げる。
コリーナの言葉に反論しようとするが⋯⋯。先に口を出される。
「私がエリザベス様にどうやってワインをかけますの?私は芸当は得意ではありませんので後ろ向きに飲み物はかけれませんよ?それに、私はお酒を飲みませんのよ?」
ニッコリ❀
「何を騒いでいるのです。」
声のする方に視線を向けると、王妃様がこちらに近付いてきた。
「エリザベス嬢。どうしてその様な格好に⋯⋯。」
王妃様が苦い顔を向けた。
「コリーナさんに近づいたら、こうなったのですわ!」
鼻息荒く、コリーナを扇子で指した。
「コリーナさん。そうなのですか?」
王妃様に問いかけられ
「私の後にいたエリザベス様にどうやってかけるのでしょうか?また、エリザベス様から香る匂いはワインです。私はワインは嗜ません。」
王妃様が頷きエリザベス嬢に問いかけようとする。それを遮るように、金切り声が響いた。
「まぁ!なんて事を。エリザベスに何をしているのよ!!」
金切り声の正体は、母親達だ。
「王妃様がいながら、なんたる事に。娘を陥れるつもりですか?!」
意味不明ないちゃもんに、コリーナはため息を吐いた。
下位貴族のしかも小娘にされた不躾な態度に、母親達が激昂する。
「下位貴族の分際で、高位貴族相手によくもその様な態度を!」
「そうですわ!」
「王妃様も王妃様ですわ。この様な者たちを窘めもせずにいるなど。」
「王妃様の国ではそれが常識なのでしょうか?」
クスクス笑いながら、コリーナだけでなく王妃様までも貶めた。
コリーナはプチンと、切れた⋯⋯。
「エリザベス嬢は身分が高ければ、何をしても良いと言われました。私を貶めても、キャシーに暴力を振るっても高位貴族だから身分が上だからと。
貴方がたも考へは同じですか?」
コリーナの言葉に、母親達は扇子を広げ口元を隠し侮辱の目をコリーナへと向けた。
「当たり前です。身分は絶対。貴女のような下位の小娘など処罰するのは簡単でしてよ?」
母親達の嘲笑う声をコリーナはじっと見つめながら口を開いた。
「身分が高い者の言う事は絶対なのですね。」
ウンウンと頷き、扇子を母親達に向けた。
「貴方がたの家門はお取り潰しにします。一族連座とまでは可哀想ですので、貴方がたのみとします。」
母親達はゲラゲラ笑い出した。
だが、コリーナの次の言葉に会場が静寂となる。
「ここにいるキャシーは、アーネスト第二王子殿下の婚約者です。アーネスト殿下が学園を卒業されるまで内密となっておりますが、国同士で決められ準王族として教育も終了しています。この意味が解りますか?貴方がたの娘は、隣国の王子殿下の婚約者に暴力を振るったのです。」
全員が驚いてキャシーを見る。
誰かがポツリと呟いた。
「キャシー様のドレスの色が白銀ですわ⋯⋯。」
野次馬達がざわざわし始める。
だが、母親達は反論する。
「たかが男爵家の娘が、殿下の婚約者などありえないっ!」
野次馬達も内心(それもそうだが⋯⋯。)と、思案している。
下手に口を出さない事を賢く選択していた。
賢くない母娘達は、文句を連ねる。
「キャシーが男爵家でも問題ないのは、私が妹のように可愛がっているからです。」
コリーナは姿勢を正し。
「私は転生者ですわ。これは、この国の陛下も隣国の陛下も承知している事です。私両国の陛下には可愛がって貰っていますし?」
コリーナがコテンと首を傾げる。
「スタンピートで治癒をしたのも私です。私は治癒魔法を使えますので。」
コリーナは驚く周囲を見渡し
「ココのオーナは私です。今回のドレスは私の知識から生み出した衣装ですのよ?それに、エリックに反射の魔法をかけてもらいました。エリザベス様がわたしにワインをかけたので、魔法が反応したのです。」
コリーナはニッコリ微笑み、母娘に視線を向けた。
「貴方がたはご存知?転生者である私の地位は伯爵令嬢だけではないの。陛下に次ぐ地位なのを。」
またも、ニッコリ微笑むがエリザベス嬢達も、その母親達も顔面蒼白になる。
そこに、アーネスト殿下と兄である王太子殿下が現れた。
「キャシー。大丈夫?」
アーネストが優しくキャシーを引き寄せ腰に手を回す。
その姿に先程のコリーナの言葉の信憑性が増す。
「キャシー嬢。怪我をしたと聞いたが大丈夫なのかい?」
エリザベス嬢達を睨みながら、王太子殿下がキャシーに問いかけた、
エリザベス嬢達はもう立っていられない。
王太子殿下にまで話が筒抜けだったと理解したからだ。
「身分があれば、どう処罰しても良いのよね?貴方がたは親子揃って他者を虐め抜いた。その報いは受けて貰います!」
コリーナの言葉にアリアナ嬢達や母親達は反論出来ずにいる。
だが、エリザベス嬢だけはコリーナを睨んでいる。
「皆さんは修道院に入って頂きます。きちんと反省して下さいね。」
コリーナは重い処罰をするつもりは無かった。地位を剥奪されるのが一番の罰になると思ったからだ。
「貴女はエリック様に相手にされなかったくせに!転生者の立場を使って脅したのでしょう!エリック様も断われないもの。
可哀想なエリック様。
立場を使わなければ愛されないなんて惨めね!」
コリーナと視線を合わせ、エリザベスがクスリと笑った。
コリーナが言い返す前にエリックが前に出てきた。
「エリザベス嬢。貴女は何を勘違いしているのですか?私は貴方がたに好意の言葉を一度も伝えた事はありませんよ?」
エリックはエリザベス嬢に視線を向ける。
「エスコートもしなければ、ダンスも踊った事はないですし。私から誘った事は一度もありません。私との体の関係も自身で話しているようですが、貴方は誰かと勘違いしているのでは?貴方がたに指一本触れていないのにどうやって夜を共にすると?」
エリックの話に顔を真っ赤にして、口をパクパクさせるエリザベス嬢。
周りの野次馬からは笑い声が聞こえ始める。
怒りに我を忘れたエリザベスは、コリーナに掴みかかった。
ドレスの袖を少し引き裂かれたが、エリックによって引き離された。
「近衛よ!この者たちを全員捕らえよ!転生者であるコリーナ嬢への暴言暴力。そしてアーネスト殿下の婚約者キャシー嬢への暴行の罪だ!!」
一部始終を見ていた陛下の言葉により、エリザベス嬢やアリアナ嬢と取り巻き達は、その場から縛られ連れて行かれた。
波乱の夜会となった。
「コリーナ嬢。気が済んだかな?」
陛下は意地の悪い顔でコリーナに聞いてきた。
「それなりに?」
その言葉に、両陛下が笑う。
「改めて言う事はないが、コリーナ嬢は我が国にとって大切な方だ。これ以上の不敬は許されぬ。解ったな。」
陛下の言葉に会場にいる者全てが礼をとった。
その後は普段の夜会と変わりなく各々が過ごす。
やはり興味はココのドレス。
怖れる事より興味が上回り、王妃様達は女性陣に囲まれた。
コリーナは説明を求められ、王太子妃に引き摺られながら女性陣の中に消えて行った。
取り残されたエリックだが、コリーナとの初めての夜会を楽しく過ごした。
女性陣の中からやっと出てきたコリーナは、ボロボロだった。
そんなコリーナを優しく抱きとめ、飲み物を渡し甲斐甲斐しく面倒を見るエリック。
仲良い婚約者を見ながら、周囲も自身のパートナーと夜会を楽しく過ごしていた。
この夜会を機に、パートナーとの色を揃えた衣装が流行する。
アクセサリーを揃える事もコリーナが提案する。
仲睦まじい夫婦や婚約者が、どんどん増えて行く。
コリーナは、この世界に転生して一番にやりたかった事があった。
それを実行する為にも、仲睦まじ婚約者が増える事は喜ばしい事だった。




