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お仕置きされて下さいね!  作者: おかき


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4/6

コリーナお仕置きを楽しむ(前)

キャシーが床に座り込んだまま、呆然としながら涙を流す。


コリーナは大きなバスタオルをキャシーに掛けると、アーネストを呼びに行った。


アーネストが走って部屋へと入って来た。

呆然とするキャシーの側に来ると、バスタオルに隠された腕の青痣を確認した。


アーネストはキャシーを抱き寄せ、

「守れなくて、すまなかった。」

と謝罪をした。

「私も謝罪します。未来の王子妃をお守り出来なかった。」

コリーナは頭を深く深く下げた。


キャシーは絶望してしまう⋯⋯。


大好きなコリーナに、そんな事をさせたかった訳ではなかった。自分こそが、恩人であるコリーナを守りたかったのだから⋯⋯。


アーネストはキャシーの気持ちが痛い程に解っていた。

だが、今はキャシーは準王族。自覚を持たなければならない。

しかし、自分の我が儘で飛び級させてまで学園に通わせたのだ。

この場で非がある者は、アーネスト自身だった。


絶望するキャシーの頭を撫で、優しく話す。


「キャシーは自身が準王族である事を自覚せねばならない。自分の判断が相手の立場を逆に追い詰める時もあると解っただろう?」


キャシーはアーネストを見つめた。


「だが一番責任が問われるのは、私だ。キャシーといたいからと、飛び級させてまで学園に通わせた私に一番の責任がある。」

キャシーの目を見てアーネストが話す。


「そうですね。一番悪いのは殿下です。最初に私は反対しましたよ?キャシーに何かあったらどうするのかと。あの女達が何をしでかすか解らないのにキャシーを通わせた殿下が一番悪い。そして、キャシーを守れなかった私が次に悪い。」


堂々と殿下を非難するコリーナを、キャシーは「格好良い!」と心の中で思う。


「コリーナ嬢に言われると精神的ダメージが酷くなるな。」

渋い顔の殿下が呟いた。


「さて。あの女達にはしっかりとやり返しますよ。キャシーの分も私の分もね!」

そう言いながらニヤリと笑うコリーナは、キャシーに治癒を施し体の痣を綺麗に消した。


キャシーと殿下は、なぜそんなにコリーナが楽しそうなのか理解出来なかった。

だが、やり返す事に反対はなかった。


次の日から、コリーナとキャシーは学園を休んでいた。

お仕置き作戦の準備の為だ。


エリックと殿下には学園に通って貰う。

私達二人の事を聞かれたら、全ての返事を曖昧にしてもらった。


すると、エリックとコリーナの婚約が解消されたと噂も流れた。

キャシーを虐げ、コリーナ嬢は邸にて謹慎されているとか⋯⋯。

コリーナの悪い噂が流れた。

発信元は、あの令嬢達だった。


そんな中、アーネスト殿下の兄であり隣国のマルラ王国の王太子殿下が、視察の途中でこの国に立ち寄る事になった。急遽開かれる夜会が数日後に行われる。

アーネスト殿下が、婚約者であるキャシーが虐げられ傷を負わされたと報告した為だ。




本日、コリーナはお仕置き作戦の為に王宮に来ていた。

陛下に謁見し、夜会でお仕置きする事を承認してもらう為だった。

陛下は面白そうだと、協力してくれる約束までしてくれた。


しかも、あの令嬢達の母親達は王妃様とは不仲であった。他国から嫁いだ王妃様を社交界で爪弾きにしたのだ。

だが、母親達を嫌う他家の女性陣が王妃様の味方となり、取り巻く貴族の数の差で王妃様が社交界を牛耳る事が出来たのだ。


王妃様と、王太子妃様とのお茶会でその話を聞かされた。

「母子揃って嫌われ者なのですね。」

コリーナの発言に否定はせず、お茶会を続ける。


「ココのドレスは数カ月前から受注を全て断っています。エリックとの関係を改善する為に、仕事を抑えていましたから。調度良い機会でしたわ。」


「今回の夜会でココのドレスを着るのは、王妃様と王太子妃様。それにキャシーに私となります。注文を断られた関係のない方には申し訳なく思いますが、あの母子のせいが大きいので仕方ないのです。」


あの母子は、ココのお得意様だった。嫌がらせの一つはドレスを作らないだった。


後の嫌がらせは?王妃様に聞かれ、

「夜会で私に絶対に絡んで来ます。その時に徹底的に口でやり込めてやりますわ!」


「後、あの令嬢達への一番の嫌がらせとして、エリック様からエスコートを受けダンスをします。勿論、揃いの衣装でです!」


楽しそうに計画を話すコリーナに呆れるが、コリーナは転生者でありココのオーナ。そして稀有な治癒魔法を使える人物。


全てが格上なのだ。


転生者は陛下に次ぐ地位がある。

王妃や王太子妃でさえ下なのだ。

だがコリーナは自身を下にし敬ってくれる。

それを自然と振る舞うコリーナを、可愛く思わないわけがないのだ。


コリーナがあの母親達に、大勢の観衆の前でお仕置きをする。

自身の今迄の鬱憤も晴らして貰える気持ちになる為、王妃も王太子妃も一切止める事はなかった。



そして迎えた夜会当日。

伯爵家では、コリーナとキャシーの夜会の準備が始まっていた。邸の中は慌ただしい。


夜会の時刻が近づき、伯爵家の玄関ホールには美しい姿の四人の男女がいた。


アーネストとキャシーは、隣国の王族の色である白銀の色を取り入れた衣装になる。


キャシーはワンショルダーのマーメイドドレスで、肩には大きな白銀のリボンを付けてある。

ドレスのラインは大人っぽく、リボンで若さを表現した。


コリーナの衣装は、エリックの瞳の色の薄い水色を使ったゴシック調のプリンセスドレスだ。

スカートはレースを何枚も重ね膨らみを抑える。


この世界はAラインのドレスか、プリンセスドレスが主流だった。

レースを使う箇所も、裾に少しあてるだけ。

前世の歴史の本の絵のようだった。


コリーナも他の型のドレスを作りたかったが様子を見ていたのだ。


ココの知名度もあがり、お仕置きの材料として今回新しいドレスを作ったのだった。


アーネストとエリックは、白銀と青色の燕尾服だ。

男性の夜会の衣装は、少し重そうなタキシード。

男性の衣装も手がけたいコリーナは、アーネストとエリックの衣装も手がけた。


夜会の会場に到着する。

会場に入ると熱気でクラクラしてしまう。


キャシーとコリーナだけが会場入りした。

エスコートもなく会場入りしたコリーナを見て、エリックが今迄女性をエスコートしなかったのを思い出す。


周りの女性達は驚きながらも、全員コリーナとキャシーの衣装を目で追っている⋯⋯


エリックとアーネスト殿下は時間差で会場入りしてもらう。


そう。目の前に現れたエリザベス嬢とアリアナ嬢を誘き出す為に⋯⋯。


コリーナの前に現れたエリザベス達は、コリーナとキャシーのドレス姿を見て目を見開く。

見た事もない型のドレスに。 

だが、ドレスの胸元近くに刺繍されている青薔薇を見て、そのドレスがココの作品である事に気が付く。


「ココの衣装を真似するなんて。無作法にも程がありましてよ?」

「そうですわ。ココは今回衣装の受注をしておりません。私達高位貴族すら断られているのです。下位の貴女達ではもっと無理でしょうし。」


エリザベス達の取り巻きも、クスクス笑い出す。


だが、会場にいる女性達はコリーナとキャシーのドレスに釘付けになっている。

新しいドレスの型に、透ける程の美しい刺繍のレース。


そして⋯⋯。コリーナの後ろ姿に、女性も男性も目を離せないでいる。


ドレスの背中は腰まで開いており、美しい背中には捨てられてしまう屑石達を連ね、チェーンにしクロスさせ背中のドレスにつけられていた。

美しい肌に美しい屑石。

初めて見るが、女性達の目を引きつける。


「ココのドレスを着ていても、品が無ければそれはただの布でしてよ?

人を陥れ、楽しむような醜い心を持つ人にココのドレスは相応しくありませんわ。」

コリーナが真っ直ぐな目で、エリザベス嬢とアリアナ嬢を見て口を開いた。


さも、貴女達の事だと言わんばかりだ。

エリザベス嬢が口を開こうとするが。


「貴女達は私の婚約者であるエリックに恋慕してますね。婚約者が自分にいないからと、人様の婚約者にちょっかいを出すのは淑女としてどうなのかしら?」


「なっ!!」反論しようとするエリザベス嬢をまた遮り。


「貴女達はエリックを手に入れる為に、散々私に嫌がらせをしましたね?婚約破棄しただの、キャシーを虐げただの沢山の嘘を吹聴してまわりましたね。」

「証人は沢山いましてよ?」


「そして一番許せないのは、キャシーに暴力を振るっていた事ですわ。」


話を聞き、野次馬の貴族達がざわざわして行く。

エリザベス嬢やアリアナ嬢が反論する。


「貴女達は下位貴族。私達は高位貴族でしてよ?男爵令嬢ごときに傷を負わせたとして、何も罪にはなりませんわよ?」

「身分を弁えた方が宜しくてよ?」

扇子で口を隠し、卑下た目でコリーナとキャシーを見てきた。


「貴女達は身分が高ければ、何をしてもよい。そう言うのですね?」


エリザベス嬢とアリアナ嬢はクスクス笑い

「当たり前ですわ。」

そう言った⋯⋯。


その時、エリックとアーネスト殿下が人集りの中から現れた。


エリザベス嬢達はエリックを目にすると、コリーナとキャシーを押しやり、エリックに近付いた。

だが、それを目にしたエリックとアーネストが逆にエリザベス嬢達を押しやりコリーナ達を助けた。


「っ!エリック様!なぜその様な娘を助けるのです!貴方様は私達の方を優遇していたではありませんか!!」

エリックは騒ぎ始める二人を無視する。


「コリーナ。大丈夫か?もう直ぐ曲が始まる。一曲お願い出来ますか?」

エリックがコリーナに左手を差し出す。

コリーナは美しい笑みで

「喜んで。」

と、エリックの手を取りエスコートされホールの中央へと進んで行く。

アーネスト殿下もキャシーをエスコートし、二組が中央に立つと曲とともに優雅に踊り始めた。

背後では、バキッ!と音がした。


(扇子を折ったのね。でも、これからよ!)

クスリと笑い、エリックが今まで誰一人としてする事が無かったエスコートとダンスをする。

婚約者はコリーナだと主張したのだ。


(扇子は足りるかしらね?)

クスクス小さく笑うコリーナにエリックが

「楽しそうだね。」

そう耳に口を寄せ囁いた。

コリーナは踊る足を止め、嬉しそうな顔でエリックに手招きをして屈んでもらう。


エリックの頬に、チュッと口付けをし

「そう。浮かれる程に楽しいの!」


その満面の笑みを見たエリックは、我慢ならないとぎゅうぎゅうにコリーナを抱きしめる。

仲睦まじい二人を周囲は温かい目で見ていた。


遠くから殺気を帯びた視線を感じるが、コリーナは先のお仕置きを楽しみにする。


コリーナとキャシーのドレスが優雅に舞う。ターンをする度にドレスや背中のチェーンがフワリ、キラリと踊っている。


エリックとアーネストの衣装も、スマートで手足の長い二人を素晴らしく映えさせている。

お互いの揃いの衣装。

男性も女性も衣装にばかりに意識が行っているが、アーネストとキャシーが揃いの衣装なのだと。

その衣装の色が隣国の王族の色だと、気にする者がいなかった。

それだけ、四人の衣装は素晴らしいのだ。


美しいカップル達のダンスに、会場中が魅了される。


ダンスの終了と共に、まだ来るはずのない両陛下と王太子夫妻。それにアーネストの兄である王太子殿下まで現れた。


一斉に礼をとり、深く頭を下げる。


(王妃様のあのドレスは何!素敵!)

(王太子妃様のドレスも素敵よね!)


女性達の心の声はドレスに夢中だ。


「面を上げよ。」

「本日の夜会は、隣国のマルラ王国より王太子殿下の来訪により行われる。両国にとって有意義な夜になるよう願う!」


陛下のお言葉に一同礼をとる。

陛下が楽団へと視線で合図をする。


曲が流れ、陛下と王妃様。そして皇太子ご夫妻が踊る。


またしても素晴らしい衣装に会場中が魅了されている。夜会はこれからが本番となる。


(私の気の済むまで、お仕置きされて貰います。)

両陛下と王太子夫妻のダンスを眺めながら、コリーナは小さく笑みを浮かべる。


誰もコリーナの腹黒い心を知る事はない。


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