火消し
とりあえず子供たちを村まで送り届けると、俺たちはなるべく村から離れた場所まで移動した。
アスラさんは、あの後すぐに目を覚まし、さっきからずっと俺たちに頭を下げていた。
「ほんっとーに、ごめんなさい」
元に戻ったアスラはやっぱり美人だし、色っぽい格好なのは変わらないのだが、何故かもうなんとも思わない。火球食らって煩悩が焼き尽くされたんだろうか。
「だいじょーぶ。だいじょーぶ
ちょっと丘が吹っ飛んで、バセットが焦げただけだし」
全く大丈夫じゃねぇよ。ってか、お前が言うな。
「子供たちの記憶は消したし、壊したところや焦げたところはいつも通り仲間を呼んで修復しますから気にしないでください」
メイレンが言う。それって本当に大丈夫なのか。
しかし、それを聞いてもアスラさんの顔は晴れない。
普段、些細なことも些細でないことも気にしない月夜と一緒にいるから、こういう反応は新鮮だな。
「お詫びと言ってはなんだけど、何か困ったことがあったら助けになるよ」
「デート一回、とか?」
「月夜うるさい
じゃあ、ニレイミトっていう夢魔について教えてくれないか?」
あいつは有名みたいだし、アスラさんはこの地方を治めてる女神。知らないってことはないだろう。
だが、
「あ、それ無理
ニレイミトは自分のこと話されるの嫌いだし
その子、他の女神たちからも気に入られてるから、あんまり機嫌損ねたくないのよね~」
·········おい。
軽い口調で言われて、俺は力が抜ける。
しかし、
「それに、ニレイミトに目をつけられたんなら、これからちょくちょく貴方の前に現れるつもりなんだと思うわよ」
なんだか気になる言い方だった。