表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

再会

 ············。一瞬気絶したらしい。

 俺は地面に仰向けに倒れていた。

 立ち上がろうとしたが、指一本動かすことが出来ない。

 俺の近くにはまだ子供たちがいるし、少し離れたところでメイレンが何か叫んでるが、内容がわからない。火球が弾けたときの大音量で耳がやられたのかもしれない。

 当然、アスラさんもすぐ上にいる。

 子供たちに早く逃げろと叫びたいが、口が動かない。

 アスラさんの手がさっきみたいに振り上げられて─

 その腹から、剣の切っ先が飛び出していた。

 いや、違う。いつの間にかアスラさんの背後に出現した男が、剣で彼女の腹を刺し貫いたのだ。

 そのとき、聴こえないはずの耳に、その男の声が響いた、ような気がした。


「悪いけど、自分のものに手ぇ出されるのは嫌いなんだよな」


 男が剣を引き抜くと、アスラさんの姿が変わる。いや、元に戻っていく。頭一つと、腕が二本の姿に。

 ぐったりしたアスラさんの身体を抱えて、男は降りてくると、彼女をそっと地面に横たえる。

 そして、離れたメイレンに向かって何かを叫んだようだが、今度は何故か聴き取れなかった。

 男が今度は俺の方に歩いてくる。

 俺に向かって何か手振りをして······。

 ········って、こいつは!

「親父のペンダントを返せ!!」

 俺は叫びながらがばっと立ち上がった。

「おう、元気?」

 男は呑気に寝ぼけたような返事をしてくる。

 前に会ったのは夜だったからよく顔は見えなかったが、この声に聴き覚えがある。

 しかも俺から奪ったペンダントをしっかり首から提げてるし。

 しかし、明るいところで改めて見ると、この男。腹立つぐらい男前だった。

 年は二十代半ばくらい。髪や瞳、着ている裾の長い変わったデザインの上着も含めて全身黒なのに、暗い感じは全くない。むしろどこかミステリアスで、その美貌と合わせて色気すら感じさせる。

 が、それに惑わされてる場合じゃない!

「元気?、じゃねえ!

 とにかくそのペンダントを返せよ!」

 俺が詰め寄っても男はあっけらかんと、

「えー、結構気に入ってるんだけどなー、これ」

 そのふざけた態度に俺は怒鳴りつけようとしたが、

「ちっちゃい子たちの前で大声出すのは、良くないんじゃない?」

 言われて気がつく。未だに腰が抜けて動けないでいる子供たちに。

 俺は慌てて子供たちの目線に合わせてしゃがみこむと、

「大丈夫か?」

 真ん中の一人がかくかく頷くが、三人とも泣きそうだ。むしろ今泣いていないのも怖すぎて泣けないって感じがする。

 精神的には大丈夫じゃなさそうだが、とりあえず怪我はしてないみたいだ。

「話は後にする

 とにかくこの子らを里に送って·····」

 俺は男の方を振り向きながら言う。

 

 いない。


 俺が子供たちに声をかけてる間に、あの男は消えていた。

 あの野郎······!

 歯をぎりぎり鳴らしてると、メイレンがこっちに駆けてくる。

「おーい、大丈夫か?」

「大丈夫じゃねぇよ」

「まあ、アスラ様の火球をまともに喰らってたからな」

 そういえば。

 俺ははっとして、自分の身体を見下ろす。

 さっきまで火球を受けて動けなかったはずなのに、怪我がない。

 メイレンはそんな俺をまじまじと見て、

「さっすが、ニレイミトの旦那だよな

 一瞬であの怪我を治しちまうんだから」

 ニレイミト?

「お前、あいつのこと知ってるのか?」

 俺がそう聞くと、何故かメイレンは一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐに何か気づいたように、

「え?·····ああ。なるほど

 知ってるよ。魔物の間じゃ有名だからな

 夢魔(ナイトメア)のニレイミトさん」

 夢魔·····。

「元々の魔力も桁違いだが、何より刀の腕が立つからな

 ここらの魔物であの人に太刀打ち出来る奴はいないよ」

 確かに、さっきもアスラさんの背後にいつの間にかいたもんな···。

「そういえば、アスラさんは大丈夫なのか?あいつに腹を刺されてただろ?」

 地面に横たわったアスラさんを見るが、腹から血は出ていないし、どこにも怪我らしい怪我はしていない。

「ああ。あれはニレイミトの旦那の能力で、刀で刺した相手の魔力を吸い取るんだ

 アスラ様レベルになると、少し休んだだけで回復するから大丈夫だよ」

「へえ···」

 聞けば聞くほど、ニレイミトはとんでもない奴らしい。

 そんな奴から、一体どうやってペンダントを取り返そう···。

「ま、気長にやっていけば良いんじゃない」

 という言葉と共に、背中に衝撃が走る。

 いつの間に来ていたのか、月夜が俺の背中をばっしばしと叩いてきた。その向こうには、月夜と一緒に置き去りにしてきた偽パンダ?のシオンがいる。

「お前ら、いつからいたんだよ」

「んー、しばらく前から?」

 ってことは、俺が火球食らってても、今まで何もせずに、ただ見てたってことなんだろうか。

 薄情な奴だな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ