四苦八苦
「どいつもこいつも暴走しやがって!!
対処するこっちの身にもなりなさいよね~!!」
近くに来ると爆発音に混じってアスラさんが叫んでるのが聴こえてくる。
愚痴りたい気持ちはわかる。
でも、それは今のあんたが言える台詞じゃねぇ。
とりあえず俺たちは無駄とは知りながらも一応対話を試みる。
「アスラ様ー!!」
「おーい!止まってくれー!!」
下から叫ぶ俺たちを、アスラさんは勿論気にもとめずに、地面に火球を投げつけている。
つーか、あんなにどっかんどっかん爆発させてたら、こっちの声なんてそもそも聴こえないんじゃねぇか?
「アスラ様!
気がついてください!
とゆーことで、水鉄砲!!」
メイレンが叫ぶと、地面から噴き出した水がすごい勢いでアスラさんに向かう。
だが、
じゅわっ
アスラさんに当たる前に、一瞬にして蒸発してしまった。
「うーん、アスラ様、大分熱くなってるな」
まさしく文字通り。
ってことは、下手に近寄れないってことか。
「炎は効くか?」
合成獣としての俺の飛び道具っていうと、口から吐く炎しかないんだが。
ってか、空飛んで火や雷投げてくるような相手に何をしろと?
「んー、火はあんまり効かないかな」
メイレンはほぼ予想通りの返事をしてくる。
「いつもはどうしてるんだ?」
メイレンたちの口ぶりからしてアスラさんが爆発するのは一度や二度のことじゃなさそうだ。
「いつもは、他の女神様を呼んだり、仲間を集めて総攻撃したりしてるよ
でも」
メイレンはアスラさんの進路に目をやる。
「誰かを呼びに行ってる暇はないな
もうすぐ、人里だ」
「アスラ様ーー!!」
「おーい!こっちに来てくれ!!」
せめて進路を変えようと火を吹いたり水を飛ばしたりしてみたが、アスラさんは俺たちを無視して人里のある方へ進んでいく。
「まずいな···。このままじゃ···」
そう呟くメイレンが、目を見開く。
その視線を追っていくと、
「うええっ!?」
アスラさんの前方に、五歳くらいの子供が三人。腰が抜けたのか、抱き合って震えながら、迫り来るアスラさんを見つめている。
「止まれーーー!!」
俺はアスラさんに向かって叫ぶが、アスラさんは未だに周りが見えてないのか、火球を子供たちの方へ─
俺は走った。合成獣にされたこの身体は、人間の何倍もの脚力がある。
それを、こういうときに使わなくて、何の意味がある。
俺は子供たちと、アスラさんの投げた火球の間に滑り込んだ。
火球が、弾ける。