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忙殺

 そして、空中に停止したと思ったら、

「なんだあれ」

 俺は思わずぽかんと呟く。

 怒りのせいかとんでもない表情になってる。のは、まだ良い。いや、良いわけじゃないけど納得は出来る。

 その顔が、増えてる。三つに。

 おまけに腕まで六本になってるし。

「ああ、アスラ様って、三面六臂(さんめんろっぴ)なのよね」

 月夜がなんでもないことのように言う。

「三面六臂ってなんだよ!」

「え~、顔が三つあって、腕が六本あって···」

「それは見ればわかる!」

 俺たちがそんな実のない会話をする横でメイレンが困った表情で、

「アスラ様って、ストレス溜まると一気に爆発するんだよな

 早速、丘砕いてるし」

 見ると、アスラさん?が手から雷のようなものを出してあちこちの岩や地面を破壊しまくっていた。

「って、落ち着いてる場合か!!地形変わってんじゃねぇか!!」

「まあ、それはよくあることだから良いとして」

「よくあっちゃダメだろ!」

「このままいくと人間たちにバレてまた通報されちゃうから止めないとな」

 通報されたことあるんだ、とか、通報されたとしてもあんなの人間じゃどうにもならないだろ、とか、言いたいことは色々あるが、とりあえずアスラさんを止めることに関しては賛成する。

「でもどうやって止めるんだよ?」

「そうだな···

 おい、シオン!」

 そう言ってメイレンが呼んだのは、さっきアスラさんと話してた白黒熊だった。

 アスラさんが爆発してからおろおろしていた白黒熊はこっちに慌てて走ってくる。

「この子は、偽パンダのシオン」

 月夜が紹介するがよくわからない。そもそもパンダが何なのかわからない。

「シオンお前、アスラ様に何か言ったのか?」

 偽パンダ?のシオンは、おろおろしたまま、

『最近アスラ様、ゴブリンの暴走を鎮めるのに忙しくて、そこにさらにコボルトたちの大規模な窃盗事件があったことを伝えたら···』

「キレちまったってわけか」

 仕事が辛いのはわかるが、キレ方が迷惑すぎるだろ。

「でもそれなら、少し休ませたら落ちつくんじゃ···」

 俺が提案するが、メイレンは首を振って、

「あの状態になったら、アスラ様はもう誰の言うことも聞かないよ」

「だったらどうすんだよ!」

 視界の端ではアスラさんが目についたものを手当たり次第に破壊しながら移動している。このままいくと人里に被害が出るんじゃないかと気が気じゃない。

「そりゃ、倒すしかないな」

 メイレンがきっぱり言う。おいおい。

「女神を倒して良いのか?」

「俺たちが本気出したって、女神は死なないよ

 せいぜい少し気絶するだけだ」

 そこは伊達に女神じゃないってことか。でも、

「そんなに強い相手をどう倒すんだよ」

 俺がそう言うと、何故かメイレンはちらっと月夜を見たが、当の月夜はにこっと笑って、

「そりゃ勿論、メイレンとバセットが死ぬ気で立ち向かうしかないわね!」

『えー』

 俺とメイレンが同時に不満の声を上げるが、

「はいはい

 被害が広がる前に、とっとと行く行く」

『頑張ってください~』

「いや、お前は来ないのか?」

 月夜が一緒に戦ってくれるとは全く思っていないが、何故かその隣で一緒に手を振るシオンに俺は突っ込んだ。

『戦いなんて怖くて無理です~』

 そんな熊みたいな見た目してるくせに?

「偽パンダは、人間のパンダに対する夢と理想から生まれた魔物だから

 可愛く笹食べて転がるくらいしか特技がないのよね」

 どんな魔物だ。

 この二人に期待するのはやめて、俺はメイレンと共にアスラさんを追いかけるのだった。

 三面六臂という言葉の響きが、なんか好き。

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