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第31話 白か黒か(1)



 ファラリスは、テレムセンに帰還後、その足で騎兵隊の隊舎に戻った。時刻は昼を少し過ぎていた。

  


「姫様、本日は非番のはずでは無かったのですか」

「うん、少し予定が変わってな。それより、カーバイン、至急隊舎にいる者を集合させてくれ」

「はっ、構いませんが、如何なる要件でありますか」

「全員集合させた後、隊員へ向け訓令を出す。急げ」

「・・・・はっ」


 命令を受けた副官のカーバインは敬礼をして退出する。集合が行われている間に、ファラリスは、素早く軍服に着替えた。


 10分程して、再びカーバインが入室し、隊舎の広場に整列が完了したとの報告にきた。ファラリスは、カーバインを伴って広場に出ると、その日に騎馬隊の隊舎に詰めていた300名の隊員が整然と整列し指揮官を待っていた。


「これより、緊急の訓練を行う。先日、魔物との会戦が行われた、丘陵地帯に向けて西門より出動する。10分後に出発する。以上だ、解散!」


 命令を受けて隊員は一斉にそれぞれが騎乗する馬に向かう。異例の命令に対して副官のカーバインは困惑の表情を浮かる。


「姫様、いったいどうされたのです。今回の訓練はどのような目的でありますか」

「・・・・カーバイン、今回は黙って従ってほしい」

「・・・・はっ」



 正確な時を計るために使われる砂時計が10分後を告げ、釣り鐘が打ち鳴らされる。出発の時刻だ。別の馬に騎乗したファラリスを先頭に、騎馬隊は隊舎から続々と出発していく。




 騎馬隊は西門を駆け抜け、公路に出ると、往来の旅人や商人を避けながら北方に進路を移し、丘陵地帯に出る。そこは、ほんの数時間前、ファラリスが襲撃された場所だった。


 その場所には早くもカラスが何羽も集まっていた。むろん、暗殺者たちの死体をついばむためであろう。放置された多数の死体が、すぐに騎馬隊によって発見される。


「姫様、これは!? 姫様はこれをご存じでありましたか」


 カーバインは驚きの表情を浮かべ、ファラリスに説明を求めてくる。ファラリスは、そんなカーバインの目を真っ直ぐに見つめるのだった。








■■■■■■■■





 夜になった。 慎重に遺体を隠して収容し、隊員と共に騎馬隊の隊舎へと戻ったファラリスは、隊員に緘口令かんこうれいを敷く。そして、居城には人を遣って、軍務で遅くなるむね伝達させた。


 そのうえで、執務室に向かい、歩哨を下がらせると部屋に一人で入り、内側から鍵を掛けた。


「出てきていいぞ」


 室内のクローゼットから、静かにアステルは姿を現す。


「——!? ば、ばか者、誰がそこに隠れていいと言った。そこは、私の服が・・・・あ、汗臭いかもしれ・・・・」


 ファラリスは顔を真っ赤に染めて、あたふたする。


「そうはいっても、この部屋に他に隠れるところなんてないぞ」

「で、でも、机の下とか、他にあるではないか!」

「窓際の机だと外から見られるかもしれないだろ、まあ、そう怒るなよ。それより、本題に入ろう」


 アステルは、騎馬隊全員がファラリスに率いられて出発した後、裏口より隊舎に侵入した。そして、教えられた通りに2階の執務室の下まで来ると魔神の能力で、軽々と飛び上がって、執務室に続くテラスに上がり、昼間ファラリスが開けておいたテラスの出入り口から、執務室に入ったのである。


 隊員たちが帰ってきた音を聞いてクローゼットに隠れたのは、隠れる場所といったらクローゼットの中というお約束(・・・)を守ったからだった・・・・。


「そ、そうだな。ゴホン。では、聞かせてくれ、あの後のことを」

「結論から言う。その男はシロだな。ファラリスが隊舎に帰った後、外でずっと見張っていたが、この隊舎から伝令らしき奴は誰も出ていかなかった。それから、男の部屋を探させてもらったが、部屋からは何も出てこなかった」

「やはりか・・・・。私も、傍にいてしっかりと見張ったが、不自然な様子はなかった。それに・・・・私は、自分の目を信じたい」

「ああ、そうだな。なら・・・・」


 アステルは、昼間今回の策を考え、ファラリスに授けた。もし、カーバインが黒なら、ファラリスの行動の隙をついて必死になって暗殺者アサシンたちに伝言を送ろうとするはず。


 衆人環視の中では、魔道具などで伝達することができない。なら、人を送って伝える可能性が高かった。しかし、それが無かったのである。念のため、部屋も探ったが、それでも何もなかった。二人は、潔白だったと結論を出したのである。



 数分後、執務室がノックされ、カーバインが入室してくる。


「——!? お前はあの時の!——」

「しっ、静かに。」


 入室後、アステルの姿を見つけ、敬礼するのも忘れ驚くカーバインに、ファラリスは声を落とすように言う。


「・・・・失礼しました。しかし、姫様、これはどういうことです。昼間のことといい、そろそろ小官にも、ご説明願えないでしょうか」


 ファラリスは、カーバインの潔白を信じて、暗殺者に襲撃されたことを話した。むろん、その中で、アステルが果たした役割も含めて。





「・・・・そうでしたか・・・・。姫様、先ずはご無事で何よりでした。アステルといったな。また、姫様がお前に助けられた。重ねて礼を言う」

「いや、礼を言いたいのはこっちだ。あの時、あんたが金を寄こしてくれなかったら、正直、俺は困ったことになっていた。情けないけど、強がらずに受け取っていてよかったよ」

「・・・・そうか」


 カーバインは、亜種オーガからファラリスを救ったあの夜、アステルにそっと金の入った袋を渡した騎士だった。


「私からは、謝らなければならないな。カーバイン、お前を試すようなことをして」

「なんの、姫様・・・・、と言いたいところですが、小官の忠誠心を疑われて、甚だ怒っております!」

「・・・・すまない・・・・」

「はっはっは、姫様、いや、ファラリス様。冗談ですよ、冗談」

「なに!?」


 カーバインは屈託なく笑った。カーバインがファラリスの名前を口に出した時、その灰色の瞳が優し気にファラリスを見つめるのを、アステルは見逃さなかった。


「ですが、姫様。小官ではないと信じてくださるなら、誰か、他に心当たりがあるのですか」

「・・・・残念だが・・・・もう一人だけいる」

「それは、何者でありましょうか」

「カーバイン、それをハッキリさせるためにも、力を貸してほしい」

「小官は、姫様のためにいかなる助力も惜しまぬと、既にお誓いしております」


 テレムセン軍では、騎士団長が代替わりするとき、騎士たちは、団長の命に従いいかなる助力も惜しまないと宣誓するのである。むろん忠誠は、テレムセン侯爵を務めるバーラム家に対して注がれる。よって、ファラリスは、騎士たちからそのどちらも捧げられていることになる。



 第20話くらいから、だいぶPVが増えてきて、本当に嬉しいと感じていますが、全くブックマーク数が伸びず、★は殆ど伸びていません。


・・・・趣味で書き始めたとはいえ、作者のモチベーションが、そろそろ限界を迎えつつあります。もし、応援するから、続きを頑張って書けよ! て、思ってくれるなら、ブックマークのボタンを押して下さい。

さらに、願わくば下の評価の☆を★★★★★をよろしくお願いします!

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感想など書いていただける方は、是非よろしく。今の私には、本当に救い主です。

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