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第23話 ファラリスとの出会い


 一体目のオーガを手刀で切り裂き、前進するアステルに、他のオーガが集団で襲い掛かってくる。アステルは、最小限の動きで繰り出されるオーガの攻撃を巧みに避け、次々にオーガを切り刻んでいく。アステルの手刀によって切断されたオーガの首や腕が宙を舞い、激しく血飛沫が飛び散る。文字通りアステルの進んだあとには血路が開かれていった。


 それはまるで、舞踏だった。夕暮れの茜色に照らされながら、両手を鞭のようにしならせ次々に繰り出されるアステルの攻撃。見るものによっては、その外見と相まって神事の舞の如く例えられるかもしれない。だがその舞踏は、ペアとなる相手オーガの息の根を止める『死の舞踏』であった。


 瞬く間に、百を超えるオーガが吹き飛ばされるようにして倒された後、アステルは、亜種オーガの前に辿り着く。


————なんだ、何が起きている。私は、夢でも見ているのか。


 ファラリスは、突然、戦場に乱入してきたアステルに最初、困惑したが、すぐにその光景に目を奪われていった。そして、戦場にいることを一瞬忘れ、アステルの姿に魅了されてしまった。


 他の騎士たちも同じだった。アステルの登場にしばし呆気にとられた後、劣勢を一挙に挽回できる機会が訪れたことに色めき立つ。騎士たちは俄然闘志を取り戻し、今こそファラリスを包囲から救い出そうとオーガの群れに攻撃を仕掛けていく。


 逆にオーガのほとんどが恐怖に支配され、今にも逃げ出さんばかりとなった。亜種オーガは、折角作り上げた有利な戦況をひっくり返されて怒り狂う。そして、オーガの群れに戦闘継続を命じるかのように、またしても雄たけびを上げる。


「グオオオォォォォ!!」

「うるせぇよ!!」


 一気に加速し、急接近したアステルが振るった手刀が、亜種オーガを切り裂く。宙を舞うオーガの首は、咆哮中の大口を開けたまま、なぜ?といった表情を浮かべていた。


 ズゥン! と音をたて、亜種オーガの体が倒れる。それが合図だった。恐怖に支配されたオーガたちは、こん棒を投げ捨て我先にと逃げ出し始める。


「逃がすかよ!」


 アステルは、大森林の方角に逃走するオーガを追撃する。歩兵となっていた者も含め、生き残った騎馬隊全員が騎兵に戻ると、ファラリスを中心にオーガの追撃に移る。


 日暮れがすぐそこまで近づいていた。




■■■■■■




 すっかり、辺りが暗くなったころ、ようやく最後のオーガの討伐が終わった。アステルの夜目の能力がいかんなく発揮されたのは言うまでもない。


「そこの方! 今回の働き、誠に見事であった。貴殿の助けがなければ、どうなっていたか分からん。兵たちを代表して礼を言いたい! できれば、お名を教えていただきたいのだが」


 ファラリスは、暗がりの中でようやくアステルを見つけると、興奮した様子で馬上から話しかけた。


 アステルは、さっきオーガに囲まれていた騎士だとすぐに気が付いたが、声で女だと分かって驚いた。女騎士の申し出に対しても、自分が今回のスタンピードの原因かもしれないと考えると、素直に礼を言われるような気持には到底なれなかった。


 だから、黙ってこの場を去ろうとした。だが、女騎士ファラリスは、そんなアステルの態度を、馬上から自分の名を名乗らずに相手の名前を聞く無礼に気を悪くしたのだと思った。すぐに慌てて愛馬から降りると、兜を脱いでアステルに駆け寄った。


「申し訳ない。助けていただきながら、無礼を働くなど、貴族の風上にも置けぬ。謝罪したい。まずは私の名乗りを許してほしい。我が名はファラリス。ファラリス・バーラム・テレムセン。テレムセン侯爵ベンドア・バーラムの娘だ」


 ファラリスは、アステルの前に立つと、背筋を伸ばして良く通る美しい声で名乗った。


————侯爵、侯爵の娘と言ったか。どおりで、謝罪したいと言いながら、頭を下げないわけだ、どこの世界も偉い奴は同じか。いや、文化の違いかもしれが・・・・。ともかく、貴族に目を付けられて、俺のことが万が一にも、王やサーゲイルに知られるのは良くないぜ。


「ご丁寧な挨拶、有難うございます。俺は、侯爵様の御令嬢に名乗るような者ではありません。また、お礼のお気持ちは有難く受け取りましたので、それで十分です。ではこれで」


 アステルは、とっととこの場を去ろうと考え、そう言うと軽くお辞儀した。


「ま、待ってくれ! いや、待っていただきたい! それでは、恩を受けた侯爵家として面目が立たない。第一、私の気持ちが収まらない。どうか、私と同行してテレムセンに来ていただきたい。そこで、正式にお礼と恩賞を受け取ってほしいのだ」


 必死になって頼んでくるファラリスを見て、アステルは、少し気の毒に思ってしまった。何より、いつの間にか松明を手に周囲を囲む騎士たちが、そんなファラリスの姿を心配そうに見ているのが分かった。


————これは、このお嬢様がここまでするのを見たことがないって顔だな。これ以上断ると、却ってまた悪目立ちするか・・・・。仕方ない。


「気持ちはよく分かりました。お嬢様にそれ以上言わせる訳にはまいりません。俺はアステルといいます。どうぞよろしく」


 アステルから自己紹介を受けたファラリスの表情は、騎士たちがこれまで見たことがない、眩しいと言いたくなるほどの飛び切りの笑顔になった。


「しかし、正式なお礼や恩賞など大げさなことは、辞退します。俺は、理由があって静かに旅をしている者です。もちろん、別に何か悪いことをして逃げているわけではありません。ですが、目立つような真似はしたくありません。だから今回のことも、結果としてお助けしただけで、お礼を頂こうなんて、全く考えてませんでした。ですから、あなた方と街に一緒に行くのも遠慮します」

「・・・・そうか、事情がおありのようだ。これ以上、御引止めする訳にもいくまい。だが、折角知り合えたのだ。・・・・アステル殿、貴殿は私の恩人。どうか、後でもう一度・・・・」


 ファラリスの表情は目に見えてシュンとなっていった。アステルは、この表情はズルいなと思わないでもなかったが、ファラリスだけに聞こえる小さな声で、


「・・・・俺は、テレムセンていう街に行ったことが無いのですが、俺の知り合い(ラース)が、テレムセンには東西に門があると言ってました。その東門は、外国へ通じる街道に面しているため、人通りは少ないと聞きました。なら、その東門の外で二日後の昼に待っています。ただし、誰も連れてこないと約束してください」

 

 と囁いた。ファラリスの顔がみるみる赤みをさす。


「わかった。約束する。二日後の昼、東門の外で必ずだぞ」

 

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