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第21話 テレムセン防衛戦(2)


 北方の大森林地帯へとオーガの群れを誘導する騎馬隊だったが、森林地帯を目前にして、オーガの群れは途中で方向を転じ、再び南下の気配を見せる。魔物を森へ追い返すか、全滅させない限り、この戦いの決着はつかない。


 太陽は西に傾き、夕刻が近づいてきた。夜になって、この付近でオーガを四散させてしまえば、この後、住民に必ず被害がでる。


——拙いな、このままでは埒があかん。やはり、この辺りでオーガと決戦する必要があるようだ。


 ファラリスは、騎馬隊の被害を抑えつつ巧妙に戦ってきたが、制限時間タイムリミットが迫ってきた。


 だが、騎乗のまま戦ったとして、僅かでも馬の速度を緩めれば、たちどころにオーガは馬の脚をこん棒で薙ぎ払いに来る。よって、騎馬隊は絶えず移動しながら、馬上から槍で攻撃する外ない。これではオーガの固い外皮を貫くことは難しかった。


 ファラリスは騎馬隊へ指示を出し、騎馬隊の約半数を敢えて下馬させると、自らも下馬してオーガに斬り込みをかけた。


 オーガは棍棒を振るって応戦するが、騎士たちは盾で防ぎつつ、複数で1体のオーガに向かい互角の戦いを演じる。そんな中、一人オーガを圧倒するのが、ファラリスだ。まともに受ければ必死のオーガの振るう渾身の一撃を華麗に躱し、カウンターでオーガの頸部に鋭い斬撃を加える。その直後、背後から振り下ろされる別のオーガの攻撃も背中に目がついてるかのように、余裕で避ける。そして、振り向きざまにまたしても頸部に必殺の斬撃を加えるのだった。


 歩兵となって戦う騎士たちを援護するため、残りの騎馬兵はオーガの背後に回り込み攪乱と牽制を行う。ファラリスを中心にして見事に統制が取れた騎士たちだ。


 騎馬隊の優勢が確立されようとしたとき、一際大きな一匹のオーガが雄たけびを上げた。


「グオオオォォォォ!!」


 この雄たけびを切っ掛けにして、それまでバラバラに戦っていたオーガたちが俄かに組織立って戦うようになっていった。4体、5体で集まり、背後を守るようになったのだ。これでは背後からの騎馬兵の牽制も難しい。


 ————特殊個体(亜種)か! だが、あれを討てば形勢は一気に傾くはず。


 ファラリスは再度全体に号令を掛けると、集団戦を始めたオーガに対し、歩兵となった騎士に盾を並べて壁を作り、防御に徹するよう指示した。そして自らは、単身でオーガの群れに突入し、亜種オーガを討ち取ろうとする。


 数百のオーガの群れを美しく泳ぐようにすり抜けながら、すれ違いざまオーガの首に斬撃を加えていく。そうして、ついにファラリスは亜種オーガにたどり着く。


 ファラリスの振るう流れる水のごとき剣さばきは、これまで彼女の下で戦う騎士たちに絶対の信頼を与えてきた。その美しい必殺の斬撃が、亜種オーガに加えられた。見つめる騎士たちに——やった! という勝利の予感が過る


 「——ガキン」


 亜種オーガは金属製のこん棒で、ファラリスの斬撃を防いで見せた。更に、続けざまこん棒で鋭い突きを加えてくる。ファラリスは、それを後方に宙返りして辛うじて避ける。


 ————油断した。少し、簡単に考えていたようだ。


 ファラリスは、亜種オーガの力を甘く見ていた自分を恥じる。刹那、亜種オーガは再び雄たけびを上げる。すると、オーガの群れはファラリス逃がすまいと包囲を形成する。


「姫様! 今助けに参ります!」

「止せ、陣形を崩すな!」


 ファラリスを救出しようと、多くの騎士が防戦を捨ててオーガの群れに切り込む。統率を一時でも失えば騎士といえどオーガの敵ではない。ファラリスを救出しようとした騎士は次々にオーガに撲殺される。形勢は逆に騎馬隊の不利に傾きつつあった。


 ————どうする、撤退するか。


 残存するオーガはまだ三百体を優に越す。強力な亜種オーガをこのままにはできない。しかし、既に騎馬隊にも百騎近くの死傷者が出ている。日暮れも間近い・・・・。


 戦いの潮時が来ている。自分を取り囲むオーガから繰り出される攻撃を躱しながら、ファラリスは決断を下した。


「総員、撤————」


 撤退を叫ぼうとしたその時、亜種オーガの後方に位置するオーガの群れが、血飛沫を上げて吹き飛ばされた。さらに、その血煙は勢いを増して亜種オーガに近づいてくる。


————なんだ、何が起きている。


 あっという間に、百体近くのオーガを切り裂いた存在が、亜種オーガの前に辿り着く。黒の上下の服を身に纏い、白銀の美しい髪を靡かせる褐色の人物が。



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