呼びかける声
ある夜、突然の非通知の電話で目を覚ました。電話の相手は切羽詰まった様子で一言、「助けて...」。その声はかすかに聞こえ、何かが喉に詰まったような苦しげな音が混じっていた。驚きと不安が胸に広がり、その夜は一睡もできなかった。
翌朝、心配が募り、発信元を調べることにした。すると、その電話が行方不明になった幼馴染の家からかかってきたことが判明した。しかし、ここで疑問が湧いた。幼馴染が行方不明になった後、彼の両親も失踪し、家も取り壊されて何もないはずだったのに。
好奇心と不安が高まり、幼馴染の家だった場所に行くことにした。
その日、幼馴染の家の跡地にたどり着くと、予想通り家はなかった。しかし、立ち尽くす私の耳に「こっち...こっち...」というかすかな声が聞こえた。その瞬間、意識が途切れ、目が覚めるとそこはあの時の幼馴染の家の中だった。
状況に混乱しながらも、何度も来たことのある部屋なのに懐かしさを全く感じないという違和感があった。本能が警告を発する。「ニゲロ」と。
家を出てあたりを見回すと、荒れ果てた庭と古びた屋敷が立ち並んでいた。門は開かれており、私を誘うように静まり返っている。しかし、なぜか外に出られないという感覚に襲われた。何かを探さなければならないという強迫観念が私を支配する。
一度家に戻り、部屋を探索していると、古びた日記が目に入った。ところどころ塗りつぶされており、それが幼馴染の名前だと直感的にわかった。そういえば幼馴染の名前が思い出せない。思い出そうとすると頭がズキズキと痛む。
日記を手に持ち、家をさらに探索すると、さっきまではなかった地下室の扉のような物が現れた。探していない場所はここだけ。好奇心が勝ち、扉を開けてみることにした。暗く湿っぽくてとても嫌な感じがしたが、足を踏み入れる。
地下室の中には謎の器具がたくさんあり、どこからともなく気配が感じられた。奥へ進むと、長い箱が目に入った。釘と板で厳重に固定されている。外してみると、中には何もなかった。
その時、背後から「コトン」と音が聞こえた。家を出ると、門が動く音がし、次の瞬間、「ありがとう...」という声と共に意識が遠のいた。
目が覚めると、私は病院のベッドに横たわっていた。あの家の前で倒れていたところを救助されたらしい。しかし、未だに幼馴染の名前は思い出せない。あの箱には何が入っていたのだろう。そんな疑問が頭を巡るが、次第にそれも薄れていく。
しかし、完全に忘れることはできなかった。夜になると、あの非通知の電話の声が耳に蘇り、再び恐怖が胸を締め付ける。心の奥底に残る不安と恐怖。あの家、あの地下室、そしてあの声。全てが一つに繋がっているような気がしてならない。