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 学園内に設置されている水晶映像記録装置が、過去の記録を再生する。

 月の乙女が攻撃魔法の雷を受ける寸前で回避した映像が、教室に映し出される。

 「学園内で月の乙女が襲われたときの映像です。残念ながら、犯人の姿は建物の死角で隠れてますが、天候を操る高度な魔法を使える天才は、カーレット侯爵令嬢以外はありえない。よって、月の乙女殺害未遂の罪状で、悪役令嬢として断罪する」

 あー。

 王子、水晶映像の原理をわかっていないな。設置された水晶から見える視点が再生されているだけと勘違いされがちだが、あれ、空間情報をまるごと記録していくから、設定をいじれば死角の場所も映像再生できる。

 「確かに、犯人の姿が映ってないのは残念です」

 うん、妹もわかってないな。

 「王子は天候を操る魔法は姉しか無理だと言いましたが、それは一人だけで魔法を発動する場合ですよね。王国お抱えのエリート魔法使いが三人ぐらいで魔力を重ねれば可能です」

 「あのプライド高い連中が協力して魔力を重ねるだと?」

 「王子の命令なら、やるでしょう」

 「言葉を慎んだ方がいいぞ。今の発言は不敬罪だ」

 「失礼。しかし、王国お抱えのエリート魔法使い達も、雷の魔法を発生させるのが限界で意味のない余計なワンポイントを付け加えることは無理だったみたいですね」

 王子は呻く。

 残り数手でチェックメイト負けするのを悟った者の表情になる。

 「王子は、姉が正体を隠して魔王軍と一人で戦ったことを知っていますか?」

 ん?

 なんで、それを妹が知っているんだ?

 「当然、知っている」

 王子も知っているのか?

 「魔王軍四天王の一人目を倒したとき、姉はどんな攻撃魔法を使いましたか?」

 詰問され、がっくり項垂れながら王子は弱々しく答える。

 「汚桜」

 「そうです。桜吹雪の刃で敵を攻撃する強力な魔法に加えて、綺麗なはずの桜吹雪が汚れにまみれている。これは戦いの道具としての魔法のビジュアルとして評判が良かったですね。センスがない奴が、ちょっとほめられるとどうなりますか?」

 「調子に乗る」

 おい!

 「私の姉はどうなりました?」

 「調子に乗った」

 「魔王軍四天王の二人目を倒したときの攻撃魔法は泥雪。綺麗な雪に泥を混ぜる。この時、みんな、姉が調子に乗ったなと思いましたね。三人目のときは朽ち花。この時点で、みんな、姉がこれを一生こすり続けるんだなと察しましよね。四人目の時は腐り川。どうです?もし、この姉が月の乙女を襲撃したなら、雷だけの魔法攻撃をしますか?」

 「ありえない」

 「そうですね、クソダサい姉なら、雷に何か負の要素を付け加えるはずです。つまり、月の乙女を襲ったのは?」

 王子は敗北を認める。

 「カーレット侯爵令嬢ではない」


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