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「た、確かに、カーレット侯爵令嬢はクソダサい。しかし、クソダサいのにも限度があるはずだ。おしゃれな便箋を選ぶことぐらいはできるはずだ」
おい。
王子。
私が確かにクソダサいとはどういうことだ。
「お姉さまのセンスの無さは壊滅的で底なしなのは周知の事実でしょう」
おい。
妹。
私のセンスの無さが壊滅的で底なしとはどういうことだ。
「そんなのは水掛け論だ」
「では、お姉さまのクソダサさを、あらためて検証しましょう。バードレック・サルデド氏の証人申請をお願いします」
再びファッション界の第一人者が呼ばれる。
「この貴族社会は服装が細かい決まり事で制服化してます。ですが、小物類は各自の自由です。その人物のセンスが出るのが、身に着けている小物なのです」
証拠品として髪飾りがみなの前に提出される。
「こちらは月の乙女が普段使用しているものと同じものです。バードレック・サルデド氏。点数をつけるとしたら、百点満点として何点をつけますか?」
「96点です。髪飾り単体の上品さに加えて、自身の髪の色と質を考慮して選ばれています」
「では、こちらの姉が使用している髪飾りは何点をつけますか?」
「2点です」
え?
2点?
いやいや、そんなわけないよ。
これすごくかっこいいよ。
「どうしてそんなに低評価なんですか?」
「小物なのに色が多く癖が強すぎます」
「では、こちらの姉のブローチは何点ですか?」
「0点です。いや、本当にこれ使ってるんですか?」
「公な場では装飾品もメイド長が選びます。これは普段使いです」
「いや、でも、これはいくらなんでも・・・」
「では、姉が舞踏会で身に着けていこうとしたこの首飾りは何点ですか?」
「マイナス300点です。トゲがついている意味がわかりません」
マイナス?
「どうですか、王子?これで姉のクソダサいことは証明されたはずです」
「ま、まだだ。こんなもので、センスがある便箋を選べなかったなんて、認めるわけにはいかない」
「王子はルト孤児院のことはご存知ですか?」
ん?
なんで、妹がルト孤児院のことを知っているんだ?
「ああ。カーレット侯爵令嬢が身元を隠して資金を全部援助している孤児院のひとつだろ」
王子も知っているのか?
「よく、ご存じで」
「そんなことは、ここにいる全員が知っている」
そうなのか?
「姉は偽名でルト孤児院に援助をしてます。そこの子供達が感謝の手紙を姉に送り、返ってきた姉からの手紙がこれです」
中傷が書かれた便箋の隣に、私の孤児院の子供への手紙が並べられる。
離れて見ると、色合いが綺麗に分かれている。嫌がらせの便箋はやわらかい色合いだが、私の方は灰色系が多い。
「どうですか?文字を伝えるのが目的なのに、文字を見えづらくしているこのドブネズミ色」
「もういい!」
「何か言いましたか、王子?」
「もういいと言ったんだ。認める。カーレット侯爵令嬢のクソダサさは底なしだ。中傷の手紙で選ばれたセンスのいい便箋を、カーレット侯爵令嬢が選べるはずがない」
よし。
この手枷がはずれたら、妹と王子の二人はぶん殴る。




