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 学園裁判。

 この魔法学校内で行われる、学生による疑似裁判。

 本物の裁判ではないが学生への効力は絶対である。

 この王国で最大の勢力を持つ侯爵の娘である私が、仮に学園の外で殺人をおこなっても罰する法律さえないが、学園内で猫を蹴り飛ばしたら牢獄行になる。

 私を陥れようとするなら悪役令嬢にするしかなく、月の乙女はそれを実行したのだろう。


 今回の学園裁判の被告は私。

 弁護人は、私の妹のエルル。

 判事はサングワイト王子。

 裁判長は学級長。

 くじ引きで選ばれた十三人のクラスメイトが陪審員。

 評決は最終的に陪審員の多数決で決められる。

 魔法学園の歴史の中で学園裁判が行われたのは十数回あるが、いずれもグダグタな結果になっている。

 学生同士で公正な裁きをとの立派な建前だが、狭い貴族社会の人間関係で実際にやってみると、一番権力のある人間になびくことになる。

 今回の裁判で一番権力があるのはサングワイト王子。その王子が強い意志で私を悪役令嬢として有罪にすることを表明しているので、まず評決は全員一致で有罪になる。

 だが、学園裁判おいて私の方に有利な点は、この裁判の記録が公開されることにある。この魔法学園のモットーである透明性のため、学園内の情報はどんどん公開され記録される。この裁判において、私が無実であることが誰の目にも明らかなのにそれをねじ曲げて有罪の票を入れたら、一生記録され家の名を汚すことになる。つまり、無実の証明ができれば、陪審員達は有罪の票には入れづらくなる。


 「この匿名の手紙の山をみてください。いずれも月の乙女が平民の出であることを誹謗する内容です。この便箋には卑しき生まれの者は学園から出ていけと書かれてますね。他の手紙も同様の脅迫文が書かれてます。こんな手紙を毎日のように送りつけられた月の乙女の心労を思うと心苦しくなります」

 王子は裁判長と陪審員に対してアピールをする。月の乙女はか弱い女が涙をこらえる演出をしている。

 月の乙女はこの学園唯一の平民の生まれだ。魔法の運用にはそれなりに資金が必要なので、平民生まれの月の乙女は、才能はもちろんそうとうな努力をしたはずだ。そのことは学園の共通認識なので、公の場で平民の出を差別したならおそらく貴族社会を追放されるぐらいのタブーだ。

 「これら中傷の手紙の文字をカーレット侯爵令嬢の文字と鑑定した結果、同一人物の者と判明した。よって、カーレット侯爵令嬢を月の乙女を中傷した罪で悪役令嬢と認定する」

 勝ち誇ったように宣言する王子。

 甘い。

 あいかわらず、見通しが甘い人だ。

 この国の筆跡鑑定の精度は100パーセントだ。誤魔化しがきかない。つまり、今回のケースは鑑定人が偽証したことになる。王家ががっつりと圧力をかければ不可能ではないが、そこまで王子が腹をくくるとは考えずらい。学園の授業の一環として、間違った鑑定結果を悪例として出してくれと頼んだ可能性が高い。

 筆跡鑑定人をこの場に呼ぶのがこちらの最善手だろう。

 すでに口裏を合わせている可能性もあるが、その場合でも陪審員たちにこちらは裏付けをきちんと取る能力があることを示すのは有効な手だ。

 さあ、妹よ。筆跡鑑定人の証人申請をするのだ。

 口枷のせいで声が出せない私は、妹に目で合図をする。

 妹は大きくうなずく。

 頼れる妹だ。

 

 「王子の主張はこうですね。私の姉がこの便箋を用意し、中傷の文章を書いて、月の乙女に送りつけたと」

 「その通りだ。エルル君」

 「この便箋、センスがいいと思いませんか?」

 ん?

 妹の言葉に、しまったと言う顔をする王子。

 月の乙女も動揺した表情になる。

 「バードレック・サルデド氏とリックモ・トリマリ氏の証人申請をします」

 誰だ、それ?

 やってきたのはファッション界での第一人者と文具業界の重鎮らしい。それぞれが大量の便箋を鑑定し、それぞれデザインのよさと品質の上品さを保証する。

 「みなさんおわかりですね。この手紙全てがセンスがいい便箋が選ばれてます。そう、私の姉のクソダサいセンスで用意できる便箋ではありえないんです。この中傷の手紙を書いたのは姉ではないことの証明です」

 おい!


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