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グールムーンワールド  作者: 神坂セイ
26/28

第26話 都市防衛戦争④

「この場の各隊員は下がってB級以下を迎撃。譲原はあの目標の取り巻きのA級をやれ」


 大河内が冷静にオレたち全員に指示を出した。


「やれやれ、いいところは持っていくんですね。ま、了解ですよ」


 瞬間、譲原が消えた。


「#二重帝級爆発剣__ダイテラエクスプロージョン__#!」


スドォォン!!!


「うおお!!」


 一瞬でA級がバラバラになった。

 オレは譲原は一発であの怪物を倒せるのかと驚愕した。


「都市最強って……本当だったんだな……」


「え? 信じてなかったの?」


 オレの横にはなぜか譲原がいた。


「え!?」


(さっきあのA級のそばにいたはずなのに!)


「佐々木くんたちはもうちょっと下がっててよ」


 譲原はそう言って剣を構えた。


「#三重王級飛斬散弾剣__テトラギガストラッシュショット__#!」


 広範囲の技を繰り出して辺りにいたグールを一掃する。


「す、すごい……」


「#帝級風嵐__テラストーム__#!」


 市長が右手を狼型のグールに掲げると辺りの建物や地面がバラバラに吹き飛んでいった。まるで見えない刃物が嵐のように突き進み、目標のグールに迫った。


グオオオ!!


 狼グールが叫ぶと顔の先に光弾が何十発も生まれ、その嵐に向かって突き進んでいった。


ドドドド!!!


 激しい炸裂音と共に辺りは瓦礫の山と化した。


「後退! 後退だ!! 市長らの邪魔になる」


 菅原が叫ぶ。

 オレたちは慌ててその場から離れた。


 菅原の他、ユウナとアオイの姿が見えた。ユウダイがチバを背負っているのも遠目に確認できた。


(よかった……! みんな生きてるみたいだ)


 オレたちは強力な攻撃を放ち続ける市長達から離れると、その攻防を見守っていた。

 A級隊員の戦いに割って入るなど誰にも出来なかった。


「やべぇな、A級は」


 アオイが声を溢す。


(確かに……)


 譲原の動きが遠目でもあまり目に追えない。

 そして市長は魔術士なのだろう。あり得ないような大魔術を連発していた。

 もうその余波で、下級グールは掃討してしまっている。

 

 もうオレたちの仕事は2人の勝利を願うだけだ。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 剣術士である譲原の売りは、ヒットアンドアウェイで、特殊な魔導具を使用して高速度移動を可能にしている。その移動速度を持って敵に近づき攻撃を加えた瞬間後には距離を取って反撃を許さない。

 彼の持っている大剣も大容量の魔素を貯蔵、放出可能で、彼のポテンシャルを十分に引き出していた。


「#帝級衝撃散弾剣__テラインパクトショット__#!」


 譲原は依然として激しい攻撃を続けるていりが、相手もA級と位置付けられる上級の怪物で、素早い移動を続けながら譲原に光弾と、爪や牙の攻撃を仕掛けていた。

 お互いにお互いの攻撃を全ては避けきれずに、少しずつ負傷していく。

 

 だが、譲原は嬉しそうに笑いながら大技を連発していた。


「楽しいなぁ! 久しぶりだ!」


 A級グールも5体とも万全であればもう少し善戦もできたかも知れないが、最初に2体を倒されてしまっていて、そのまま5体が全滅するのにはそこまで時間は掛からなかった。

 もちろん譲原が突出して強いというのがこの勝利の理由だ。


 終わってしまえば、譲原の一方的な勝利だった。


「はぁ、はぁ、もう終わりかー」


 譲原は満足そうに声を出した。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 市長である大河内は魔術士でもあり、譲原のように高速度移動は出来ない。だが、魔術で強固なバリアを自身の周りに張りながら、同時に強力な攻撃魔術も放っていた。


 相対する狼型のグールは見た目の通り素早く大河内の魔術をかわしながら光弾を連発し、相手の消耗を計っているようだった。

 さらに司令型らしく同時に周囲からグールを呼び寄せ、この戦いからの脱出と大河内への奇襲も目論んでいた。


 だが、少しずつ集まってきたグールはここにいる隊員達にやられていき、少しだけ近くに残っていたB級グールなどの上級グールも即座に譲原に倒されてしまった。

 

 大河内はお前にもう逃げ場はない言うように、司令型のグールに激しく攻撃を浴びせていった。


グオオオ!!


 追い詰められたグールは一気に光弾を周囲にばら蒔き、大爆発を起こすと、大河内とは逆方向に飛んだ。

 逃亡する気だろう。


バチン!


 だが、見えない壁にぶつかり、狼型グールが走りを阻まれる。


「ここまで来て、逃がすと思うか?」


 大河内は、何発もの魔術を放つと同時にあたりにマーキング型の魔術も設置していた。

 大型の設置魔方陣だ。

 魔方陣はポイントを結んで広範囲の障壁を展開していた。

 この魔方陣で出来た障壁の中から敵を出さない、そういう機能をもった魔術を大河内はこの戦闘の場において戦いながら展開していた。


 大河内のA級戦力たる所以は、大魔術が使えることではなく、このように同時多発地的に魔術を展開する技術にあった。

 敵への攻撃、自身のバリア、さらに敵を閉じ込める結界の魔術をも同時に繰り出していた。

 そしてその発動を予備動作もほとんどなく済ませ、敵には何が起こっているかも簡単には悟らせない。


 そしてこの特殊な魔方陣障壁には大河内の攻撃を誘導、さらに障壁自身を少しずつ収束する役割、機能も持たせていた。


「オレの街をさんざん荒らしやがって! これで終わりだ。#追尾核光弾__ホーミングニュークリアバレット__#!!」


 一発の光の玉が大河内の手から放たれた。

 狼型も身を捻ってかわすが、その光弾はアーチを描いて狼型を追う。

 そして、狼型が魔方陣の壁にぶつかりながら、攻撃をかわし続ける。

 だが、魔方陣障壁の大きさがドンドン小さくなっていて、狼型はとうとう身動きがとれなくなった。


ガアアアアアアアアアアア!!!


 空中に固定されたような状態で激しく咆哮をあげる狼型グールに大河内の魔術が炸裂した。

 とてつもない威力で一発で狼型のグールはバラバラに吹き飛んだ。


「やった……」


 オレはこれで終わりかなのかと安堵の声を漏らした。


「やったね、佐々木くん」


 また、いつの間にか譲原がオレの横に立っていた。


(なんで、この人はオレのところに来るの?)


「よし。現状を報告しろ!」


 周囲を見渡してから、大河内は防衛隊員に戦況の報告を命じた。


『はっ、はい! 敵撃破総数は、およそ30000! 距離は測定不能! ですが! 都市内部及び防壁周辺、各地のグールは攻撃の停止! す、すでに逃走を始めています!!』


 防衛隊員の報告も途中からは涙声だ。


『ざ、残存敵勢力は、確認できません! の、残りのグールは、索敵できない程度の少数です!! やりました!!』


「……よし、では新ツクバ都市、全人員に向けて通信をを開け!」


『は、はい!!』




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 非難シェルターでは、都市の市民達が眠れず不安を抱えたままの時間を過ごしていた。外から聞こえてくる戦闘音で子供達も激しく泣き叫び、さらに苛ついた大人達の中には揉め事を起こす者もいた。

 

 だが、先ほどから戦闘音が聞こえなくなり、市民達も精神的な疲れから口を開く者が段々と減っていた。シェルターの中は静寂に包まれ始めていた。


ジジッ!


 そんな中、通信装置の拡声装置に反応があり、何事かと皆が顔をあげる。


『聞こえるか、市長の大河内だ』


 ざわざわと市民達が声を出し始めた。


『新ツクバ都市の市民に伝える。先ほど、敵勢力を殲滅した』


「え……?」


 市民の一人が聞こえる訳もない市長に向かって聞き返す。


『繰り返すぞ。我々は敵勢力を殲滅。 グールは思ったより多かったが、 私たちの勝利だ!』


「おお……!」


『そこにいない全市民にも伝えろ! 今回の都市防衛戦争はグール30000体を殲滅して、私たち新ツクバ都市が勝利したと!!』


「オオオオオ!!!」


 市民達の喜びの叫びが響き渡った。

 空に浮かぶ3つの月が喜びに震える都市を照らし出していた。

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