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グールムーンワールド  作者: 神坂セイ
20/28

第20話 新任務

 オレが所属する菅原班は6名構成だ。通常は部隊班は3~5名構成程度だそうだが、オレが特別枠で加入して6名とやや多めの人員となっている。

 そして、多めとは言え、6名という人数で相手に出来るグールの数は限られている。

 この前のようにグールの大群が現れたらひとたまりもない。


 今回の新任務では、突然大勢のグールに襲われる可能性もあるということで、本営から増援が送られることとなった。


 オレたちは防壁の外で、その人物と合流した。


「譲原さんですか……」


 オレはやや不満げに声を出した。


「ですかってのはどういことかな?佐々木くん」


 譲原が少しムッとしている。


「譲原くんが来てくれたなら、もう安心だ」


 菅原はかなり頼りにしている様子だ。


「譲原さんはそんなにスゴいんですか?」


 オレは率直に疑問を口にした。


「バッ! 本人を前に何を言ってる! 譲原くんは、A級隊員で、この都市で最強と言われているんだぞ!」


 菅原が焦った様子でオレに言う。

 たまに思うが、菅原はけっこうお茶目なところがある。


(A級?ってことは、セイヤさんよりも上なんだ、この人……、本当かな?)


「佐々木くん、疑ってはいけないよ」


 譲原が意味の分からないポーズを決めている。


「最強って、言われてもね……」


 オレは信じない。というより信じたくない。

 けっこう普段は間の抜けた印象が強い譲原がこの前共に命を懸けて戦ったセイヤよりも強いという、その事実が少しいやだったのだ。


「佐々木! やめろ! 譲原さんは私たち剣術士の憧れだぞ!  失礼なことを言うな! ボケ!!」


 ここでなんとアオイが割り込んできた。

 オレのことを激しく罵ってきた。


「オー、お嬢さん、ありがとう。君も剣術士か、宜しくね」


「えっ、そんなぁ……、ありがとうだなんて……、こちらこそ宜しくお願いします」


(誰だ? あれ??)


 アオイが赤い顔でモジモジして譲原とやり取りをしている。


 10分後。


「では、出発する」


「「了解」」


 オレたちは今日は都市の南東側を回ることに なっている。

 実は激闘があった前回が南西側なので、このペースで毎日続ければ一週間ほどでこの任務は終了する計算だ。

 だがこの警ら任務は何も菅原班だけが担っている訳ではなく、他の場所も多数の隊員が巡回している。

 点滅型グールの潜伏は脅威のため、都市としてもかなりの人員を割いているそうだ。


「100年経っても残るものもあるんだな……」


 オレは警ら任務の巡回移動中、過去の遺物に現代の姿をいくつか見て取ることができた。そして、やはりここは100年後の未来なんだという事実を噛み締めていた。

 過去の遺物というのはオリンピックのマークだ。

皆に100年前には世界規模のスポーツの祭典があると話したが、反応が薄かった。彼らはもうグールの居ない世界がうまく想像できないのだと思った。少しみんなとの距離を感じる。


「チバ、索敵結果は?」


「異常なしです」


 本日何回目かの質問と報告が繰り返された。

 もう太陽はだいぶ西に傾き始めていた。


(やっぱり、前回はまぐれだったのかな……なにも感じない)


 オレは何となくみんなを付き合わせてしまっている感覚に陥り、不要に申し訳なく思う。


「班長! 索敵に反応ありました、グール30体ほどです、距離350!」


「無視してもいいが……譲原くんは?」


「狩りましょう!」


「了解」


 菅原が苦笑して答えた。


「では、譲原くんに任せる」


「了解です! さあ、行くよ! 佐々木くん!」


「えっ? なんで?」


「この前、一緒にグール狩りをする約束をしただろ?」


(そんな約束してない!)


「佐々木、一緒に行ってくれ」


 菅原から指示が出される。班長命令とあれば無視することはできない。


「りょ、了解です」


 オレはいやいやだが、グールの方に向かい走り出した。


ドン!


(ゆ、譲原さん??)


 物凄いスピードで譲原が敵の方へ行ってしまった。信じられない速度だ。オレも慌てて追いかけるがまるで追い付けなくて置いていかれてしまった。


 オレがグールの群れの元にたどり着くと、譲原が信じない動きでグールを斬り倒していた。


(おお! 凄い! もう、半分もしかいないな。)


 オレも一応新しい銃の感覚を掴むため、手近なグールを銃撃した。


 その時。背筋がぞくりと悪寒を感じた。


(こ、これは……!)


 点滅型を見つけた時と同じ反応だ。

 敵の気配を感じる。


「菅原班長、今、反応を感じました。点滅型がいる感じがします」


 オレはすかさず、通信装置のインカムで菅原に報告を入れた。


『なに!? どのあたりか分かるか!』


『これは……、たぶん菅原班長たち、今みんながいるあたりです!』


『な!?』


ドン!


 衝撃音に驚いて振り返り、譲原を見た。

 何か技を出して、すでにグールを全滅させたようだ。

 というか、この短時間でグールを30体、倒したのだ。

 おそらく数十秒だ。1分と掛かっていない。


「いいね、佐々木くん。君はやっぱりオレをワクワクさせてくれるよ」


(え?)


「先に行くよ、点滅型群体が起きると、通信装置が制限される。 報告通りだ」


「え、あれ!? 本当だ!通信が……」


ビュオ!


 譲原が突風を巻き起こして駆けた。先ほどよりもさらに早い。あれなら10秒ちょっとの時間でみんなのところへ着くだろう。


「ちょっ、オレも……!」


 オレはまた慌てて譲原を追いかけた。

 そんなに離れてはいない、すぐにみんなのところへたどり着けるだろう。


ドン!


 その時。オレの横、少し離れたところへグールが着地した。


「あれは……!? D級グールか!」


 先日の苦戦が思い出される。

 だが、あの時よりもオレの装備は向上している。今ならそこまで苦戦はしないはずだ。


「はああ……!」


 オレは銃に魔素を込めた。


 今回オレが渡された銃は、前回のものと同じく銃倉魔素ストレージ式だ。ただ、銃倉ストレージに弾丸として貯蔵出来る魔素の量は20~25倍と大容量であり、出力できる光弾の威力も3~7倍になるらしい。

 そして、この銃本体にも魔素をストレージ出来る機能があり、その魔素を使い、光弾の威力を高めたり補助的な機能を発動も出来る。

 オレは銃倉と銃本体に二重の魔素を込めた青白い弾丸をD級に向けて連発した。


ドドドン!!!


「あれ?」


 D級は倒れ、もう動かなくなった。


「え? 倒したのか? これ、そんなにスゴい武器なんだ……」


 オレは銃をまじまじと見つめ、装備の偉大さを感じていた。


ズン、ズズン!


 また、オレの近くに着地の音が響いた。

 見ると、D級グールが何体も現れていた。


「だけど! これなら勝てるな!」


 オレはグールに銃を向け、攻撃を続けた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「#帝級衝撃風嵐散弾剣__テラインパクトストームショット__#!」


ドドドォォォーン!!


 譲原が放った技がグールの大群へ直撃した。

 オレはD級グールを倒して、みんなが交戦している場所に辿り着いたところだった。


「さ、さすがです。これでほぼ殲滅です。今の一発で100体以上倒してます。譲原さん、化け物ですね」


 チバが報告をする。


「そんなに誉めるなよ」


(たぶん誉めているだけなわけではない)


「素敵ですぅ、譲原さん!」


 アオイは赤い顔をして譲原を見ている。


(だから、誰だよ?)


 その後、残った少ないグールを殲滅したが、新しくグールの群れが襲って来ることはなかった。


「今日はここまでですかね」


「ああ、任務終了だ」


 譲原が言うと、菅原が今日の仕事の終わりを宣言した。


(なんか、前回と比べるとグールの数が少ないような……もっと出て来てもいいはずだけどな)


 オレは何となく胸騒ぎを感じながら、オレたちは都市に帰還した。

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