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グールムーンワールド  作者: 神坂セイ
2/28

第2話 接触

ドォーン!!


 突如爆発音が響き渡り、ゾンビたちが吹き飛んだ。

 黒軍服の男の一人が爆弾か何かを投げつけたようだ。


「あっ、そういうのもあるんだ」


 オレはまるで思考が追いつかない。


(いったい何が起こってるんだ??)


 オレはゾンビや軍服の人たちを改めてじっくりと観察した。


「あの軍人たちは3人か……」


 ゾンビと戦ってる人は3人で、後ろで倒れている子たちも合わせると最低でも5人以上はいるようだ。


 大声でなにか指示を出している男がいる。

 さっき爆弾を投げたヤツだ。たぶんこの人がリーダーだろう。黒髪短髪でスポーツマンっぽい。

 ゾンビの群れで果敢に槍を振るっている男。こちらはややぽっちゃりだ。金髪を振り乱して戦っている。

 リーダーの後ろで杖を振るっている男。ヒョロイ感じだが、果敢に杖を振り、戦っている。火の玉を出す魔法使いの様な感じだ。こちらはなんと青髪だ。


 ここにいる軍人さんたちは赤、青、金髪とカラフルだ。


(やっぱり、コスプレなのかな? いや、でも実際ゾンビは本物だよな……、爆発とかもしてるし……)


 程なくしてゾンビは全滅できそうだということが戦いを見ていて分かった。

 オレはこの戦闘が落ち着いたらリーダーの人に相談してみようかと考えた。何か分かるかも知れない。

 そう考えていた時。


 リーダーの男と目が合った。


「おい! お前はなんだ!? さっきの光と音はお前の仕業か!?」


 思いっきり敵意剥き出しの言葉が大声でオレに掛けられた。


「えっ! いや!違います!! ただの通りすがりと言うか……居合わせただけと言うか……」


 急に怒鳴りつけられ、オレは思わずしどろもどろに答えてしまう。


「ユウダイ! チバ! ここを頼む!」


 リーダーがそう叫ぶとこちらに向かって走って来た。


「うわっ! なんで!? なに!?」


 思わず窓から後ずさってしまう。


「え!? え? 逃げたほうがいいのか? ちゃんと説明すれば分かってくれるか?」


 オレはどうすればいいか分からず混乱してしまう。

 そうこうしてると、窓からガチャンと音がした。


「え?」


 それはリーダーの男が外から飛び込み、窓枠をガラス片ごと踏みつけた音だった。


「ここは、3階だったはずだけど……」


 リーダーの男は素早く部屋の中に着地すると、銃をオレに向けた。


「動くな」


 迫力がスゴい。

 これはコスプレとか、サバゲーとかではない。そう感じた。


「はいっ! すいません!」


 素直に手を上げ従うと男は少し怪訝な顔をしたが、オレの後ろの方へ視線を向けるとさらに威圧感を増した。


(じゅ、銃を持ってる! そ、それにさっきの女の子たちだ! オレが何かしたと思われてる!)


「お前がやったのか?」


 もはや気迫は殺気とも言える圧力だ。答え方を間違うと即座に撃たれる予感がした。


「……い、いいえ、オ、オレはさっき目が覚めたらここにいただけで! な、何もしてません!」


 オレは必死に冷静に努めようとするが、声が上擦ってしまう。


ガチャ! ガチャン!


「班長! 下は殲滅しました」


 さらに下にいた2人が窓から飛び込んで来た。


「こいつは誰です……? あ、ユウナ!アオイ!」


 槍使いの金髪のほうがリーダーに尋ねた。


「まだわからん。……チバ!」


 リーダーが視線と警戒をオレから離さずに答えた。


「はい」


 チバと呼ばれた杖をもった青髪の男が答えた。


「ユウナとアオイの安否確認をしろ。ユウダイは周辺を警戒」


「「了解!」」


 リーダーがよく訓練されている様子で2人に指示を出すと、杖持ちの男が女の子たちへ駆け寄り、二人に杖を向けた。

 槍使いの男は何やら小さな機械らしきものを取り出し操作を始めた。


「こっちを向け」


 オレはユウダイ、チバと呼ばれた男たちの行動を目で追っているとリーダーの男に咎められた。


「お前は誰だ? どこから来た? 」


(こ、怖すぎる!)


「オ、オレは佐々木セイと言います! 自宅は横浜です!」


「はぁ?」


 リーダーが再度怪訝な表情を浮かべた。


「ヨコハマ……? どこだそれは? 何を言ってる?」


「え……?」


 リーダーが小さく唸り声を上げた。

 どうやら何かが噛み合ってない。それだけはオレにもわかった。


「班長! ユウナ、アオイ両名とも無事です! もう、意識も回復しました!」


「分かった。そのまま治療を続けてくれ」


「了解です!」


 杖持ちに指示を出し直すとリーダーは思案顔でオレに声を掛けた。


「ササキ、といったな。お前はそんなに軽装でどうやってここまで来たんだ?」


 オレはスウェットパンツにTシャツという服装だ。

 ポケットにスマホと財布はあるが、他に特に持ち物はない。あと、腕時計もしている。耐水、対衝撃のやつだ。


「いや! ただコンビニに向かうだけのつもりだったんです! 歩いてる途中で何かがスゴく光って、気を失って!気が付くとここにいただけです!」


「班長」


 後ろから女性の声がした。

 オレはつい振り替えると、さっきの女の子が二人とも立ち上がっていた。


(うわっ、やっぱり美人だな!)


 オレはまた場違いなことを考えてしまう。


 黒髪ロングの娘は優しそうな顔立ちをしていて、細いのに豊満なスタイルをしている。柔らかい表情と仕草に穏やかな印象を受ける。

 もうひとりの娘もスラッとした長身で、ホットパンツからは長い脚が延びている。黒い軍服でもモデルのように着こなしている。こちらは、何となく気が強そうな印象だ。


「ユウナ、アオイ、目が覚めたか。無事で何よりだ。早速だがこいつが何なのか確認したい。知っていることはあるか?」


 黒髪の娘がオレを見ながら話し始める。


「……彼が何者なのかは分かりません。ただ、私とアオイは先ほど班長と分かれて、光の発生源と思われるこの部屋の調査に来ました」


 黒髪の娘が報告を始めた。


(声もかわいいな)


「ああ、あの光につられてグールが集まって来たみたいだな」


「ええ、部屋に入ると中央に光が浮かんでおり、それが急にさらに激しく発光、轟音を立てました」


 リーダーがこちらへの威圧を忘れずにユウナと呼ばれた女の子の報告を聞いている。

 チバ、ユウダイという男たちもこちらの話を聞いているようだ。


「そしてその光の中からこの男性が突然現れました。私たちもその光を浴びたと思ったらそのまま気を失い、今に至りました」


「……」


 リーダーは悩んでいるようだ。

 まあ、判断できる材料は少ないと思う。何も分からないのと変わらない。


「アオイは?」


 アオイと声を掛けられた赤髪ボブの娘も答える


「ユウナと同じ、その人は突然何もないとこから出て来たよ」


(この子は敬語を使わないタイプかな? 見た目は何となくギャルっぽいし)


 女の子二人が何となく助け船を出してくれたように感じ、これで大丈夫かと少し安堵する。


「どういうことだ? ……意味が分からん……」


 オレはこれからどうなるのかとドキドキしてリーダーの言葉を待った。


「班長! 敵影確認!」


 突然ユウダイという槍持ちが叫んだ。


「ちっ、位置と数は?」


 リーダーはユウダイに確認を取る。


(えっ、またゾンビが出たのかな)


「約30の群れが3方から来ています、合計約100! 距離はおおよそ380です!」


「100か……」


(100? 100体ってことか!? 早く逃げないとヤバいんじゃないか?)


 リーダーのこちらへの威圧はかなり弱くなっていた。


「殲滅するぞ」


(……は? 全部倒すってこと?)


「班長! E、D級も混ざっているようですが」


「D級なら問題ないだろう、準備を開始するぞ!」


「「了解!!」」


(この人たちなら100体くらいは問題ないのか? あれ、でもオレはどうすれば……)


 訳の分からないまま、サバイバルに巻き込まれる。そう思い、オレはただただ強い不安を感じていた。

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