表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グールムーンワールド  作者: 神坂セイ
17/28

第17話 B級グール

「はぁ、はぁ、はあ」


 激闘を終え、オレは何とか息を整えていた。


「セイ、大丈夫か?」


(全然大丈夫じゃないです!)


 本音はもっと休みたいが、オレたちは菅原班と山崎班が激戦を繰り広げているたろう崖地に急がないといけない。

 オレは身体中痛いし、もうギリギリだ。

 100体はグールを倒したセイヤは、まだまだ余裕といった風の表情だ。


「大、大、大丈夫!」


 何かの映画の主題歌みたいな返事になってしまった。


「そうか。それでは、悪いがオレは先に行くよ」


「えっ!?」


ドン!


 セイヤがとんでもないスピードで駆けていった。


「す、すご……」


 置いて行かれたオレも気を取り直して、なるべく急いで崖地へ向かった。みんなの戦闘音がオレのいる場所まで響いている。


(ユウナ、みんな、無事で居てくれ!)


 ふと、前方の朽ちた建物の脇に動く影が見えた。


「あれは……グールだ!」


 もう数百メートルほど先ではみんなが戦っているはずなのに、何故かここにもグールがいた。


「F級とE級だな……10体ちょっとか?」


(仕方ない。これは放っておくわけには行かないな)


 オレは1人でこの数体を倒してから皆のところへ行こうと決め、なるべく高い建物に登り、グールを銃撃した。

 すると、オレの銃撃の音に反応したのかそこかしこの建物の陰からグールの群れが出てきた。


「これは!? こんなにいたのか! まさか回り込まれていたのか!」


(くそ! 疲労で集中が途切れていた! グールが居るのが分からなかったみたいだ!)


 オレはこの群れが崖を登って山崎班や菅原班の後ろ側にまで回り込んだんだと予測した。

 セイヤは猛スピードで駆け抜けたため、敵に気付かなかったのだろう。


「あまり大きいやつはいないがここで殲滅しないと……!  オレ1人でいけるか……?」


 グールの数は30~40体ほどだ。

 だがオレは迷う暇などなくこちらへ向かってくる銃撃を始めた。


『佐々木さん! 良かった! 繋がった!』


 急に通信装置からチバの声が聞こえた。


「チバくん!? 無事か!?」


『何とか……! でもみんな満身創痍です。今、セイヤが来てくれてなんとかこちらは持ち直しました! 聞きましたよ! D級を何体も倒したんですよね!?』


「ああ! でもそれより、現在そちらの数百メートル後方でグールの群れと交戦中だ! 3、40体だがそちらに向かっていたようなんだ!」


『な! 後ろにも回り込まれていたんですね……! あ! こちらはセイヤが来てくれたので、そちらへ増援を向かわせるそうです!』


「分かった、早く来てくれ! 頼む!」


 オレはそう言って通信を一旦切ると迎撃に集中した。

 もうオレのいる建物の前にまでグールの何体かはたどり着いてしまっている。


「くそっ! 思ったより多いな!」


 これはどうやら50体以上いそうだ。

 早く増援が来てくれないとオレはここで詰んでしまう。

 至るところから近付くグールに向けて必死に銃を向ける。


ドォン!


「これは!?」


 少し離れたところでグールが吹き飛ぶ姿が見えた。

 グールはもうオレのいる屋上にまで来ている。


『佐々木さん、ユウナです。増援に来ました!』


(うおお! ここで天使登場か!)


『佐々木さん、高野です。わたしも増援に来てますよ!』


ピカッ!


 雷光のようなものが光り、グールが何体か焼け焦げたのが見えた。


(高野さんは確か、金髪のギャルみたいな人だな! 雷使いか!?)


 2人の攻撃でドンドン減って行くグールにオレの気持ちも明るくなる。

 オレも銃をさらに撃ち続けると程なくしてこの場からグールはいなくなった。

 何とか全滅させられたようだ。


「ユウナ! 高野さん!」


「佐々木さん!」


 オレたちは合流し、状況を確認した。

 ユウナも高野もボロボロだ。


「佐々木さん、血だらけじゃないですか……」


「はは……、まだまだだよね。でも見た目はお互い様だろう」


「佐々木さん、よく点滅型の存在に気づいてくれました。おかげで私たちの中に死人は出ていません。ですが、今はすぐにみんなの元に戻るべきだと思います」


 高野がオレたちに早く戻ろうと提案した。

 再会を喜ぶところを邪魔して申し訳ないという顔だ。

 金髪ギャルはもっとハッキリものを言ってもいいんだけど。

 偏見はいけない。


「そうですね。高野さん、すいません。すぐに行きましょう」


 オレたち3人はまだ戦闘音が響く方へ顔を向けた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「これは……?」


 死地を越えて、オレはみんなが戦闘を続けている崖地にまで戻ってきた。

 すでに崖の上にもグールが何体もいて、皆が必死に戦っている。


 オレの目を引いたのがセイヤと山崎が相手にしているグールだ。

 C級よりさらに大きい。

 体長はたぶん6、7メートルはある。

 腕は2本だが、それが地面に着くほど長い。体の大きさの割にかなり敏捷な動きを見せていた。そして時折口からは光の玉のようなものを吐き出し、それをセイヤが避けると地面にぶつかり爆発を起こした。

 そんな怪物がなんと3体もいた。


「佐々木さん。あれは、B級グールです」


 ユウナが言った。


「あれが相手では私たちでは足手まといです。私たちは周囲の下級グールの殲滅をします!」


 やや悔しそうにユウナが叫んだ。


「#火炎風嵐球__フレイムストームボール__#!」


「#上級雷電散弾__メガサンダーショット__#!」


 ユウナに続いて高野も杖を振るって大きな魔術を放った。

 オレも慌てて銃を連射する。


「佐々木! 戻ったか! お手柄だったな! かなり苦労したみたいだな!」


「ありがとうごさいます!」


 菅原がオレを労ってくれる。

 そう言う菅原ももう血だらけだ。

 菅原だけでなく、アオイ、ユウダイ、チバ、それに山崎班の鈴子や南もかなりケガをしているようだ。

 だが、まだまだグールの群れを前にしては弱音を吐くわけにはいかない。


 崖地の上はそこまで数はいないが、崖下にはまだ100体はグールが残っていた。下にはD級に、C級もまだいる。

 崖上のグールは槍使いのユウダイや、剣使いである南が対応していた。


 崖下のグール達もすぐに登って来るだろう。


 オレは最後のデバイス型弾丸をはめると、崖を登るD級に向けて発射した。そのまま銃撃の連射を続け、D級の一体を倒した。


 菅原はC級に向けて銃撃をしていた。

 オレの銃とは威力が違う。ドンドンダメージを与え、大型のC級グールを倒した。


 皆と協力してグールを減らしていった。

 何とかなりそうだ。もう勝利は目前だ。


ドン!


 オレのすぐそばに人が飛んできた。

 山崎だ。


「班長!!」


 鈴子が悲鳴をあげる。

 セイヤの方を見ると、1人でB級2体と戦っていた。1体は倒したようだが、山崎が敵の攻撃をモロに受けたようだ。


「マズイ! 援護しましょう!」


「ああ、もうあいつらを倒せばこの場は終わりだ!」


 オレの提案に菅原も同意する。オレたちは2人でB級を銃撃した。

 その攻撃でひるんだB級1体をセイヤが吹き飛ばした。


(あと1体だ!)


 セイヤがもう1体のグールを圧倒している。

 山崎は鈴子が診ている。死んだりはしていないようだ。


 オレたちもとうとう崖下のグールをほとんど殲滅できた。


「#上級衝撃剣__メガインパクト__#!!」


 セイヤの大技が決まり、とうとう最後のB級グールはバラバラに吹き飛んだ。


「やった!」

 

 オレは思わず歓声を上げた。


 さすがのセイヤも肩で息をして、苦しそうだ。

 その時、セイヤがいる場所にふっと影が落ちた。


「!?」


 セイヤが慌てて飛び退くとそこに上空からB級グールが降ってきた。

 着地と同時にセイヤを殴り飛ばし、同時に口から衝撃波をぶつけた。

 一瞬のことでセイヤも直撃を受けてしまう。


「ああっ!!」


 グールがこちらを振り返る。

 気のせいか、怪物が嗤っているように見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ