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メッセージ  作者: 幸森丈二
第四章
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竜次の憂慮

 ワンオンのステ-ジの後、久し振りの大きなス-パ-に出かけて気持ちの高ぶりがおさまらない沙紀は、家に戻る間チャイルドシ-トではしゃぎ続けていた。

 ラビちゃんとの握手やハグ。そしてその後で竜次が買わされたキャラクタ-グッズとキャラクタ-絵入りのお菓子の話題を、何度も何度も自転車を漕ぐ竜次に話した。

 その沙紀の膨らんだ気持ちを萎ませない様に、竜次は事故現場を通らない遠回りの道を選んだ。


 家に着くと買ってきた食材を冷蔵庫に収めた。まだ少し早いと思ったが、扉を開けたついでに缶ビ-ルを出してグラスに注いだ。

 沙紀はリビングでキャラクタ-グッズを手に取り、一人で遊んでいた。

 竜次はビ-ルを飲み、換気扇の下で煙草を吸いながらその様子をぼんやりと眺めていた。

「ワンオンに行ったの。ラビちゃんと握手したんだよ」

 沙紀は独り言を言いながら、キャラクタ-グッズを手にして満足している。

「パパに買ってもらった。これは牛乳入れるカップ。・・・・・・これはね、お絵かきするノ-ト。・・・これは、ほらっ可愛いでしょ。色んな物をね、入れる箱。・・・ほらっ、こうやって・・・色鉛筆とか・・・こうやって・・・消しゴムとか・・・あっ、輪ゴムも入れるの」

 竜次は煙草をもみ消すと沙紀に問いかけた。

「誰かと話してるみたいだね」

 沙紀は「お姉ちゃん」と応えた。

「お姉ちゃん?」

 沙紀の独り言はまだ続く。

「ラビちゃんと握手したんだ。こうやって・・・そうだ、今度お姉ちゃんも行かない?・・・ワンオンってス-パ-・・・一杯たくさん色んなものがあるんだよ・・・このお菓子もワンオンで買ったの・・・ね、今度一緒に行こうよ」

 竜次は次第に心配になって来た。独り言にしては何か不自然だ。会話の内容と身振り手振りが、誰かと話しているそのままの様子に思えた。

「今日はおうちに泊まる?・・・ね、パパに頼んであげるから、今日はおうちに泊まっていいよ」

 竜次は沙紀に声をかけた。

「沙紀、お姉ちゃんがそこにいるの?」

「うん」

「何処にいるの?」

「ここにいるじゃん」沙紀は自分の目の前を指さした。

 換気扇の下からは死角となっていた沙紀の前方を、体を起こして覗いた竜次だったが、当然のごとくそこには[お姉ちゃん]は見えなかった。

 竜次は沙紀と[お姉ちゃん]を制するために、大きな声で沙紀に呼びかけた。

「沙紀ぃ、ご飯の前にお風呂入る?」

 沙紀も声を張り上げて応えた。

「まだいい。もっとお姉ちゃんと遊ぶから」

 竜次は不安で一杯になりながら、どうする事も出来ずに沙紀を見守った。

 沙紀と透明人間との会話はそれから数分続いていたが「じゃあまたね」と言う沙紀の言葉を最後に、お姉ちゃんはいなくなったようだ。

 胸騒ぎを感じてはいたが[普通]に戻った沙紀を見て(大丈夫だ、気のせいだ)と心に言い聞かせた。



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