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59 贄


 先ほどまでピクリとも動かなかった人形の姿をしたそれは、異常な速さで接近してきた


「うぉっ!」

 それを寸前でかわす


 ドン! ピシッ!


「うっ‥‥くっ!」

 かわした瞬間に訪れる衝撃と、せっかく回復してきた、軽鎧に付与していた『耐壁』にヒビが入る音が聞こえた。


「な、何だ!」


「せやぁぁあ!」

 ベルフが俺に再び突進しようとしたソレに向かい槍を突き刺し、すぐさま引く

「ハヤト! そいつは魔法を使ったぞ!」


 魔法? なら人‥‥でも『探知』に全く反応が無い、倒れた体をすぐさま起こし、支給品の槍を構える、頬に少し熱い物を感じ、右手甲で拭うと赤い物が手甲に付いた。


「血?」


 そいつの手は指が3本しかなく、指先は針のように鋭く尖っている

 

 触れた覚えが無いのに皮膚が切れている‥‥あれはまともに受けられないな‥‥


 フッ

 一瞬奴の顔が大きくなった


 違う! 

 目の前まで接近され、回避行動をしつつ突き出してくる手に向けて槍で応戦する、一瞬で懐まで入り込まれるのをギリギリでかわし、奴の振るう手を槍で突き、爪による攻撃を防ぐ


 しかし、奴はその場で回転し逆の手を振り回した


 パリン ガキン!!


 「っっっぅ‥‥」

 頭が大きく揺さぶられ声すら出せなかった、何とか見えた物は俺の兜が割れ、ぼんやりとした視界の先に飛んで行く姿。

 まだ視界が回復してはいないが、迫っているであろう奴に対し『火』の魔法を付与した人工魔石を『収納』から取り出し投げつけると、魔石が割れ勢いよく炎が噴き出した


【ギャアアアアアアア】


 思わず耳を塞ぎたくなるような、おぞましい声を出し、のた打ち回る


「やったか!」

 ベルフが討伐を確信したその時、奴の体を燃やしていた炎はキラキラとした光と共に魔力に戻った


「あの人形、魔法を相殺しやがった‥‥」


 奴は自身に『火』魔法を掛け、自身が受けていた『火』の魔法を相殺した


「続きぃ!」

 わずかに回復した魔力を送り込んだ槍で、すぐさま奴の顔に槍を突き刺す、確かな手ごたえを感じた後、槍を捻り更に奥深く捻り込む

 

 決まっ‥‥


「グッ‥‥‥グハァ!!」

 腹部に強烈な衝撃を受け吹き飛ばされ、軽鎧の『耐壁』が完全に破られる


 今のは‥‥蹴りを食らったのか?


「コイツめぇ!!!」

「やああああ!」

 べフルとオットが俺を庇うため、奴の後ろから槍攻撃を試みるが


 ブワッ!

 強力な突風が二人を襲う、オットはその風で吹き飛ばされたが、ベルフは何とか持ちこたえた


「ベルフ挟むぞ!」


「おう!」


 ベルフと二人で奴の前後を挟撃する、俺が前から魔法の使用を妨害するため休む間もなく払い、突き、槍を振るう


 ベルフが後ろから足と腕を集中して狙い、そして魔法で援護するが、奴は後ろを全く見ない状態で、その全ての魔法をを相殺していた。


 俺が急所らしき場所を探りながら突き刺す、顔・喉・胸、しかし幾ら当てても奴はダメージを受けていない。


「おいハヤト! 急所は狙っているんだろうな!」


「ああ! うっ‥‥グッ クソッ! さっきからずっと当ててるよ!」

 なのに全く効いていない、それに何故か俺だけに攻撃を集中してくる


 キン! キン! ガン!

 鋭い爪で執拗なまでに攻撃をやめない奴の爪に向かって、少しだけ魔力を槍に纏わせ攻撃を返す、こうでもしないと奴の腕の振りに押し負けてしまう、しかしそのせいで枯渇した自身の魔力が全く回復しない


 むしろ‥‥


 うっ‥‥、こんな時に眩暈が‥‥


 キン! キン! ガキン!!!


 あっ‥‥

 

 奴の爪が振り上げられ、俺の持っていた槍を打ち上げる

 

 やられる‥‥


「させるかぁぁぁぁぁあ!」

 ベルフが一気に突進し奴に向かって突くが‥‥

 

 ブワッ!!!!!

 

 槍を跳ね上げられ、俺の攻撃が遅れたせいで魔法を唱える時間を与えてしまう

「うわっっ!」

 地面ごと吹き飛ばす程の風を当てられたベルフは、そのまま後方に吹き飛ぶ


 槍を跳ね上げられたせいでバランスを崩しながら、何とか一歩後ろに下がったが、奴の右手は既に振り下ろされる瞬間だった。


「‥‥っ!」


 パリン! ブゥゥゥゥン


「!」

 奴の右手に当たった魔石は効果を発揮し、そのまま奴の右手を地面に縫い付ける

 

 これは!? 『重力』、オットがやったのか!

 

 視界の端に映ったオットは、何かを投げた後の体制になっていた、オットが投げたのは間違いなく、中央深部に入る前に渡した『重力』を付与した人工魔石


 ナァァァァイス! オットォォォォ!


 完全にバランスを崩し、まるで処刑を待つような恰好になった奴に向かい『収納』から俺の愛刀、雷雲・改を取り出し、奴の首に向け野球のスイングのように思いっきり振るう


 これで決める!

 刀に魔力を通し奴の首を刎ねるため、残りの魔力を全てこの刀に‥‥


 ピィン‥‥

 

 先ほどまで全く反応が無かった『探知』に反応を確認した、ここからの距離は50メートル、吹き飛ばされたベルフに向かい走って来るソルセリーの後ろに、大きくそして鋭利な氷の塊が飛んできていた。


「クソがぁぁぁぁ!!!!!」


 ありったけの魔力を『火』魔法に注ぎ、ソルセリーの方目掛け打ち放った。


「えっ! きゃぁ!」

 

 ベルフの元に走り寄っていたソルセリーが、俺が放った正面から来る魔法に驚きその場に尻もちをつく、魔法はそのままソルセリーを通り過ぎ後方から来る魔法に直撃、そのまま爆発を起こした。


「一体‥‥何を‥‥‥‥マシェルモビア!」


「マシェルモビアだと? まさかこんな所まで‥‥くっ」

 ソルセリーの言葉に反応し後方を確認したベルフは、フラフラとする頭を振るい後方を睨みつける


 マシェルモビアの兵の数は四人、装備はすでにボロボロで所々欠けている、


「あいつらも深部を進んできたってのかよ!」


「しつこすぎますよちょっと!」


 キンキン! ヒュン!


 『重力』魔法の効力が切れた人形もどきが、鋭い爪がついた腕を振り回す、それを寸前でかわし‥‥

 ドン!


「ぐぁっ!」

 奴の足が腹部を蹴り上げる、ソルセリーに向けて放たれた魔法を消し飛ばす為、わずかに残った魔力を使い放った魔法により、既に残っていた魔力も尽きかけ、視界が歪んでもはや立つこともままならない


 ヒュン!

「うっ!」

 

 ヒュン! キン!

 刀の雷雲・改が真っ二つに割れる


「くそっ! なまくらが」

 魔力が全く流れないせいで、普通の刀以下の強度に成り下がっている雷雲、『収納』から代わりの槍を出す。


 俺が人形相手にギリギリの戦いをしている時、ベルフ達3人はここまで追って来たマシェルモビアと戦わなくてはならなくなった。


「ソルセリー後ろに下がれ! あいつらはお前が目的だぞ!」

「そうです下がってて」

 ベルフとオットが庇おうとするが


「私も戦うわ! 多少は腕に覚えがあるんだから」


 人形の後ろでは3人がマシェルモビアと対峙している

 ヒュン! 人形が腕を振るう、縦に横に、そして斜めに。

 

 ソルセリー達が気になるが、俺もそれどころじゃない


 

 


「お前たちがこんな所まで来たせいで、俺達は隊の仲間のほとんどを失ったんだ!」

 マシェルモビアの兵士は叫びながらソルセリーに切りかかる、それをベルフが槍で弾きつつ残りの3人の動きをしっかりととらえている

 

 だったら俺達に付いてこなければいいだろ


「破壊の一族諸共、全員皆殺しにしてやる!」

 4人いるマシェルモビアの兵の内、3人が一斉にベルフに襲い掛かる


「させない!」

 ソルセリーがその内の一人に向かって槍を突き出す‥‥が


 チッ、と何かを弾く音がし、ソルセリーは顔から血を流し倒れた


 ‥‥‥‥‥‥‥‥あっ

 

 『収納』から盾を取り出し、人形の攻撃を受け流す、一撃一撃が重く、そのたびに『耐壁』を失った盾から金属が剥がれ落ちる、もう俺にはこの人形を倒すすべがなく、本来なら絶望をしている所だろうが‥‥‥もうそんな事はどうでも良くなった


 地面に倒れたソルセリーの姿を見て、目の前が黒く染まっていくような気がした‥‥






「よし! 破壊の一族の目をやったぞ! あとは男3人だ」

 ソルセリーを切った兵士がベルフにそのまま切りかかる


 ガン!


 その一撃を何とかベルフは刀ではじき返す


「後ろのやばそうな魔物はどうするんだ?」

「さっきからアイツだけを狙っているみたいだ、あの魔物に任せておけば後ろにいる奴もやられるだろ、その前にこいつら2人を殺してから一斉に魔物に掛かればいい!」


 

 ドゴォォォォォォン!!!!!!!


「何だ!!!」

 マシェルモビアの兵士達は自分達の前方から来る熱風にたじろぐ



 ドゴォォォォォォン!!!!!!!


【ギャァァァァァァア!】

 燃えながら人形は後ろに倒れる


「‥‥‥‥ハヤト、お前‥‥その姿は」

 ベルフが驚きで目を見開き


「「「‥‥‥‥‥‥‥‥」」」

 他の者は声も出せない


「マタ、オ前達ハ俺ノ仲間ヲ奪ウノカ?」



「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 先ほどから一度も戦闘に加わっていなかったマシェルモビアの兵士が、悲鳴を上げながら後ろに倒れ尻もちをつく。


「おい‥‥嘘だろ‥‥」


「シャレになって無いよ‥‥ははは‥‥」


「う、あ、ああ、ぐ、グースだぁぁぁぁぁ!!!!」

 マシェルモビアの兵士の一人がすぐさま逃げ出した


「‥‥‥‥」

 逃げる敵兵に向けて土弾を放つ


 ヒュン! パシャン

 水を弾くような音を立てて敵兵の右足が吹き飛んだ

「ああああああ!!」

 足が無くなったせいで勢いよく転び、そのままもう既に無くなった足を押さえるような仕草をする


 さきほど魔法で焼いた筈の人形がフワリと起き上がる




「さっきの魔物がまだ死んでないぞ、あれと戦っている内に逃げるんだ、おい! 新兵の女、立て!」

 一番最初に叫んで尻もちをついて倒れた兵士に呼びかけるが、震えているだけで立つ気配がない


「そいつはほっとけ! もうグースになることが出来ないって嘘をついて俺達をはめたんだ!」


「くっ!」

 敵兵は新兵と言った兵士を捨て、右足を吹き飛ばされた兵士の肩を掴み逃げようとする



 起き上がった人形に対してランスを取り出し、紫色に輝く武器を構える‥‥


 ・・・・フッ! と相手の姿が大きく見えるほどの速さで突っ込んでくる


 右手、左手と鋭利な指を振り回すが、それを後ろに下がりながらランスで全て弾き、右肩、そして左肩と突き、両腕を切り離した。それでもなお人形は接近をやめない。


 接近しながらもいくつもの魔法を放ってくる、同じくこちらも魔法を放ちランスで撃ち落としす、後ろの方でマシェルモビアの兵士が逃げようとしていたが、人形に放ったいくつかの魔法の軌道を変え、マシェルの兵士に向けて放つ


「うわっ!!!」


「こっちに打ってきやがった」


 逃ガサナイ‥‥‥‥‥‥‥‥


 人形に肉薄し胴に一撃を食らわせ、人形の胴を貫く、貫いた場所に向け一度に数十発の火弾を放った


 ドオォォォォォン!!!


 モウ一度‥‥


 ドオォォォォォン!!!


 人形は黒焦げになりながら何とか踏みとどまり、俺に向けて攻撃をする意思を見せるが、俺を見た瞬間、ピタリとその動きを止めた、そして最初に見た時の姿のようにその場に立ち尽くした。


「終ワリニシテヤル‥‥‥‥」

 ランスで狙いをつけ、俺の全てを吐き出す


「‥‥喰ラエ」


 ランスの先から赤黒く光る球体が無数飛び出し、人形の体を飲み込むとその場にはもう人形の姿は無かった。

 人形を食い尽くした球体は、そのまま逃げようとしているマシェルモビアの兵士に向け飛んで行く


「う、うわぁー! 来たー!!」


「ひぃぃぃー!!」


「こないでくれぇぇぇ!」

 

 片足を負傷した兵士と、それを支えていた兵士がとっさにその場に倒れ込み、赤黒い球体をかわすが、 球体はくるりと方向を変え倒れ込んだ二人に襲い掛かった。


「うぁぁぁぁ!」

 仲間に肩を貸していた兵士は、足を負傷した兵士を置いて一人で逃げ出した


「お、置いて行かないでく━━」

 球体が負傷した兵士を通過した後、そこには体の一部さえ残っていなかった


 ニガサナイニガサナイニガサナイニガサナイ

 アト2人 ゼッタイニ逃ガサナイ

 

 その思いが球体を変化させる、全ての球体から黒い腕が伸びてくる

 

 同じ方向に逃げる二人のマシェルモビアの兵士に向かい、球体は速度を上げ生えた両腕で何かを掴むような仕草をしながらその内の一人を捉えた


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 その迫りくる腕の生えた球体に恐怖を覚えながら、敵兵は喰われていった。


 アト1人‥‥‥‥


 3人目を捉えようとした時、急に脱力感を味わい、目に写っていた黒い靄のような物が晴れ、目の前がクリアになってくる。

「うっ‥‥‥‥おっとと‥‥」

 足から急に力が抜け膝を付く、そして訪れる急な眩暈


 ‥‥‥‥またあの姿になったのか


 人形を倒した時、俺の手は黒い色ををした鎧のような物に覆われていた。だが視線を落とし自身の手を見ると、そこには普通の手と、いつも装備している手甲があった。

「一人、逃がしたか‥‥」


 全く動かなくなった体を忌々しく思いつつ、逃げている敵兵の後ろ姿を眺めていた、あの赤黒い球体は既に消えてしまったようだった。


「もう少しだったのに‥‥‥‥」


 ドン!


「え?」


 敵兵が派手にジャンプしたのだと一瞬勘違いしてしまったが、そうではなかった、地中から大きな口を開けワームが飛び出して来た。


「うわぁ~、ここにも出るのか‥‥‥‥オットは出ないって言ってたのに」


 敵兵を丸呑みにしたワームは、そのまま大きな音を出し地面に落ち、再び潜っていった。そのままどっかに行って欲しかったのだけど、向こうはそうはいかないみたいだった。


 少しずつ少しずつコチラに向かってくる、立っている時よりも今の地面に座り込んでいる体制の方がワームが近づいているのが分かりやすい、盛り上がった地面が少しずつ近づいてくる、目指している場所はどう考えても俺だろう、一直線に向かってくる。


 どうにかしたいが、もう体も動かず、『探知』をする魔力さえも残っていない俺にはもうどうにもできない‥‥ベルフにはまだ余力があるだろうが、ワームを倒すことの出来る技は持ってない、精々気を引くぐらいだろう


 せめて俺を食ったらそれで満足してくれればいいのだけど


 トスン   トスン


 何かが横から投げ入れられている


 トスン 


 投げ入れられたそれは、コロコロと転がりその動きを止める


 アレは‥‥‥、ムカデの胴の欠片


 深部移動中、破損した防具の補修のためムカデの外皮を使い修復していた、破損した部分に合うように形を削ったりして整えていたのだが、どうしても半端な形の物が出る、ただそれを捨てるのももったいないのでオットに取って置いてもらっていたのだった。


 オットは地面に振動を与えないよう、上半身だけで欠片を投げている


「「「‥‥‥‥‥‥‥‥」」」


 トスン    トスン


 もしこれで引っかかったとしても、一時しのぎにしかならないだろう着地した時の衝撃だって、巻き込まれたらバカにならない、ただ、それでも‥‥‥‥


 ワームが音のする場所の真下に来た時


 トスン


 勢いよくその巨体が地面から飛び出した


 引っかかった! 次は落ちてくる衝撃を!


 身を低くし、ワームの着地に備えるが‥‥‥‥


 

  ガシッ!!  ズシャア!!!


 勢いよく飛び出そうとしたワームは、ジャンプの途中、何かに上から押さえつけられ、地面に落ちた。


「うっ! う 、な、何だ!」

 ワームを上から押さえつけていたのは、見覚えがある巨大な鳥だった


「ヒュケイ‥‥‥‥」


 アリの大群に襲われる前に見たあの時の鳥、凶鳥と呼ばれるヒュケイだった


あの時遠くから見た時でも大きいと感じたが、実際近くで見ると大きいと言うより巨大と言った方が当てはまる、ワームを押さえつけているその足一本を見ても、俺の体を4人分束ねた太さの足を持っていた。

 足はまるで鱗でもついているのかと思わせるような見た目で、爪は見るだけでも鋭利に尖っているのが分かる、あれで捕まえられただけでも大怪我を負うこととなるだろう、実際今その足で掴まれているワームの体は爪が食い込み、食い込んだところからは緑色の体液がにじみ出ている。


 俺の知っているヒュケイとは全く違う個体、通常のヒュケイよりも大きめのサイズである俺の召喚獣ヤタ、それよりも遥かに巨大な体を持っていた。


 ヒュケイはワームを両足で押さえつけながらじっと俺の方を見ていた、俺も目を反らすことが出来ない、ここで目を反らしたら襲い掛かってこられるかもしれない。


 ‥‥‥‥‥‥‥‥


 ‥‥‥ん?


 その視線に少し変だと感じた時、ヒュケイの足元にいるワームが暴れ出した。体をうねらせ何とかそこから逃げようとするが‥‥‥‥


 ザクッ ザクッ


 ヒュケイが鋭いクチバシで突き、ワームの体に穴を開ける、そこからデロリと出てくるワームの緑色の中身をくちばしですくい、顔を上げてそのまま飲み込んだ。 

 それでもなおワームは激しく動くが、何度かそれをしている内、完全にに動きが止まった。


 ヒュケイはワームが好物なのか暫くその場で食べていたが、途中ピタリと動きを止める、ワームの体にくちばしを深く入れ、中から赤い物を引きずり出し


 ペイッ!


 と、くちばしで投げ捨てる、投げ捨てられた物は先ほどワームが丸呑みにした、マシェルモビアの兵士だった、何とか軽鎧は少しだけ形が残っていたが、その他は全く原型が無かった、肉が鎧を着ているように見える


 うわぁ~、食われてたらああなるのか‥‥‥‥食われなくて良かったぁ


 ヒュケイはマシェルモビアの兵士を出した後、俺の顔をもう一度見て飛び去った。足にはしっかりとワームが掴まれており、残りは巣で食べるのだろう



「なんにせよ‥‥‥‥助かった‥‥‥‥」


 

 

 ・・・・・


 ・・・・・




「ハヤト‥‥‥‥だよな?」

 ベルフが恐る恐る聞いてくる


「ワームにでも見えるの?」

 

「ハヤトにしか見えないな」


「当たり前だろ? そんな事よりソルセリーは」


「目をやられた‥‥‥が、命に別状はない」


「そうか‥‥」

 ふらつく足でソルセリーに近づき顔を見てみる、目の部分が一直線で切られており、出血がひどい

「ソルセリー大丈夫か?」


「何にも‥‥‥‥何にも見えないの、目が痛いの」

 視界が奪われたことで恐怖と不安に駆られている様子


「ハヤト回復薬はもうない‥‥ソルセリーには悪いがこのままハルツールに向かうしかないだろう」


「そう‥‥だね、まぁ、でも一応頼んでみるか」


「頼むってなにをだ?」


 俺はマシェルモビアの兵士で、最初に腰を抜かして倒れた者の所に近寄る

「で? 君は何でまたここにいるの?」


「ひ、ひぃぃぃぃ!!」

 俺が話しかけるとその女兵士は悲鳴をあげ、また漏らしてしまった


 その女性兵士は、大陸深部に入る前に解放したドジっ子、トルリ・シルベだった



 

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