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52 任務の失敗


 ・・・・・・・・・


 あ! 威圧はもう無いんだった


 威圧を全開にして一気に片を付けようと仮面を取ったものの、頼りにしていた威圧はもう既に無く、ただ仮面を取ったという事実だけが残った。


 通常の生活で困っていたけど、どことな~く頼りにしていた面があった。だからこそ一人で救援に向かえと言われても「はいそうですか」で終わらせることができたのだけども‥‥今物凄くピンチです。


 あぁ女神様、何故俺から威圧を取ったのですか?

 失ってから気づく大切さ

 

 ただし、目の前にいるこいつらは‥‥‥‥

 目の前にいるマシェルモビアの兵に、魔法を叩き込みながら考える。


 俺としては召喚者としての戦い方をしている、高い魔力保有量を誇る召喚者特有の戦い方、魔法を主体とし敵を近づけないようにする、まさに教科書通りに動いているだけ、にも関わらず敵兵は間合いを詰めるわけでもなく俺と同じく魔法を放ち出した、何となく雪合戦をしてるよう


 相手はたった一人の召喚者、召喚獣に気を付けつつ、放ってくる魔法を相殺し一気に接近して討ち取る、たったこれだけでいいだけなのに‥‥


 今俺がランスで貫いたこの敵兵は、近づいてきたものの『幻惑』を付与した土の壁を俺だと勘違いして攻撃をしてくる、わざと敵の魔法を自身の近くで爆発させ煙幕代わりにしていたのがよかったのか。


 戦い馴れていないというか‥‥もしかしたら指揮をする者がいないのかもしれない、それともその能力がないのか。


 目の前には1人減り、残り5人のマシェルモビアの兵、俺の後方には6人の敵兵がいる、後ろの6人にはベルフとソルセリーそして召喚獣のノームを3体付けている、暫くは持つだろうと考えているが、更に増援が来る恐れがあるのでそう長くは無理だろう。

 なので目の前の敵兵を早く片付けないといけない、最悪ここで俺も終わりかもしれないけど‥‥最後まで希望は捨てない、まずは目の前にいる5人を片付ける


 召喚獣が出ていないということは相手には召喚者がいない、もし居たら厄介だった、これで少しは救いになる。

 次に『探知』持ち、爆煙で俺の居場所が分かりづらいにも関わらず、さっきからピンポイントで魔法を当ててくる奴が一人いる、もしここから逃げることが出来たとしてもこいつを生かしておくと後々厄介になる、魔法が来る方向と『探知』魔法で相手の場所は分かる、最初にこいつを始末してから他の4人にあたる、そのためには‥‥


 (ノーム2号、閃光弾用意、炸裂場所を調整しろ)

 ベルフ・ラーベと共に、後ろの敵と交戦中のノームに命令する

 

 ラジャーと聞こえた気がした


 魔法を放ちながら『収納』から人工魔石を取り出し、そこに『重力』を付与し左手で持つ、相手に投げつけ動きを止める、もしもの為の保険だ。


 左腕に装着している『重力』付きのキューブの場所に、盾を『収納』から取り出す、取り出された盾はキューブに付与された魔法と引かれ合い空中に留まる。


 (ノーム、準備は?)


 オッケーと聞こえた気がした


 自分の放つ魔法に魔法をぶつけ煙幕変わりにしつつ敵兵の右手に回り込んだ、敵兵もそれにつられ俺が移動した方に向かって魔法を放ってくる。


 (いくぞ!3・2・1‥‥)


 右手でランスを構え、盾を目の前にかざす


 (撃て!)


 ノーム2号のロケットランチャーから発射された閃光弾は俺と敵兵の中間地点で炸裂した、『身体強化』で敵兵に向かって飛び出し一気に距離を詰める


「ぐあっ! 目が」

「うっ!!」


 いきなり至近距離から閃光弾の炸裂で目をやられるマシェルモビアの兵、まだ目も開けられないほどの真っ白な光に包まれているが、俺は盾を構えたまま『探知』持ちの敵兵に向かい接近


 ガン!!


 と、盾に衝撃が走る、閃光弾が放たれる前に打たれた魔法だろうが、構わず突っ込みランスで相手の胴を貫く、魔力で出来たその先端が敵兵の鎧の隙間からその体に入り込み、吸い込まれるように入って行く、貫いたまま『収納』にランスを仕舞うと貫かれた相手は声も出せずに倒れる


 一人目


 刀の雷雲を取り出し、そのまま左にいた敵兵の首に向けて切りつける

「がはッ!」


 二人目


 左手で刀の柄頭を押さえたまま、今切った二人の間を潜り抜け、3人目の顔に向けて刀を突き刺す


 これで三人、残りは一人!


「このおっ!」

 ギリギリで閃光弾が炸裂する時に目を閉じダメージが少なかったのか、最後の一人は『火』魔法を一発放ってきた、それを盾で防ぎ肉薄する

「クッ!!」

 

 更に相手は刀を振り上げ、コチラに向かって切りかかろうとするが、そこで盾に付与してある『重力』魔法を反転、刀を振り上げた場所に向かって盾を弾き飛ばす


 ガン!


 刀を完全に振り上げ切る前に、盾によって弾かれたため相手はバランスを崩す


 ヒュッ!


 がら空きになった胴に刀が通り抜ける


「ぶはぁあ!!」

 血を吐きながら後ろに倒れる敵兵に向かい『雷』魔法で追撃する、ビリりと感電したように体が震え動かなくなった。


 

 ‥‥せっかく用意した『重力』を付与した魔石が無駄になってしまった、知らないうちに俺が強くなってしまったんだと思う、ずっと一人でやってきたんだ強くなって当たり前だろう


「あっちはどうなってる?」


 俺の後方では炎上している中型の竜翼機を盾にしてベルフが魔法を放っている、それを俺の召喚獣が援護している状態だ、彼の足元には敵兵が3人横たわっていた。接近されたところを斬ったんだろう

 ベルフが放つ魔法は途中で軌道を変え、スピードを上げ敵兵のいる方に打ち込まれている


 凄いなあれどうやってるんだろ? 後で聞いてみるか


 頭を低くしつつベルフ達の元に合流する

「すまない遅れた」


「うおっ!」

 後ろから急に声を掛けられたベルフは声を上げて驚く

「そっちはもう終わったのか?」


「何とか片付いた」

 魔法を放物線上に放ち援護を始める


「ちょっと早すぎやしないか?‥‥でも相手はどうやら戦い馴れてない新兵みたいだからな、俺もこの数の差でもなんとか出来る位だ」


 新兵か‥‥俺の方もそうだったのかな、俺が強くなったと思ってたけど‥‥違ったか。

「後は3人か、突っ込まないかベルフ? 一人につき、敵兵一人倒せば大丈夫だろう?」


 ベルフはチラリとソルセリーを見て

「ソルセリーにもやらせるのか?‥‥駄目だ彼女は最優先で守らなければならない! それに彼女は戦う能力は殆ど無いんだぞ!」


 手で制し

「俺の召喚獣を使う、これで3体3になる」


「召喚‥‥そうか召喚者だったな、分かった! 言う通りにしよう」


 上空を見上げると両軍の竜翼機の戦いは終盤を迎えている、見上げた今も一機の竜翼機が炎を上げ落ちていく。

 マシェルモビアにしかない『潜伏・隠蔽』はその特性上、人体以外への付与は難しい、もし物に付与しようとした場合、魔石を要した大型の装置が必要になってくる、よってマシェルモビアの竜翼機は乗せることが出来ず、得意の姿を消してからの一撃をすることが不可能になる


 対するハルツールにある『耐壁』は物にも付与できる、この差は大きく、竜翼機同士の戦いでは圧倒的に我が軍の方が有利になる、だが、離陸前にやられてしまった機体が数多く地上に残されている為、数が少なく、最終的にどちらが残るのかは分からない


「上ももうすぐ終わりそうだ、今のうちにこっちも片をつけよう」


 うむ、とベルフが頷く


「敵に召喚者はいないな? 『探知』持ちはいるか分かるか?」

 『探知』持ちだけは早めに倒しておきたい


「いや、いないだろう、さっきから牽制の魔法しか打って来てないからな、直接狙って来ようとするものはいなかった」


「わかった、ならベルフは左にいる奴を俺は真ん中、召喚獣には右をやらせる」

 ベルフの体に触れ『耐壁』を掛け、鎧にも『耐壁』を付与する


「付与魔法‥‥何で貴方は軍人をやってるんだ?」


「どこも雇ってくれないから」

 と言って笑って見せる


「‥‥ふふっ、そうか、助かるよ感謝する」

 付与した時は驚いた顔をしていたベルフだが、雇ってくれないの言葉で脱力したように笑いだす


「俺が敵の目の前で爆発を起こす、俺が最初に突っ込んだその直後にベルフも突っ込んでくれ」


「わかった!」


 ランスを取り出し雷雲と交換する


「ん?」

 持ち手の所しかない棒を見たベルフは不思議そうな顔をする


 敵兵の目の前で爆発させるために二つ種類の魔法を使う、水弾と火弾を同時に各10発ずつ


 さすが召喚者とベルフは小声で称賛する、水弾を放物線上に放り込み


「行くぞ!!」

 竜翼機の陰から飛び出した、そして少し遅れて火弾を直線状に、水弾が落ちてきたところに当たる様に放つ


 ノーム戻れ!

 『身体強化』!


 炎上している竜翼機の後ろから姿を現した俺に、敵兵3人の注意が注がれ一気に魔法が襲い掛かる、丁度その時、水弾に追いついた火弾が接触爆発を起こし敵兵の目の前に爆煙が広がる


 それを合図にしてベルフが竜翼機の後ろから飛び出して来た


 バン! バン! ガン!

 俺の構えている盾に次々と魔法が当たり

 パリン! パリン!


 と、盾の後ろに『耐壁』を付与した魔石が2つ砕け散る


 盾に付与されている『耐壁』は盾本体に付与されている物を含めて、あと2回


 来い! デュラハン!


 黄色の魔法陣から勢いよく飛び出し、敵兵に向かい突進する、手には紫色に輝くランス、盾で身を隠すように体の前に出し迫る、しかし‥‥鎧姿ではなく、この前買ってあげた服を着ていた。


 驚いて二度見してしまったが、それは後、今は!

 地を蹴り、盾の目の前に構えたまま突っ込む


 ボッ!

 と相手が『風』魔法で爆煙を吹き飛ばした時には、既にランスが光り輝き、驚きの表情を浮かべる敵兵の胸に突き刺さっていた。


 ・・・・・・・・・


 ・・・・・・・



「上は‥何とか勝ったか、残ったのは1機だけか」

 マシェルモビアとの空中戦に勝利した、我が国の1機の竜翼機は煙を吹きながら空中を旋回している


 戦闘用の竜翼機には一人しか乗れない、彼らの目的は中型の竜翼機の護衛、その護衛目的が失われた今彼らの出来ることはもうない、無理やりソルセリーを乗せる事も出来るだろうが、もしも戦闘がまた会った場合支障が出るうえに、あの被弾した機体にソルセリーを乗せる事は出来ない、そもそもソルセリーを乗せるために着陸しても、離陸できるかどうか怪しい。

 

 任務失敗したことによる任務を終了した彼らに、俺は手を上げる


 チカチカと光による信号が竜翼機から送られてくる


 ゴメン、その信号よく分からない、多分こっちの任務の無事を祈るとかだろうけど、今度勉強しときます、一応手は振っておく


 ‥‥それにしても


 召喚されたデュラ子を見る、この前買ってあげた服を身に着けていた、しかし何でその姿なのか?


「‥‥デュラ子、お前は何で鎧じゃなくて服なんだ?」

 低い声で問いかける


「は、はい、この前主に買っていただいた服をまだお見せ出来ていなかったので、そ、その‥‥感想などを‥‥」

 元々顔色は良くないデュラ子だが、更に顔を青くし俺と目を合わせようとしない、歯切れも悪い


 睨むようにデュラ子を見つめ

「もういい、後で話があるからな、下がれ」


「わ わかりました‥‥」

 うな垂れて魔法陣の中に戻って行った


「変わった召喚獣だな‥‥」

 少し離れた場所でベルフとソルセリーが待っていた、この世界の住人に対してホラーな存在のデュラ子の姿を見た二人は、見た瞬間、ササっと俺の後ろに隠れている


「ええ、まぁ」

 少し憤りを感じたまま、鳩のポッポを召喚し背中に魔石を乗せ、俺を中心に段々と外に円を描くように『探知』を行う。


「作戦は失敗したわけだが、この後はやはり自力で帰還するのか?」


「失敗した時用にもう一つ作戦がありますから、竜翼機が帰還したことで次の作戦が実行されるでしょう、指定された場所に一個中隊が向かっているでしょうから、今度はそこに向かいます」


「そうか‥‥わかった」


 ベルフ達はかなり疲れている様だ、俺もそうだけど、怪我をした竜翼機の乗組員にも休ませたい、多分追撃はあれだけではないと思い、『探知』を行っているけれど‥‥いや、もしかしたら今から実行しようとしている作戦も既に漏れているんじゃ‥‥、そうなると待ち伏せかな? 先回りして待っているのなら途中で休んでも同じか‥‥


 少し考えていると『探知』に反応があった、反応は1つ、ポッポの目を通してその反応があった場所を見る、そこには


「ど、ドジっ子だ‥‥」

 思わず声にだしてしまった


「はぁ?」

 ドスの効いたソルセリーの声がする


「竜翼機の陰に隠れて、敵兵が一人来る、敵兵の遺体も片づけて」


「わかった、近づいたところを始末するんだな?」


「違う、そいつを捕虜にして情報を引き出す、ベルフは拘束具とか持ってます?」


「いや、俺は持っていな━━」

「私が持ってるわ」

 なぜだか拘束具を持っていたソルセリーに渡され、竜翼機の陰に隠れる



 数分後



「はぁ はぁ はぁ 」

 そいつは現れた


「せ、戦闘跡‥‥もう終わってる? みんなはどこに行ったの、誰か~誰かいませんか~!」

 そいつは俺達を後ろから追ってきた部隊の一人、後ろから追ってきた奴らには色々と嫌がらせの罠を仕掛けている


「こ‥‥ここだぁ~」

 弱った様な声を出して、拘束具を持ちベルフと一緒に陰から飛び出す用意をする


「声が、誰かいるんですね!?、もう大丈夫です私『癒し』持ちですから!」


 そいつはタッタッタッと走って、竜翼機の後ろにいる俺達に近づいてくる


 まさかハマるとは思って作った訳ではないけれども、それを本当にハマるとは‥‥


 頭からつま先まで、全身泥だらけになり近づいてきた女のマシェルモビアの兵に向かって、俺とベルフは飛び掛かった。



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