37 首無し
「ということで首相、コンセの村に行ってもいいですか?」
『構わん、気を付けて行くんじゃぞ』
「了解です」
ガチャリと受話器を置く
「許可が下りたので、代わりの部隊が来たら引継ぎをして、コンセの村に移動します」
「あぁ、ありがとうございます!」
そう感謝してマークという男の人は頭を下げた。
コンセの村は、クジュの村と同じでかなり貧しく、診療所を開いてくれるような『癒し』持ちの人も来てくれないそうだ。
しかも、一番強力な魔物が生まれるグラースオルグの真南に位置する村で、薬草の採取は『探知』魔法が使えない者はまず不可能とされている、魔法が使えたとしても、村からほんの少し離れた場所からしか採取は不可能である。
村のほとんどの人は、野菜や果物などを細々と栽培して生計を立てていた。
『探知』魔法が使え、薬草の採取をしている人によると、魔物の数が最近尋常ではないほど多く、最近では採取に行くことも難しいのだと、しかも、少し魔物の様子がおかしいと報告されていた、様子がおかしいとはどういうことなのか? 聞いても説明が出来ないそうだ。
かなり切羽詰まった状況らしく、早めに行ってあげた方がよさそうだ。
また休暇が遠のく‥‥オヤスの喫茶店もまた今度だな、一年も行ってないから俺専用のメニューが無くなっていたらどうしよう。
◇◆
クジュの村に駐留のため正規部隊が到着したのが、コンセ村のマークが来てから5日後の事、しかし、西側は2部隊が普通なのに来たのは1部隊だけ、
部隊の安全も考えて2部隊にするのが当然だと思うんだけど‥‥本当に人手が足りないのか? 予算が無いのか? こればっかりは下っ端の俺には分からない、偉い人達は何を考えているのだろうか‥‥‥‥
交代の部隊と引継ぎを交わし、いざ村を出ようとすると子供たちに全力で引き留められた、一年も一緒にいると、グースの威圧は全くと言っていいほど感じることが出来なくなったらしく、学校が終わった後や、学校が無い時などはいつも俺が作った砦で遊んでいた、この一年で遊具や装飾品などかなりの作品が砦では収まり切れず、村中に溢れていた。
「行かないで!」
「もっとここにいてよ」
「どうしても行かないといけないの?」
泣きながら訴える子供たちに、それを見ていた親達や俺自身もホロリときてしまった。
「グースのあんちゃん、向こう行ってもしっかりとやるんだぞ、向こうに代わりの部隊が来たらまた戻って来いよ、クジュに交代に来たのは1部隊しかないからな、まだ1部隊分空はある」
村の大人たちも、俺が別の村に移動することに対し惜しむ声ばかりだった、特にクリオのお父さんと、その家族の人達とは特に仲が良かった気がする。
「その時はお願いしますよ、皆さんどうか元気で」
「あんちゃんもな、それと、これ持ってけ」
四角い箱に入れられた物を渡された
「これは?」
「野草を塩で漬けてある、他の奴らと一緒に集めてたんだ、これでしばらくは食う物には困らないだろ?」
ニコリと笑うクリオのお父さんと、採取をしていた他の人達
明日からまた甘いパナンばかり食べなきゃダメなのかと、少しうんざりしていたので、この餞別は嬉しい、
とうとう別れの時間となり、お互いに笑ったり泣いたりしながら手を振ってこの村を後にした。
最初にこの村に来た時には考えられない光景だった。
「また来よう、お土産もすぐ無くなるだろうし」
召喚獣のコスモに乗り、移転門へと向かって飛んだ
クジュの村に作った砦だが、取り壊しましょうか? と引継ぎの部隊に言ったら
「是非残してくれ」
と言われたので、そのままにしている。
・・・・・・・
大陸西側、コンセの村に一番近い移転門に到着、そこでまず消費した物資の補給を済ます、クジュの村では当初、まさか一年もいる事にならないだろうと思っていたので、途中で食料が無くなり、首相にお願いし、食料を送ってもらったが、今回も長くなりそうな気がするので、食料は約3か月分、その他の物資も多めに補充した、おかげで『収納』の空きが無くなってしまった。
この移転門に来るのは初めてで、ちょっと離れたところには嬉しい事に召喚の魔法陣もあるので、コンセの村に行くついでに寄って行こうと思う。
そして初めて見る人達もあった。
『ヴァンギエル族』
ブライやニーアが気を付けろと言っていた人達だ。
頭デカいなー
それが最初に思ったこと、デカいとは聞いていたが本当にデカく、全体的に見て背が小さい。
あと目つきがおかしい、何か獲物でも狙うような目つきをし周りを常に見ている、他の人達はこのヴァンギエル族(頭でっかち)を避けるように歩いていた。
人を陥れたりするのが趣味みたいな奴ら、らしい、犯罪もこの頭でっかちがする確率が多いそうだ、全体の7割だとか‥‥、だから他の人は近寄らないんだろう、何かされると思って。
この頭でっかちを見ていて思ったことが、こう‥‥イライラする、俺が魔物を見た時に思う気持ちが、このヴァンギエル族を見てもそう感じる、処分したい‥‥生理的に受け付けないんだろうか?
どっちみち見てても面白い物ではないので先に行こう。
・・・・・・・・
「これ許可証です」
ゴルジア印の許可証を見せる
「その‥‥仮面を取ってもらわないと‥‥本人の確認が」
青い顔でそう言ってくる施設の職員
「俺は取ってもいいんですが、以前漏らした人がいましてね、そちらが取れって言うなら取りますけど、着替えとか用意してますか? 『洗浄』とか持ってます? でもそんな仕事熱心な人は俺好きですよ、職場で漏らしてもいいだなんて‥‥」
そう言って仮面に手を‥‥
「結構です! 結構ですから! 取らないで!」
別に漏らさないとは思うけど、このやり取りが面白くて今回もやってみた、場所は召喚の魔法陣がある施設。
この場所で契約出来る召喚獣は『トクポン』、とてもアホっぽい名前で、最初聞いた時は笑いが出たほど、しかしアホっぽい名前とは裏腹に、その容姿は生理的に受け付けない物だった。
『トクポン』の見た目は、まず人が四つん這いになり、首を取り外し、プラス足が4本長い胴体に付いている‥‥‥‥肌色のゴキブリ、俺はそう感じた。
合計8本の足でカサカサうごくその姿は、どうも好きになれない。
トクポンは、前足だけ手の形をしており、それで何かを掴んだり出来る、運搬などで活躍し、戦闘では掴んだものを投げたり、体当たりなど‥‥そこまで戦闘向きではないが、主に補助的な活躍をする。
魔法陣がある部屋には、そのトクポンの映像が流れていた。
「気持ち悪い」
つい口から出てしまったその言葉に、この施設の係の人が少し「ムッ!」とした顔になる、俺は気持ち悪くても、この世界の人にとってはそうではないのだ、しかも自分が担当する召喚獣だからなおさら
だがそんなこと俺には関係ない、待ってて! 今素敵な姿に改造してあげるから
召喚獣のノームで実証済みだが、条件が合っていれば召喚獣は大体思う通りの姿、能力になる事が判明している、今の所俺以外には出来ないらしいが。
まず改造の条件から、足が8本と、そのうち2本が手の形、これが6本だったらケンタウロスにする所だった。
足が2本余るから無理と、しかも首が無い、でもって荷物を載せることが出来る‥‥。
‥‥荷物は人でもいいか? ノームは体を3体に分ける事が出来たから、胴体を二つに切り離して‥‥首を‥‥あっ!
アレがあったな!
オル・トロスでは雄雌に分けることが出来た、なら、乗せるのは女の姿にしよう、それで、この世界にはないセクシーな軽鎧姿だ。
そう! オッパイアーマーだな、お腹は丸出し、下はミニのスカート風の鎧にして、太ももは丸見えの足はブーツに。
頭はどうしよう? ヴァルキリー風の兜にしようか? 目が見えてると少し生々しい感じがするから目隠しをして‥‥大丈夫か? いや、元々顔が無い召喚獣だから大丈夫だろう‥‥。
フフッ、なんだか楽しくなってきたぁ! それで武器は大剣だな、刀じゃなくて、巨大な剣だ、持ってなかったら後で首相に注文しよう。
そして、もう一方は黒光りする体に、本体と同じ軽鎧、顔には簡単な仮面風の防具で目の所は赤く光ると嬉しいな、大剣で敵を屠り、時には体当たり。
よし! イメージが完全に固まった、完璧だ!
ノームの時もイメージを固めてから契約したから、その通りの姿になった。今回も完全に固まっているからかなりの自信がある。
魔法陣に触れ魔力を流す、黄色に光り反応した。今回ももちろん成功だ、魔法陣に満たされた煙が晴れた時、中にいたのはとても美し━━
「気持ち悪い!」
部屋にいた担当の人の声が響いた、俺と召喚された召喚獣はジロリとその人を睨む
「ヒッ!」
と声を出し怯える担当の人
怯える位なら言わなきゃいいのに、さっきの俺が言った事を根に持っているんだろうか? 仮面を外してやろうと思ったよ。
名前はもう決まっている『デュラハン』だ
契約の言葉を唱えると、光の粒になり魔法陣に消えていった。
さぁ! 別の場所でじっくりと堪能しようか!
人気のない場所でデュラハンを召喚する、魔法陣の中からゆっくりと登場したデュラハン
「主命によりこのデュラハン参上しました」
左手に持たれた首が喋った
「お前も喋るのか?」
「ハッ!」
凄いな! オル・トロスだけかと思ったけど、でも、そうしたら喋れないノームとは一体‥‥
「ちょっとお前を観賞したいんだが、いいか?」
「どうぞ、存分に」
うむ、と頷きじっくりと見させてもらう、最初に思ったがやはり美しい、黒光りするその馬体は注文通り赤い目をしてる、簡単な仮面の隙からその目が光り輝いていた。鎧の方までは細かく指定はしていないが、簡単な鎧ながらもその黒い馬体と相まって、少し重厚な感じに仕上がりそれがまた力強さと美しさを感じる。
「お前もかっこいいぞ!」
顔の所をポンポン叩いてあげると、嬉しそうに「ブヒヒン」と鼻を鳴らしていた、乗っているデュラハン本人も誇らしげだ
あれ? でもこれで馬は二頭になるのかな? 違うか? コスモはギリギリ馬ではないかな? 言ったら怒られるかもな。
そして本体であるデュラハンの方は、背中にこれまた黒光りする大剣を背負っていた。
「大剣も付いてきたか、首相にお願いしなくてもいいな」
胸を強調するようにオッパイアーマーが付いており、その大きく深い谷間‥‥谷間が‥‥凄く‥‥‥‥
「エロい!」
うっかり言葉が出てしまった、俺はいい物はいいと言うタイプである。
その言葉にデュラハンの口元が少し緩む
一応防具は、胸を守る防具と肘まであるガントレット、腰回りにはミニスカート風、足にはブーツのような防具を身に着けていた。
そして左腕に抱えられている首にはヴァルキリー風の兜、注文道りである、しかも目隠しも付いている。
「ねえ、その目隠しちょっと取れない?」
黒光りする金属製の目隠しだったが、それをデュラハンはサンバイザーのように上にあげた、そんな仕組みなのかと感心する、目隠しを取ったデュラハンの顔は、整ったとても美しい顔をしていた。
「キレイな顔してるんだな」
「お褒めに預かり光栄です」
キリリとした顔で口を綻ばせる顔は、なぜか更にエロく見える
そして、お腹の下のミニスカ風の鎧、ミニスカ風の‥‥
他意は無いのだが、何故か俺の首は真横に倒れていた
スカートの間の、隙間の‥‥所から‥‥暗くてちょっと‥‥
『照明!』
スカートの隙間からは黒の布地がしっかりと見えた
「黒だな」
左腕に抱えられたデュラハンの首は、真っ赤にな顔になり、目をつぶり羞恥に耐えているような表情になっていた
「ありがとう、しっかりと見させてもらったよ、もう戻っていいよ」
デュラハンは真っ赤な顔をしたまま目線で一礼し、光の粒になり魔法陣に戻っていった
「全く良いものを召喚出来たな!」
休暇が消えた事が残念だったが、俺の心は晴れ晴れしていた。
さあ! コンセの村に行こうか!




