24 天気
「あの山は何ですかね?」
遠くに見える高い山、山の中腹あたりからここからでも分かるくらい天候が崩れていて、山頂付近ではこの世界では見たことのない荒々しい天気になっていた。
今自分たちがいるのは小高い丘、周りには木が無く見晴らしがいい、ここでカナル隊は少し早めの野営の準備をしていた、今いる場所はいつもながらの快晴、山の方を見るとまるで結界の中に閉じ込められたかのように暗雲が漂い、雷鳴が離れたここまで響いている。
「あれはリモル山と言う、魔力だまりになっている山だ」
「魔力だまり‥‥どっかで聞いたような」
今ここにいるのは俺と隊長、そしてブライの3人他の人達はテントの設置、そして夕食の準備をしていた。俺達3人は周りの警戒中だ。
「あの山は常に魔力で覆われていて、他の生物が寄り付かないようになっている、間違っても行こうと思うなよ?今は入山禁止だからな」
「今は、ということは昔はそうじゃなかったんですね」
「そうだ、300年ほど前に魔力だまりのある山は入山禁止になった、理由として挑戦者があとを絶たなくてな」
「挑戦者ってのは?」
「山頂に轟く高位の雷の魔法が見えるだろう?」
山頂にはまだ明るいというのにクッキリと雷が見える、それがひっきりなしに落ちているのだ
「あれは女神や天使の雷魔法に匹敵するらしくてな、それを自分の雷魔法で相殺できれば、女神と同等の使い手ということになる、そうなればそれなりの名誉が付いて回る」
「今までの成功者は?」
「無い、下山した者は誰一人としていない、だからハヤト行くなよ」
「行きませんよ登山の趣味は無いし、魔法陣があるなら話は別ですけど」
「いや‥‥だから行くなよって今言っただろう? 魔法陣があってもいくな」
「了解しました」
はぁ、と隊長がため息をつく、分かっているのか?という表情をしている、
というか、あれって魔法なのかな?自然現象の雷にしか見えないんだけどね
「おい、ハヤトハヤト」
山頂を見ているとブライが背中を突っついてきた
「なんです?」
「さっきのアレ見せてくれよ」
「あれ、ってのは」
「お前の刀だよ細い奴」
あぁ、なんちゃって日本刀か、
「ハイどうぞ、名前は雷雲ですたった今そう決まりました」
収納からヒョイと出してブライに渡す
「安直だな、山見たからだろう」
「その通りです」
「おおー! これだよこれ、使い方と仕組みはどうなってんだよ」
「普通に魔力を通してください」
ブライが魔力を通すと刃先に薄い紫色の光が通り、その光は切っ先からあふれ出し20センチほど刀が伸びたように見える。
「刃先には魔鉱石を塗り硬化を使って固めて、柄の中に天然の魔石を埋め込んでいるんです、それで刀の刃の根本の間に隙間があるでしょ? あぁ! 魔力は切らないと危ないですよ、ほらココです、ここに人工の魔石が埋め込まれていて、ここを魔力が通ることでこの色を付けているんです、キレイでしょ?」
「‥‥キレイは必要あるのか分かんないけど、試しに切って見てもいいか?」
「いいですよ、あの木何かどうです」
指をさす方向には直径30センチほどの木があった
「いいのか? 結構太いぞ?」
「どうぞどうぞ、気にせず」
「おう! じゃぁ、やらせてもらうぜ!」
ブライは木の横に立ち、刀に魔力を流してから木に向かって袈裟切をした。
「ん? あれ?」
切ったあとブライは刀を顔の近くに寄せ刃を不思議そうに見ている。
ズッ ドスン!
「おわっ!」
少し遅れて切った木が倒れる
「どうしたブライ?」
「いやぁ、切った感覚が無かったから‥‥」
「魔力で切ってますからね、もし切った感覚があったなら多分刃がダメになっているはずですよ」
「これは魔法を流してるのではないのか?」
「いえ、純粋な魔力ですね、元々の鋭利な刃に魔鉱石を塗って、そこへ這うようにして魔力を大量に流すことで、この切れ味が出るんですよ、ただ、天然の魔石を使ってるとは言え、それだけじゃ足りないので使っている本人からもかなりの量を吸い上げるんです、だから魔力が少ない人には使いづらいでしょうね」
最初他の刀で振動剣などを目指していたが、ガタガタと音が鳴るだけの五月蠅い刀になってしまった、で、切れ味を増す為にどうするか、と悩んだ末出来たのがチェーンソーのように魔力を刃のように流す状態にしたのが今の形だ、大量に魔力を消費するので長くは使えないのが難点だが、切っ先から溢れ出た魔力が、まるで刀が伸びたように見えるしその部分でも切れる、攻撃距離が伸びたにも関わらず重さは一緒という、今の自分の鍛冶で作った武器の中では最高傑作だ。
ちなみにこれを剣技の先生に見せたら、とてつもなく欲しそうな顔をしてた。
「ああそういえばー、なんだかちょっと・・・ダルイ気がすんな」
「ハヤト俺にもちょっと使わせてもらっていいか?」
「いいですよ、ただ石とか金属系はダメですよ、どこまで切れるかまだ試してないし、一応はそれ魔物専用ですから」
「分かった」
隊長はブライが切った木の残った部分を狙い刀を横に振るった
ヒュッ!
ブライと違い音がいい、年期、もしくは実力の差だろうか?
刀を振るった隊長はその後ブライと同じように
「?」
な顔をしていた、そのあと切った木の部分を手でつまみ上げる
「あれぇー!?」
隊長にしては素っ頓狂な声をあげた、珍しい
◇
「てことがあったんだよ」
夜になり焚火の近くでは、野営の見張りをするブライとタウロンの姿がそこにあった
「魔力で切るんですか‥‥聞いたこともないですね、刃先に風の魔法でも纏ってたんじゃ?」
「イヤ、魔力だってハヤトは言ってたぜ、風で物を切ったり水で穴を開けたり出来るだろ?魔法自体は元々、魔力を変更?・・・あ、いや、変換か、それで実体化しているんだから魔力自体でも出来るって言ってたぞ」
「‥‥明日私も使わせてもらいたいですねその刀、なんだか光ってる武器を持ってるとは思っていたんですが」
「おう! ビックリするくらい手ごたえが無いからな」
「それにしてもハヤトはこっちに来て7‥‥年ほどでしたか?」
「んー・・そうだな」
「来て早々魔力を扱えたようですが、なぜでしょうね」
「魔力があるってのは早い段階で分かってたらしいぞ、実際に扱えるようになったのは3年目からだと、その時に世話焼いてもらっている人から補助玉貰ったって前に言ってたぞ」
「‥‥ブライは‥‥魔力を感知できるまで何年かかりました?」
「俺は遅かったからな、15歳の時だったか」
「私は10歳の時でした、なぜハヤトは分かったんでしょうね」
「おう、それなハヤトの例えで言うとな、ハヤトの世界には魔力が無いのは知ってるよな?」
「ええ」
「もし、朝起きて知らない女が裸で隣に寝ていたら、今日は何かが違うって気づくだろ?」
「え、えぇ‥‥」
「な! 元々無い物があるから気づいたんだと、俺も一緒にいたニーアも一瞬で納得がいったよ」
「ブライはともかくニーアもですか」
少し呆れ気味に焚火に薪をくべる
「にしてもアイツは不思議だよな、魔法契約も負けなしだし、魔力量もかなり高いぞ、あの刀を一日中使ってたんだからな、体が魔力でできてんじゃないのか?」
タウロンは腕を組み右手で顎をさするようなしぐさをする
「ふむぅ・・・・ハヤトは魔力の深淵を見たのでしょうか、それともすでに足を踏み入れたのか、いずれにせよ深淵もハヤトを見つけたのかもしれませんね」
「 ? ? お前、たまに変わったこと言うよな」




