第1章 7 お話
シャイラの特徴を書くのを思いっきり忘れておりました。なので、書いておきます。
赤い髪 長髪
黒い目
だいたいこんなんですね
「大義であったぞ、我が従僕」
「あんたのためにやったわけじゃないよ」
声がした方向を向くと、立っていたのは数週間前まで慣れしたんだ見た目は9歳の金髪碧眼、白衣を着た少女、ミラがいた。
「二人は?」
「あの二人なら、今はサブと一緒に病院にいる。我輩たちも行くぞ。従僕、貴様に言いたいことがいろいろあるのでな」
「ああ、そうかい。俺もあんたに頼みがあるんでな」
「そうか」
少年と少女は、同時に歩き出した。しばらく歩いていると、不意に少女が少年の近くに歩み寄る。それに気づいた少年が、
「えーい、近づくな!」
「えー、良いではないか!ずっと我慢してたから、そろそろ限界なのだ!」
「知るか!あんたが俺のこと、なんか知らないけど甘やかしすぎて、客に気持ち悪く思われるんだから仕方ないだろ!」
「そんなこと言われても…、仕方ないじゃろ。好きなんだから」
「そんなことを、簡単に言うな。信用が失せるぞ」
「むっ、めんどくさいのぉ」
「ほら、もう着いた。後で話は大体聞くから」
「大体、というところが従僕らしいが。よかろう、お前の連れの大きい方に話したいこともあるしの」
「よく分かんないが、そういうことなら俺はサブさんと久しぶりに話してるよ」
少年が言っていた、看板のある場所の近くには、入り口があり中に入ると開けたスペースになっている。
中にはソファの置いている場所。奥に入ると、先ほどのスペースよりは小さな診察室と呼べる場所。この世界では超貴重と呼べる機械、PCが置いてある。薄暗い部屋を、PCの画面の無機質な光が照らしている。隣にはカーテンに囲まれたベッドがいくつか置いてあり、病人が寝ることができるようになっている。つまり、病院にある設備が整っているのだ。
ここに来るのは、何日ぶりだったか。そこまで変わってないな。
「おおっ!坊主じゃねえか!今までどーこ、ほっつき歩いてたんだ!?」
「そっ、その声は」
野太い声が後ろから聞こえてきたのでその方向を向くと、この病院の常連、というより他に行くところがないんだろう、ずっとソファに座ってミラと一緒に話して1日過ごしているだけのおっさん。名前は知らない。自分でも覚えていないそうだ。
「おっさんじゃん!あんた、全く帰ろうとしないのな!」
「家族も家も分からんから帰ろうにも帰れないんだから、仕方ないだろう!」
「今、一瞬すげぇ悲しくなった…、って、あ、ヤベェ!」
「ようやくか、薬切れるまで待っておったがなかなか時間がかかったの。サブ!もう少し、効果を減らせんのか!?」
サブと呼ばれた男は、奥の部屋からシャイラを連れて出てきた。アフロに色黒、さらにサングラスというなんともおっさんくさい格好だが、それでも客からは人気があり、この人目当てに客も来るほどなのだ。その顔をしかめてミラに、低い声で訴える。
「おいおい!そりゃぁないぜ!?この薬、作るのに相当時間かかったし効力はあんたがちゃんと決めたじゃねえか!3日間!それがこの薬の効力の上限だ!それ、ちゃんと覚えといてくれよ!ったく、コロコロ言うこと変えやがって」
「ん?おい、サブよ。貴様、我輩に今、どのような口をきいた?そのような口をきいて良いのは、従僕であるキング、ただ一人よ!」
「はいー、理不尽ー。まあ、いいがな。お嬢ちゃんは連れてきたぞ」
サブの後ろから出てきたシャイラは、まだよく状況を把握できていないようで訝しげに、うずくまる少年、いやキングに向かって聞く。
「え、えっと何が起きてるんですかね?全然分かんないんですけど。あと、キング…でしたっけ?なんか、うずくまってますけど、大丈夫ですか?」
心配しているようだが、元気そうに手を振って、
「あー、大丈夫。ただ、この姿、あんまし見せたくないだけ」
「よかろう、別に。そちらの方が可愛らしいぞ?」
「うるさい、あんたの意見は聞いてない」
「うっ、そんなことを言わんでたも。事実じゃよ?機嫌なおしてくれんか?そうしないと話が進まんのじゃ。そうじゃ!お茶でもどうじゃ?」
一瞬かぶりを振ろうとしたキングだが、喉が渇いていることに気づき、間の悪さを呪いながら、答える。
「くそっ、頼む」
そう言わせたことに、満足したのにも関わらずミラは、キングにもう一度聞く。
「ほぉ?それが人にものを頼む態度か?我が従僕よ」
「ああー、めんどくせえな!わぁったよ!お願いします!お茶をください!」
「よかろう」
不敵な笑みを浮かべて、ミラが了承する。そして、サブに命じる。
「おい、サブ。お茶淹れて来い!」
「なんで、俺なの!?」
意外な言葉にツッコミを入れつつ、ちゃんと部屋の奥に入って茶を取りに戻る。
このミラからの提案は、少し前にシャイラが来た時点でキングも来ることを感づいたミラは、シャイラにキングについて話すために、サブと打ち合わせておいた、作戦なのだ。
サブは、あらかじめ用意しておいたいわゆる睡眠導入剤を溶かしたものをお茶の中に入れるとそれをキングたちがいる部屋に持って行く。
「あいよ、持ってきたぞ」
「うむ」
「あざーす。てか、サブさん、俺がいない間に随分、ミラにこき使われたみたいだね。いつもなら、もっと拒否するのに」
「いや、ちょっとあってな」
サブから受け取ったお茶を飲みながら聞いてみるが、それとなく受け流されたことに腹を立てつつ、お茶の味には言っておく。
「ん、うまい」
だが、すぐに何か異物が含まれていることに気づく。とりあえずコップを置く。そして、一言。
「嵌められた!今回はあんたらの勝ちだな。分かったよ、俺のこと、シャイラに話すといい」
「ふっふっふ、うまくやったじゃろ?でも、寝るのは、我輩の膝の上にしてもらえんじゃろうか?」
可愛らしく、そうお願いするミラに若干諦めも入った眼差しで少しの間見つめていたが、襲ってくる睡魔に耐え切れず、仕方なく了承する。
「はいはい、分かったよ」
「ふふふふ、素直でよろしい」
顔や体をそのまま羽織っていたマントを利用して、隠していたがミラの膝の上に頭を乗せるとマントをとってみれば、そこには先ほどまでいたはずの少年、キングはおらず銀髪の少女らしき、子供がスウスウと寝息を立てて寝ていた。
「えっ、なんで違う人がいるんですか?」
「んん?そういえばお主には言っておらなかったな。こやつは紛れもなく我が従僕、キングじゃよ」
「はい?」
「そこも話していないのか?さてさて、どこから話せばいいものか。そうじゃのー、こやつの『能力』は聞いておるの?」
「あっ、はい!」
「相当、率直に言うぞ?こやつは、この姿以上に成長せん」
声は低く、顔は真剣に、だがキングを撫でる手は優しく、そういう態度で、こう言った。
土下座数 12