第1章 4 戦闘①
予想より早く終わりました。
そういえば書き方を変えました。
2052年、現在。組織に登録された医者の人数は、約50人。そのうちの30人ほどは、戦闘の訓練を積んだ戦闘医と呼ばれる位置付けになっている。他の医者は医療に徹する。
アルカ・カワードは怒っていた。
なぜ自分がこんな地味な仕事をしなければいけないのだ?俺は政府に『能力』を認められた医者なのだ。果ての村まで行き、なぜか患者に触るだけで菌による病状が回復する、という少年を探してこいだと?舐めているとしか思えない。だが、仕事は仕事だ。少年を見つけることはできた。が、はっきり言って、何の変哲もない普通の少年だ。
なのにも関わらず、自分が姿を現した途端に空気が変わった、気がした。
自己紹介をした後には、その感覚は実感に変わった。
こいつはヤバい。明らかに俺と同等か、それ以上に実戦経験を積んでいる。
その思考を理解するはずもなく、少年は俺に問うてくる。
「お前、その感じ、戦闘医だな?」
「ああ、そうですよ!よく分かりましたね!」
作り笑いで、なんとか取り繕うが、このままこう着状態が続けば、俺の精神が『奴を殺したい!』で覆いつくされてしまう。ならば、
「そろそろ連れ去ってもよろしいですか?」
「それが人にものを頼む態度ですか?」
「じゃあ、始めますか」
「そんなこと言われてもねー」
構えをとり、臨戦態勢になったことを肌で感じさせると、少年は仕方ないという風な顔をして、空気を変えてきた。完全に戦う気だ。…なのに、なぜ構えすらしない!?
「舐めているのですか?」
「いーや?これが俺の構えだ」
デタラメか?油断させたいのか?尚、立ったままの少年の糸を読み取ろうと試みるが、考えても仕方ない。
「行きますよ?」
その言葉を発した瞬間、少年の姿が視界内から消えた。
「はっ?」
何をしたんだ?見えなかった?訓練での成績は常に3位以内を維持してきた。そのおかげで動体視力は大幅に向上したのだ。なのに、見えなかった…だと!?嘘だ!
しかし、今そのことを後悔している余裕はない。どこに行った?前、横、後ろ、上、下、どこにも奴の気配はない。だが、必ずどこかにいるはずだ。あの空気からして逃げるということはありえない。
突然、首の裏に衝撃、後に痛みが伝わる。
「ガッ…」
「はーい、俺の勝ち」
声のする方向は、後ろだった。
「どこ…から?どうや…って?」
問う。すると、帰ってきた返事はあまりにも簡単な理由を、間延びした声で発した。
「いや、一回空に飛んでその後、気配消してちょっと落下するの楽しんでから空捉歩使ってお前の後ろに着地すると共に首の裏、叩いただけですが?」
「はぁ!?空促歩って言ったか!?今!?」
耳を押さえて、うるさいと言わんばかりの顔になる少年だがそれでも答えてくる。
「言ったよ!なんだよ、そんなに珍しいことか?」
「いや、珍しいこと…だと?嘘だ!空促歩は、人間離れした身体能力とセンスが必要なはずだ!そんな類い稀な才能を持ってるやつでさえ、習得するには相当の時間がかかる。それが、小僧のお前が習得していて、しかも珍しくないだぁ!?」
先ほどより大きな声でまくし立てると、さらにうるさいという顔でこちらを睨みつけて答える。
「なぁんだぁと!?俺は16歳だ!てか、あいつ、やっぱり言ってること違った!もう嫌なんだけどー!あいつの言ってることだいたい違うじゃん!もうあいつの話鵜呑みにすんのやめよー」
この小僧、相当マイペースだ。俺の存在を確実に忘れてやがる。だが、今の俺にとってはありがたい。先ほど小僧に首に衝撃を受けたせいで、立っているのがやっとだ。奴が、他のことに気を取られている間に回復する。
だが、このまま逃すわけにも、すごすご帰るわけにもいかない。ならば…、あの薬を使うしかない。
もう少しで、なんとか動くところまで回復しそうだ。その間、ずっと小僧の聞きたくもない話を聞かなくてもいけなかったのは屈辱だが、幸いだった。動けない間に攻撃されてはあの薬を使うことはできなかったのだから。未だ、話し続ける少年に対して呟く。
「ありがとうございました!あなたのくだらない話のおかげで、ようやく回復できました。それでは、終わりにしましょうか」
「はっ!?つ、つまらない…だと!お前、失礼だな!って、ん?何を終わらせるんだ?」
聞いてくる小僧。俺は喋らず、ポケットからある薬を取り出し、口の中に放り込む。
瞬間、体の内部に力が溢れる。これなら…勝てる。
「そろそろ終わらせましょうか!小僧!」
土下座数 7
え…っと書き方、大丈夫ですよね?