ちびっこ勇者遭難する
私達は山頂をめざし再び歩み始め30分が経過。そろそろ山頂に到着してもいいはずなのだが・・・
「まったくもって到着する気配がないんだけど・・・ねぇ、この同じ様な景色見るの何回目?」
「正確に数えてないけど、多分・・・50は超えてる・・・かな?」
そう、私たち一行は見事に遭難したのである。正直もう足がパンパンで歩くのが嫌になってくる。ものすごく帰りたい。可能な事ならこのまま魔王封印なんてせずに引き籠ってたい。そう思うくらいしんどかった。
「いや~…これは参ったねぇ・・・しかもこの木の傷・・・さっき目印用に付けた傷だね、完全に同じところに出ちゃったみたいだよー?」
「そんなぁ-・・・」
最悪だ・・・下手したら山頂に着くどころかこのまま下山することも不可能になるのではないか?そうだとしたら非常にマズイ。疲労と飢えで餓死するというかっこ悪い終り方だけは避けなくてはいけない!と思った。
けど…いや、明らかに不自然すぎる。下山の途中で遭難するというのならまだわかるけど登山の途中で遭難と言うのはおかしい。山は下へ行くほど範囲が広くなり道も増えていくから迷いやすいのは確かだ、だが頂上は狭く一つしかない。なら少し道を間違えちょっと遠回りになったとしても目的地にはつくはずなのだ。だが私達は今『同じ場所を回り続けている』のだ。これは明らかに異常で、確実に自然の理から外れている。
「と言う思考にたどり着いたものの……どうやってどうやってこの無限に続く道から抜け出せばいいのかねぇ…」
そう、理由が分かってもどうやってこの無限の迷宮から脱出するかの方法が分からなければ意味がない。つまり現状打つ手なし、敗北、マルアの冒険はここで終わりを迎えるのであった!と言う事になってしまいます。非情に不味いです。
「だぁぁ!もう!こんなのどうすればいいのよぉ!!抜け出せるわけないじゃないのよ!さっきからずっと同じ道回って同じ場所に出て!もう頭おかしくなりそうだわ!!」
「ま、マルアお姉ちゃん…」
おかしくなりそうというより、もうおかしくなってるの間違いじゃないだろうかとこの時ユキミヤは心の中で思ったが口に出さずに抑えた。
「ん~・・・もしかしたらと思ったけどこの感覚は・・・」
とここでトゥエルがここで口を開いた。それに気が付き、私はものすごい息を伊で振り向きトゥエルに尋ねた。
「何か分かったの?!」
「うぉ?!すっごい勢い・・・・えっとねー…この辺一帯に魔力の反応を感じるんだよね~。」
「魔力の反応・・・ですか?」
「うん。詳しく言うと、多分ここら辺の半径30メートルくらいの空間から私たちが出れないような結界のようなものが施されてる…て感じかな~?」
「結界ね・・・ねぇトゥエル。その結界の中心部ってどこらへんか分かる?場所を教えてくれない?」
「え?そうだね~……ちょうどあの傷をつけた木の辺りだと思うけど~・・・」
その言葉を聞きその木の目の前までやってきた。もしかしたら何かこの結界を解く鍵があるかもしれない。そう思いその木に手を触れる。
すると突然辺りの空間が揺らめき始め、木々が、草が、大地が轟音を立て崩れていく。
「何かわかんないけどマズイ・・・!」
そう思った時にはもう遅く目の前の変異した何かを目の当たりにしたのだ。