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3. 再会だよね

あり得ない現象の表現があっても、話の中ということで見逃してほしいです。

 …完全に気を失っていたのは数十秒だったみたい。

 ザクザクと音を立てて私に近づく足音が複数ある。


「大丈夫?」

 薄目を開けると覗き込んでいるのか茶色いサラサラな髪が私の頬にかかるのがわかる。思ったより髪長いんだね。

 ワンコだ。

 上向きに抱きかかえられたんだ。

「気持ち悪い…」


「とりあえず横になれるところに連れて行かなきゃね。怒られるのはそれからだ。」

『○×△×▽▽ーー○○〃○××〃』

 何か聞き取れない声が聞こえる。

 うん? 頭働かない。


「シュア、そいつは誰だ? 向こうから連れてきたのか?」


 私の頭のずっと上のほうから耳障りのいいイケメンボイスが聞こえるよ。

 億劫だけど顔をちょっと動かしてと。

 キリッとして鋭い眼光だあ。でもクールカッコイイ系で私好みだ。どっかで見たことある気がする。えっ、もしかして…


「宇佐見君?」


 聞き取れるかどうかの小声で私は呟いた。

「当たり!」

 ワンコ君が喋ったとたんに、私の目の前にビュンと何かが振り下ろされた。け、剣!!光ってたよね。

 あまりの驚きに再び私は目を閉じ、気を失うことにした。



「皇子、向こうの人を脅かしすぎですよ。気を失っちゃったじゃないですか。客間にとりあえず運びますよ。怪しい人ではないと思いますので、詳しいことはその後でお話します。よいしょっと。」

 ワンコ君は私の身体をお姫様抱っこで抱え上げようとしたが、ふらついていた。

「お前も体調悪いんだろ。他のやつじゃ、途中で気がついたとき驚いて面倒だし、俺が運ぶ。俺のこと知っているみたいだし。」

『だれか、俺がこの子を客間まで運ぶから、誰か先に行って侍女に部屋の準備をさせてくれ。』


 誰かがバタバタと駆けていく。

 ザクザクと玉砂利を踏む音をかすかに聞きながら、私はふわりと持ち上がる体に心地よい揺れを感じて運ばれていった。



 …寝心地のいいベットだなあ。意識が浮上してくる。まだ寝ていたいけど、もう起きなくちゃいけないんだよね。んんっ!!

 私は無理矢理目を見開いた。

 目に入るのは見慣れない天井。ゆっくりと首を動かして見えるのは、木枠の大きな窓とそのそばにいる女の人。

 わあ、かなり広い部屋だ。ベットの他に大きな重厚な机とソファーセットがある。


「目が覚めた? お嬢さん。」


 お嬢さん? 私のことか。

 ゆっくりとベットから体を起こす。気持ち悪いのも、めまいもおさまったようだ。

「ここは?」

「練さまのお屋敷よ。体調はもう大丈夫? 大丈夫なら練さまに会いに行きましょう。あなたの知りたいこともわかるわ。」

 サラサラの茶色の髪をポニーテールに結わいていても背中まであるきれい系のお姉さんが余裕のある笑顔で私に話しかける。20代前半くらいかな。動きが優雅でしなやかだ。若草色のシンプルな膝丈までのワンピースが品のよさを感じさせる。

「私はシュリ。シュアの姉よ。あなたの名前は練さまのところで教えてね。」

 シュリさんの案内で宇佐見君のところに私は向かった。


 廊下に出るとさらに驚く。ここっていわゆるお屋敷ってところなのでは?

 雰囲気としては洋風な明治村の建物みたい。写真でしか知らないけど。漆喰のような白い壁に焦げ茶色の柱。彫刻の施された趣のある扉や手すり。磨きあげられた床。掃除や手入れが大変そう。

 私が居た客間は2階の階段から一番奥の部屋だった。

 宇佐見君がいる部屋は階段から一番近いようだ。


 扉をシュリさんが開ける。

 中に入ると両袖の大きな机から黒髪の男の人が顔を上げた。宇佐見君?

 素直そうな毛質の黒髪。前髪は少し長めで右に流している。切れ長の奥二重。キリッとした印象は変わらない。口元は怒っているようにみえる。少し細めの体格かな。でも鍛えていそう。以前より断然格好良くなっている。目が思わず動きを追ってしまうよ。


「そこ、座って。」


 私にソファに座るように勧めてくる。素直にいうこと聞いておこう。

 シュリさんはお茶の用意をしに行ってしまった。

 腰掛けて回りを見ればシュア君だっけ、書類のようなものを抱えて部屋の中を動き回っている。

 私に正面に宇佐見君らしき人が座る。見られている感がハンパない。

 ドキドキしちゃうよ。


「俺は、宇佐見 練。こっちでの名はデュランデュデール ディ ディディエル レン。ディディエル王家の第二王妃の息子だ。」

「私のこと覚えているかわからないけど、私は霧島(きりしま) 透子(とうこ)です。小学5年と6年で同じクラスだったのだけど。」


 うつむきそうになったけど、しっかりと顔を上げて名を名乗る。

 思わず丁寧語になっちゃった。

「…」


 あとの会話が続かない。緊張感だけが漂っている。

 だ、誰か話しようよお。









やっと彼が出てきました。私の姿は次回分かるかと思います。

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