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1. 彼を忘れられない女子高生

初投稿です。楽しく読んでいただけたら幸いです。

 桜の花も盛りをすぎてだいぶ葉が多くなってきていた。

 葉の隙間から覗く陽が柔らかいピンクをまといキラキラと輝いて見える。

 浮かれている自覚はある。

 今は春。高校2年生に進級し、春休みも後残りわずかとなった日。

 私は部活へ向かう電車を途中下車してしまった。


 なんでそんなことをしてしまったかといえば、彼を忘れられなかったから。

 小学校6年生の時、同じクラスの彼のことを好きになった。

 真面目な優等生である私が好きになるくらいの人だから彼はもちろん文武両道の所謂王子様であった。キラキラした切れ長の瞳が印象的だった。

 人気者だった。

 すごく好きだったけど私の気持ちは伝えられなかった。

 周りにはバレバレだったみたいだけど。

 優等生でいた分プライドはあったし、恋に振り回される姿を皆に見られたくなかった。

 隣の席になったり、習い事で一緒になったりしていくうちに、どんどん彼に惹かれていった。

 彼のほうも満更でもないのは伝わってきていた。

 話をするのが楽しくて一緒に居るとどきどきして、ずっとそんな日が続くことを願っていたが小学校卒業と共に終わりがきてしまった。

 彼も私も引っ越しすることになったのだ。同じ中学校には通うことができない。顔を見ることはもうできない。

 …未練がましい私はそれ以来彼が忘れられない。こんなにずっと好きでいるなんて思ってもみなかった。


「ここの家がそうなんだよね。」

 ついにというか、とうとうというか、一件の昭和の香りがしそうな家の前に立つ。

 りっぱな松の木が目をひく。でも特別大きな家ではない。淡いピンクのチューリップが木の根元に植えられている。手入れの行き届いた感じのいい家だ。



 月日を重ねても彼を忘れられない私は高校生になれば彼に会えると勝手に想像し、地域でトップの共学校へと進学した。

 中学時代はアイドルや先輩に恋する友人を横目に勉強に勤しみ(全く興味なかったから問題ない。2次元は大好きだったけど)、想像の彼との再会を励みに受験を乗り越えた。そんな動機でいたなんて誰にも言ってないけど。

 だのに彼は高校にはいなかった。

 彼が進学するならば絶対ここだろうという私の考えは外れたのであった。


 勉強は忙しいが高校生活は楽しい。文句はない。親友といえるくらいの友人もできた。彼氏はいない。

 ただ私の中でいるはずの彼がいない生活に不満はちょっとあった。

 彼はどこにいるのだろうか…小学校の卒業アルバムの住所は大規模な区画整理で違う地名になってしまってあてにならない。同窓会の話なんてきかないし。

 ふと思いついて彼の引っ越した町の電話帳を見てみると…名字があった。住所と電話番号わかっちゃったんだな。


 ストーカーではない。はず。

 今日初めて家の前に来た。電話は恥ずかしくてできなかった。

 ただどんな所で暮らしているか知りたかっただけ。運良く会えたらラッキーだけど。

 気がついたら部活に行く途中電車を降りて調べた住所に向かって歩き出していた。今日の部活はサボりだ。もう少ししたらスマホが鳴ってどうしたのか聞かれそう。鳴ってもスルーと。音がしないようにしておくと。

 春の気候のせいだと思うことにしよう。そうでなくちゃこんなことして恥ずかしい。


 表札は「宇佐見」…あっている。

 ううーん、インターフォンは押せないな。

 道を挟んだ桜の木の下で家人が出てくるのを見守ることにする。はたからみたら怪しすぎる。木の陰に隠れる? 桜に毛虫がつく季節でなくてよかった。そういえば、彼が家から出てきたらどうするか考えていなかったな。うん、まずは挨拶? 私ってわかるかな? 偶然、久しぶり!は馴れ馴れしいかな? もしかして宇佐見くん? たまたま用事があって近くまで来たら会ってビックリしたよ。とか? 色々考えながらも視線は道を挟んだ家の入り口に固定。ジャージが入ったサブバックを握る手に力が入る。


 ガサガサと頭上で木の葉枝と洋服が擦れるような音がしたと思ったらバサッと目の前に何かが落ちてきた!! ななな、何なの?

「うぎゃー」

 咄嗟に変な声でた。身体固まった。

「君、皇子の知り合いなの?」

 私は独り言を言ってらしい。上から落ちてきたのは明るい茶色のサラサラヘアーに金に近い茶色のクリクリした瞳をもつ、この辺りではなかなか出会えないレベルのお顔を持つ中学生くらいの少年だった。








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