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ラスト・シスターズ  作者: 片側文庫
13/35

オペレーション・ブリーフィング

 優花の戦闘参加を認める。

 葛藤はあったものの、美咲は最終的にそう決断した。

 その決断が今度こそ、自分の意志で下されたものである以上、そこには自信が付随することになる。

 そしてその時点から、美咲にはある考えが浮かび上がってきた。

 危なっかしいとはいえ、戦力は今や一つではない。そうであるなら、いい加減この状況を終息させる、決定打となるべき行動をとるべきだと。

 その日の朝、美咲は(優花にとっては)ありえないことに、普段よりも早く起床した。覚醒も早く、そして驚くことに、一日の予定を美咲の方から言い出したのだった。

 「今日はお話があるから、家の中にいてもらってもいいかな」

 朝食をとりながらそう切り出してきた姉に、優花が言葉を失うほど驚いたことは言うまでもない。

 「な、な、な」

 「?」

 「なんで朝なのに、おねえちゃんが喋ってるの…?」

 「え、ええ??なにか変かな」

 「変ってどころじゃないよ異常だよおかしいよ。いつもは死んだみたいにボーっとしてて話しかけても『うう』とか『ああ』しか言わないのに、しかもそんなおねえちゃんから今日のやることを言ってくるなんてもう絶対おかしいよ」

 「えっ…。うーん、朝の私ってそんなに酷いかな…?」

 「うん」

 「…ご、ごめんなさい」

 一切の容赦ない力強い肯定に、美咲はうなだれて萎れていくしかない。

 「でも、ホントにどうしたの?おねえちゃんが朝にしっかりしてるところって、優花、見るの初めてかも」

 「そ、そんなことは無いはずだけど、でも今日は優花に話しておきたいことがあったから」

 「ふーん」

 「別にもったいぶってるわけじゃないんだけど、まだ準備が必要っていうか」

 「ううん、それは気にしてないよ。ただ、珍しいなあって」

 「うん、そうかもね。でも大事なことだから」

 朝食が済んでしまうと、優花はいつも通りの片付けに、そして起きている美咲が洗濯を引き受けることになった。

「大丈夫かなあ」

 洗濯物を入れたカゴを渡しながら、優花は明らかに不安がっている。

 「こ、これくらい、できないと」

 「でも家にいたときだって優花がやってたんだよ。おねえちゃん寝てたから」

 「それはそうだけど、でも私だって」

 「うーん、それじゃあいいけど、洗剤は入れすぎないでね。干す時は間隔を開けて、風が通るように。下の物干し棹は古いから、あんまりいっぱい吊るしちゃダメなんだからね」

 「はい、了解です」 

 「あとちゃんと皺は伸ばして、ぱんぱんってはたきながらやるんだよ。それから、その、パ、パンツ、とかは、一応見えないように、中に干すから、ね」

 注意点を伝え終えると、優花はさっさと自分の仕事場へ向かってしまう。 

 結局美咲が起きていようといまいと、朝に姉妹の立場が逆転してしまうのは同じことのようだった。

 美咲は外に出て、玄関脇の洗濯機へと視線を向ける。しばらく黙ってそれを眺めていたが、やがて決心したようにスイッチを押して、それを稼働させ始めた。

 だが洗濯漕の中は空である。物を入れる前にスイッチを押すところからして間違えているのだが、本人は気が付かない。水が溜まってから入れるものだと思っている。

 空転した洗濯機はその内にエラー音を発して勝手に停止し、困り果てた美咲が優花を呼び、そんな事がその後に何度もあったため、朝の作業は優花一人でやるよりも時間がかかってしまったのだった。

 そしてようやく、全てにけりがついた時。 

 時間は昼時少し前になっていた。

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