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6.押しかけ幼馴染

ファンタジー要素が全然出てこなくて申し訳ありません!

もうしばしお待ちください……

 カナコによってかき回された昼休みが終了し、僕は教室へと戻った。

 クラスメイト達はもうなんやかんやと質問をしまくってきたが、とりあえずカナコは元々幼馴染で数日前に久しぶりに話をしたら意気投合しただけだと説明しておいた。

 はっきり言って誰も納得していなかったが、僕はその説明を押し通して、それ以上質問されることを拒んだ。

 だって、どうやって正直に伝えればいいのだ。幼馴染が意味不明な言動をして突然近づいてきたと思ったら、なんだかよくわからないうちに振り回されているなんて、誰も信じるわけがないじゃないか。

 カナコも何を思って委員長風のキャラをしていたのかわからないし、それを今日からあっさりと覆したことも訳がわからん。

 まぁ、訳がわからないのはそれだけではなく、カナコの行動全般に言えることなのだが。

 とりあえず、午後の授業はそれで乗り切って、学校が終わると同時に足早に帰る準備をする。

 元々僕は部活に所属していないので、放課後は特にやることもないのだ。

 それに、このまま教室に留まっているのはまずい。とにかく教室から出なくては、また昼休みの二の舞になってしまう。

 カナコから逃げようと言うわけではないのだが、とりあえず教室で出くわすのは避けたいのだ。せめて、下駄箱とかで合流する方向にしたい。

 でも、カナコが僕の思いを汲み取ってくれる気はしないなぁ……

 そう考えた僕は、帰り支度を済ませると、教室の外に出てからそれとなく七組の方へ歩き出す。

 下駄箱とは逆方向なのだが、そこはなんとなく用事があるんですよーという空気を醸し出しながら歩く。

 しかし七組まで到着してしまうと、僕がカナコを迎えに行ったみたいになってしまうので、ことさらゆっくりと七組へ向かう。

 これならカナコが教室を出てから僕のクラスへ向かってくる間に、自然に合流することが出来るだろう。

 僕はそう考えていたのだが、もう何度目かわからないまさかに遭遇する。

「すぅーばぁーるぅー!」

「でかい声で呼んでんじゃねええええええええええ!!」

 お前は小学生かよ!

 ほら、周りの生徒が皆僕のこと見てるじゃないか! どうしてくれんだ!

 自分も大声で突っ込んでしまったことは棚に上げて、僕はカナコを心の中で責め立てた。

「迎えに来てくれたの? ありがとうっ」

「そんなつもりは全くこれっぽっちもねえ勘違いしてんな」

「スバル、早口だねぇ」

「うるせえさっさと行くぞ」

「はーい」

 当初の予定がうまくいかなかった上に、こんなに注目を浴びている状態は早く脱したい。

 僕はもはや小走りに近い速度で下駄箱へと歩き始めた。

「スバルー、歩くの早いよー」

 カナコは文句を言いつつも僕についてくる。

 しかし、文句を言いたいのはむしろ僕の方だ。

 だが言っても無駄なので、無言で歩き続ける。

 まじで困った幼馴染だなぁ……

 どうにかしてこいつをコントロールする方法はないのだろうか。

 僕の苦悩はまだまだ続きそうである。


「ただいまー」

「おじゃましまーす」

 帰り道、これといった出来事もなく無事に家へと着いた僕達だったが、早速言いたいことがある。

「いや、帰れよ、何自然にあがろうとしてんだ」

「なんで?」

「なんでじゃねぇ、そうそう毎日家に上がられてたまるか」

「いやらしい本でも見るの?」

「ちげえよ!! 単にプライベートを邪魔されたくないだけだ!」

 高校生女子の発言とは思えねえ。

「でも、バイオ途中じゃない」

「……バイオはいいんだよ、僕はもうクリアしてるんだから」

 少し俯いて返事をした僕を、カナコはにやりとした笑いを浮かべてこう返してきた。

「あ、わかったぁ~、そろそろアレが出てくるから、バイオやりたくないんでしょ」

「アレ? な、なんのことかわかんねぇなあ……」

「ふぅん、白を切るんだ。まぁいいけど。じゃあバイオやっても平気だよね?」

「いやだから、帰れって」

「何で?」

「だから僕のプライベートをだな……」

「やっぱりいやらしい本を読んだりするの?」

「違うってば、ほら、宿題とかあるし」

「下校中そんなこと一言も言ってなかったじゃない」

「さ、さっき思い出したんだ」

「じゃあ私も手伝ってあげるから、早く終わらせようよ」

「僕は、一人で勉強したいタイプなんだ」

「そんな事言って、他の人と一緒にやったことがないだけでしょ」

「お前、僕の友達が少ないみたいな言い方を……」

「違うの?」

「……いや、100%間違ってるとはいえないんだけどさ」

「っていうか宿題は嘘でしょ?」

「う、うそじゃねぇ……」

「今ちょっと動揺したでしょ」

「してねえ……」

「ふーん」

「な、とにかく帰れって、今日は忙しいんだ」

「ええー」

「スバル? 何玄関でくっちゃべってるのよ。……あらカナちゃん! 今日も来たのね! さ、上がって上がって!」

 しまった! 玄関の話し声が聞こえてきたのか、母さんに嗅ぎつけられてしまった!

「か、母さん、僕は今日宿題をやるから、こいつには帰ってもらおうと……」

「アンタ家で勉強なんてしてないじゃない。いつ行ってもゲームやってるじゃないの」

「ノォォォォォォウ!!!」

 あんた空気読めよ!

「……スバル?」

 ああ、カナコがやっぱりという顔で僕を見ている……これはまた、逃げるのに失敗したのか……


 そして、結局部屋でカナコと一緒にバイオをやっている僕である。

 ちなみにバイオというのは通称で、正しくは「バイオニックシティ」というゲームだ。内容は、変異生物に支配された街に取り残された人間が、様々な武器や道具を使って生き延びるというアクションゲームである。

「キィィィィィ!」

「スバル、うるさいよ」

 だって、仕方ないじゃないか! あ、あいつがっ!

「やっぱり虫が嫌いなのは変わってなかったんだね。昨日の進み具合からすると、そろそろインセクちゃんが出てくるところだったもんねぇ」

 カナコはインセクちゃんなどと可愛らしく表現しているが、実態は体の所々から触手が生えているでかいカマキリである。

 何もないところでいきなり転んだりするちょっとドジっ子な面が人気となって、ネット上でインセクちゃんと呼ばれるようになったのだ。

 しかし、インセクちゃんが転んだ時に正面に立っていると、そのでかい鎌で地面に串刺しにされるというえげつない攻撃方法もあったりする。全然可愛くねぇ。

「そんな目をそらしていたら何時まで経っても倒せないじゃない、スバル、一人でやってるときはどうしたの?」

「コンピュータが操作するパートナーの強さを最強に設定して切り抜けてたんだよ!!」

 あまりにも情けない内容を悲鳴混じりで伝える僕。

「……そんなに虫が嫌いなのに、よくバイオやろうと思ったねぇ……」

 まさかカナコに呆れられる日が来るなんて! 僕は非常に傷ついたよ!

「バイオは好きなんだ。それに昔のバイオには昆虫系モンスターはいなかったじゃないか!」

 最新作を初めてプレイしたときにインセクちゃんと出会って、混乱しているうちに惨殺されたときは、思わずバイオの公式ホームページにいって「次回作には昆虫系モンスターを出さないでください」って、アンケートフォームから送信してやったよ!

「もう、しょうがないないなあ、私が倒してあげるから」

「た、頼む……」

 苦手なインセクちゃんから、画面を見ずに鳴き声だけを頼りに逃げまわるという、ある意味無駄なプレイヤースキルを発揮しつつ、僕はカナコに泣きついた。

「えいえい」

 間の抜けた声と同時に、カナコがインセクちゃんにバズーカを撃ちまくる音が聞こえる。

 しばらくするとバズーカ音が止み、インセクちゃんの断末魔が鳴り響いた。

「ほら、終わったよ」

「ああ、た、助かった」

 くそう、こうなるのが目に見えてわかっていたからカナコをうちに上げたくなかったのに。

 僕は情けない姿を晒したことについて後悔しつつ、インセクちゃんが居なくなった画面を見てため息を漏らすのだった。


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