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2.誰だよお前

 さて諸君、諸君が英語を理解出来ないのに、英語圏の人間……まぁ外国人でいいか、外国人に話しかけられたらどうする?

 アイキャントスピーキングイングリッシュ、と言って逃げるのもいいかもしれない。

 あるいはボディランゲージ等を活用して、なんとか意思の疎通を図るのもいい。

 または英語の出来る知人を電話で呼び出すなんてのもまぁ、悪くない。

 もし高性能なデジタル辞書なんかを持っていれば、そこに文字を打ち込んで翻訳させるなんてのもありかもしれないな。

 だが、逃げを打つことも出来なければ、誰かに助けを求めることも出来ない状況なら、諸君はどうするだろう。

 ボディランゲージ等で意思を示すのにも限界はある、道案内程度ならどうにかなるとしても、あまりにも複雑な内容はお互い伝えることが出来ない。

 相手が何かを伝えようとしているのはわかるのだが、内容が理解出来ない。そんな状況だ。

 まぁ、何が言いたいかというと、そんな時は途方に暮れるよねってだけの結論なんだが。

 つまり今、僕はそんな状況に陥っているのだ。

「ねえスバル、聞いてる? 私ね、考えたの、幼馴染って属性は大事にするべきだって」

 そう言って僕に話しかけてくるのは、長い黒髪を三つ編みにまとめた少女。背は150cmくらいだろうか、まぁまぁ整った顔立ちをしていて、黒縁メガネをかけている。ぱっと見だけで委員長だと言われそうな容貌だ。服は僕の通う高校の指定制服であるブレザーを着ている。

 自宅を出て学校へ向かおうとする僕の前に現れて、いきなり訳のわからないことを色々とまくしたてているこいつは、どうやら僕の知り合いらしい。しかし、正直見当がつかない。

「君、誰?」

「やだなぁ、冗談言って、久しぶりだからって忘れるわけないでしょ?」

 三つ編み少女はそう決めつけてくるが、あいにく僕の知り合いリストにこの少女は入っていない。

「いや、マジで」

「え? 嘘でしょ?」

「ほんとほんと」

「またまたぁ」

「いやそういうのいいから、誰なんです?」

「……まさか本気でわかってくれないとは……幼馴染パワーもここまで落ちたのね……でも負けない、カナコ頑張るっ」

「一人の世界に入ってんじゃねーよって、んん? 幼馴染でカナコ? 三軒隣に住んでる山本カナコか?」

 生まれた年が一緒で、幼稚園から小学生の間仲良くしていた幼馴染なら確かにいたが……

「そう! その山本カナコです! お久しぶりです! 昔みたいに、カナって呼んでいいよ♪」

「いや呼ばないよ山本さん、久しぶりですね。それじゃあ僕は急いでいるのでこれで」

「待ってよスバル! どうして逃げるの!」

「学校にいかないと遅刻するからさ、話は後で聞くから」

「学校? 学校とおっしゃいましたか! 何を隠そう、私もスバルと同じ学校に……って、待ってよ!」

 同じ学校の制服着てる時点で全然隠れてねえよ。

 それに本能がアイツと関わってはいけないと警鐘を鳴らしている。さっさと逃げよう。

 大体僕の知っている山本カナコはもっと清純そうな、窓際で本でも読んでいるのが似合いそうな外見だったはずだ、間違っても委員長風のキャラではなかったはず。まぁ、といっても中学校に入って疎遠になった後の記憶だから、性格的な部分は小学生の頃からどう変わったかわからないのだが。

 というかキャラの変貌もそうだが、アイツの第一声がやばい、なんだ幼馴染属性って、ゲームのやり過ぎじゃないのか?

 どうやら僕の知っている山本カナコは居なくなってしまったらしい。これでも中学生の頃は密かに憧れていたのに。

 あんな幼馴染属性とかリアルで言っちゃう痛いキャラになっていたとはなー、人間何があるかわかんねえ。

 しかし同じ高校に通っているとは知らなかった。もしかして見た目が変わりすぎていて気が付かなかっただけなのかもしれないが。確か中学校の時の髪型は肩甲骨のあたりまで伸ばしたサラサラのストレートだったし、メガネもしていなかった。それにあんな痛い台詞をいうキャラではなかったはずなのだが……

 中学校ではその容姿が人気で、男子から結構告白とかされてたんだよな……僕は当然しなかったけど。思春期真っ盛りだったからね、恋愛感情というよりも女子と一緒にいることの気恥ずかしさのほうが強かったんだ。

 ってそんなことはどうでもいい、とりあえず奴を振りきってさっさと学校に行こう。それが取るべき正しい手段だ。

 僕は歩く速度を上げると、普段は使わない近道を使いカナコを撒いた。

 そして学校に到着した後、靴を履き替えて自分のクラスへと向かう。

 時折廊下ですれ違うクラスメイトや友人に適当な挨拶をしつつ自分の席に着く。

 まぁ、学校内ではカナコも変なことはしてこないだろうと思いつつも、帰ったら母さんに山本家の様子を訊くことにする。一体あの家庭に何があったのか気になるしね。

 そう思って学校で授業を受けていたのだが、その考えが甘かったことを僕は思い知らされる。


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