第4話 贖罪
暗闇の中で、剣の音とさっきの光景が見える。 俺は... 俺は戦って死んだ。
俺は1人の剣士を殺した... 殺せたはずだ。
本当は魔法師以外殺したくなんかない。
あの人の考えとは少し違うけど、死なないからって死の悲しみが分からないわけじゃない。
飼っていた獣が死んだ時は悲しかった。
人にだって同じだ。 魔法師は... あの人の意思だから仕方ないが俺と戦っていたあの剣士は操られていた。
本心で戦ってはいなかった...
戦いの前にあの剣士が言っていた、兄の話と聖剣... 俺があの剣士の謎を解いて、あの剣士の魂を解放してやるのが筋ってもんだよな。
俺は青い光が暗闇を照らす中、贖罪を考えていた。
光が俺を包んだ後、そっと目を開けると身体に『月棘』が刺され血を流すロイドと
その場から逃げようとするアゼルの姿があった。
俺は立ち上がり、落ちていたロイドの剣を拾いアゼルがいる玉座へと向かった。
アゼルは腰を抜かし、玉座から立てず唇を震わせて俺に何かを言っていた。
「お前如き」だとか、「あのゴミ」だとか色々戯言が聞こえる。
俺はそんな戯言を無視して、一段、また一段と上がりアゼルの前へと着いた。
そして震えるアゼルの身体に剣を当て、こう言った。
「俺に罪の無い人を殺させたんだ。 お前には死で贖ってもらう。 死ぬ直前に見たらどうだ?
お前が禁書の魔術で作り上げた、この王国とお前の魔術によって生かされた醜い身体をな」
俺は勢いよく剣を心臓へと突き刺した。
アゼルは血を吐いた後、目から光を消し、持っていた禁書を床に落とした。
アゼルが死んだ瞬間から、国にかかっていた魔術の結界は消え、街中から国民の声... と悲鳴が聞こえる。
俺は突き刺した剣を離し、落ちた禁書を拾ってその場を立ち去ろうとした。
だがその時、ある1人の剣士の声が聞こえた。
「あの時.... 見えなかった、兄様の書き置き。 今やっと思い出せたよ...
兄様は.... 僕に真実を気付かせたくなかった.. そうでしょ? だから... 聖剣.. を」
そう言い残して、1人の剣士は微笑みながら命の灯を消した。
俺は突き刺していた『月棘』を解除し、手を合わせた後城を去った。
【死の禁書 生】
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王国を去り、草の中に隠していた俺の荷物を探していた俺に声をかけてくる人が居た。
「あの.... その服血だらけですけど.. 大丈夫ですか?
私の... 私の? この大きな服、代わりに着てください!! 私には要らない物ですから!!」
無視して、荷物を探す俺だったがずっとその声が横から聞こえてくる。
今の俺は禁書を持ってる。 禁書ってのは何があるか分からない代物だ。
なるべくその禁書に近づけたくないのに、その声の主は俺に近づいてくる。
「ちょっと... ちょっと聞こえてますか〜? ちょっと.. ちょっと〜!!!」
声の主は俺の目に入る様に手を振ってきた。 俺の目に写るその手は少し焼け爛れている見た目をしていた。
俺は咄嗟にその手を掴み、声がする方を向いた。
「お前、この手大丈夫か? スライムに噛まれた... そんな傷跡じゃ」
俺の目に写る声の主は、金色の髪をゆらゆらと揺らす小さな少女だった。
その少女は俺が王国に入る前に着ていたコートを着て俺の目を見つめていた。
「目の色が違う... 白と.... 赤。 もしかして!!
「俺の目の話なんか今どうでもいい... この傷、大丈夫か? って聞いてんだ」
少女はニコッと笑っていた。
「私... 魔物に襲われても.. すぐ治るんです!! だから、この傷だって大丈夫です!!
私、思い出しましたよ!! 私にこの服をかけてくれた人ですよね?」
確かに若い人ってのは、身体の治癒力が凄い。
だが、魔物に噛まれた傷なんてそう簡単に治るもんじゃない...
そう思っていた俺だったが、俺の目に写る少女の腕はみるみるうちに治っていき、細い腕が俺の手の中にあった。
もしやこの子...
「魔力耐性... 魔力耐性があるな」
「まりょくたいせい?」
「魔力耐性って言ってな、あらゆる魔力に耐性を持ってるんだ。
だからスライムに噛まれてた腕も、中に入った魔物の魔力を弾いて治ったってわけだ。
て事は... もしかして」
俺は少女の手を離して、持っていた禁書を魔力を使って開き、かけて大丈夫そうな魔術をかけてみる事にした。
『死隷』
魔術の対象者を死ぬまで何でも操れる魔術だが、この子には魔力耐性がある。
だから、効かない.... はず... だが?少女の顔からは笑顔が消え、目が虚になっていた。
.... どうやら効いてしまったみたいだ。
パッと思いつきでやってしまった行動だったが、今になって後悔が俺の身体を襲っている。
とりあえず、解除... 解除の方法は... そのページを隅から隅まで読んだ俺は解除方法を一つ見つけれた。
【魔術使用者の死】 どうやらこれしかないらしい
俺は『月棘』を魔術陣から出し、それを手で持ち喉を突き刺した。
何でまた、ここで死ななくちゃ...
いや... 何考えてんだ俺.. 俺が全部悪いじゃねぇか。
俺はまた暗闇の中へと意識が落ちていき、生き返るまでの時間を暗闇で過ごす事になった。
にしても... あの少女はなんで王国に居ずに王国外にこんな夜に居るんだ?
それに着ていた服はボロボロで、金色の髪もボサボサだ。
身体は痩せ細って... とても健康と呼べる状態じゃなかった。
親に捨てられた...? それとも.. 元から1人だった?
少女が外の世界に出て1人で生きてける程、世界は優しくない。
少女が安心して居れる場所に、連れてってやるのが最優先か。
俺の一方的な優しさかもしんないけど、出会ったからには死なれてほしくない。
そろそろ生き返る時間か...
俺は、青い光と少女の声が聞こえる中生き返った。
目を開けると、そこには慌てふためく少女が居てボロボロの服を手で千切り、それを俺の首に当てていた。
「ちょっとちょっと動かないでください!! 急に... 急に目の前で血を吹いて倒れて...
汚いかもしれないけど.. これで止め.. あれ? 血が止まってる」
俺の目に写る少女の目はさっきと違い青色にキラキラと光り輝いていた。
「良かった... 魔術が解けてて。 お前... 名前は?」
「え、私の名前ですか? 急になんで..?」
「この世界で一人ぼっちは寂しいだろ? 俺がお前を安心できる場所まで連れてくから、名前を聞かせてくれよ。 お前って呼ぶより、 名前で呼んでやりたいからな」
「私... 私の名前はリューナ・セルヴァーニャです!! この名前だけは覚えてて...」
「リューナ。 よし、リューナ!! 今日からリューナは俺の旅仲間だ!!」
俺はそう言ってリューナの頬を手で挟んだ。 リューナは困った顔をしながら俺を見ていた。
「た、旅仲間... ですか? わ、私何も出来ないし、私も私の事よく分かってないんですよ?」
「何も出来なくても、荷物を持つ事ぐらいは出来るだろ? それに、リューナの事を知れる方法を俺は知ってる。
だから、今日から俺と一緒に旅をしよう! 前から欲しかったんだ、旅仲間ってやつ!」
俺が笑顔でそう言うと、リューナの顔にも徐々に笑顔が現れて俺の腕を掴み返してきた。
「優しい人に出会うのは今日が... いや、貴方が初めてです!! えっと... なんて呼べば..」
「ルイン、ルインで良いよ」
「ルインさん!! 何も出来ない私を... 連れてってくれますか?」
「出来なかったら出来る様になれば良いんだ。 旅をすれば... 何でも出来るし何でも知れる。
少しの間かもしんないけど、よろしくな」
「はい、よろしくお願いします!!」
少女は笑顔で飛び跳ねながら、喜んでいた。 俺は罪滅ぼしも兼ねて、リューナという少女と旅をする事にした。




