14_試作品
それから3か月後、試作品が出来たという連絡があり休みに合わせてランカスターの館に行くことになった。
館に向かったのはディジーとタイガのみ、ローザは後始末やお礼参りで不参加となった。
「大掃除は済んだようだな。」
「そうですね。
今回排除したのはあくまでも実際に犯罪に手を染めたものだけで予備軍には手を付けてないですし。」
「そうだな。今回の依頼は予備軍が犯罪に手を染めさせない為の道具としての使用だったな。」
「ええ、それがグランマの希望です。」
出来上がった試作機は3種類。
一つは見たもの記憶にある光景を記録するもの
「これが一番欲しがられたのだが・・・」
それはそうだろう。裁判や犯罪捜査、その他諸々使い道が多そうだ。
「一定以上の魔力と言うか才能のある人からしか記録を取れないから通常利用は出来ない。」
「わざとですか?」
タイガの言葉にマルクスの隣に居たトーマスが首を振った。
「実際問題一般人に使うには問題が多すぎて断念した。」
まず中々映像や情報が取れない。
次にノイズが多すぎる。
必要な情報を取れるよう思考を誘導すると今度は虚偽が混ざる。
「なるほど、よく理解できます。」
そこら辺は父方の術や魔女の技を使う上で課題となる部分と同じだ。
次に見せられたのは部屋全体で再現するVR映像。
見せられたのはドルイドたちの儀式の光景だった。
「流石ですね。儀式の力の流れも感じ取れる。」
「ああ。その再現が一番苦労した。」
最後は夢を見せる為のもの。
ヘッドセットかと思ったら枕に仕込んでいた。
被検体はタイガが務めた。
「どうです。」
トーマスの言葉に
「ええ。要望については別途まとめますがこの方向で問題とないと思います。」
一通りの説明と確認の後、ディジーはマルクスに向き合う。
「これについて父から買い付けを頼まれているのでお願いできますか。」
「ああ、承知した。」
ここでトーマスが口を挟む。
「作った側から言うのもなんだけど役に立つの?ビデオカメラやVR映像で良くない?」
「トンデモない。我々からすると凄く役に立つものですよ。」
「ビデオカメラやVR映像じゃ僕達が本当に知りたい情報は抜け落ちるから。」
「今回の試作品は提供するから要望や課題を知らせて欲しい。」
「分かりました。」
マルクスとディジーは契約条件と報酬他についてまとめていく。
その横で教授はタイガに聞いた。
「君は参加しないのか?」
「僕だとこういう交渉ごとの経験が足りていないので・・・。」
その言葉に背中を向いているディジーから突っ込みが入る。
「貴方も出来るようになりなさい。次は任せるからね。」
「・・・はい・・・」
ある程度まとまったところでお茶会となった。
ディジーは結果を報告するため、席を外している。
「すまんが君が見たものの提供をお願いしても良いかな。」
マルクスの言葉にタイガが頷く。
「今回は僕の見たものが中心で、後からリチャードのものを追加した。」
「同じものを見ても人によって違うものになるからな。」
最初に見た戦場のシーン、エドは吹き飛ぶ人を見て、教授は壁面に描かれた文字を見ていた・・・
その為、他人に見せる映像に仕上げるのにトーマスは相当苦労している。
「そうでしょうね。僕も姉さんもその手の訓練を積んでいるので同じ場面でも全く違う情報でしょう。」
ある程度映像が揃ったら今度は見せる為の映像の作りこみになる。
「どれを見せるか?いくつかの映像の混ぜた方が良いだろうね。」
「犯罪抑止が目的だから下手な作りこみより自身が体験しているように感じさせる作りにしないと。」
「そうだね。これ売れるかな。」
「止めた方が良い。僕達の望みは火に触ったら火傷するようなものに仕上げたいから。」
「そこまでするのか?」
「でないと効果が出ないから。だけどそうすると娯楽としては売れない。」
「そう・・・でも可能なの?」
「催眠術で火膨れを生じさせることが可能だから出来ると思うよ。
どうですか?」
タイガはマルクスとトーマスを見る。
「出来る・・・が作りこみに時間が欲しい。」
そこへディジーが戻ってきた。
「何の話?」
テーブルのカップには新たに紅茶が注がれ、茶菓子が追加される。
それらが行き渡ったところで皆カップを口元に運び喉を潤した。
「良い香り。」
芳醇な香りと味わいにディジーはうっとりしている。
「それで?何の話をしていたんです。」
タイガが会話の経緯を簡潔にまとめて語る。
「その内容で間違いないですか?」
ディジーは他のメンバーに確認を取った。
「ああ、それで間違いないよ。」
教授は頷き、エドは感心したように答える。
「凄い。僕だとこの3倍になる。」
「その上、必要な内容が抜けるな。」
教授の突っ込みにエドは膨れっ面になり、周りは苦笑いしていた。
「有難うございます。父からの要望の同じです。
こちらが支払う報酬も了承されました。
後はそれ以外にいくつか要望があるのでそちらは資料にまとめて渡します。」
「うむ」
マルクスは頷き、暫く感想や雑談をしてお茶会はお開きとなった。
閲覧、有難うございます。




