09_白の世界
光が収まるとディジー、教授、エド、タイガは真っ白な空間に浮かんでいた。
「やった!」と喜ぶタイガを横目にディジーは首を傾げる。
「ここは一体。」
「あの時もここに居たよね。」
エドの言葉に4人は顔を見合わせた。
周囲を見ると扉らしきものが幾つも浮かんでいる。
「もしかして門の中?」
「その可能性が高いな。」
ディジーの呟きに教授が返事を返す。
「どういうこと?」
エドは首を傾げている。
「今まではここを意識することなく試練の世界に移動していたんだろう。」
「今回は行く世界が確定していないから門の中にいるということですか?」
タイガの言葉にディジーは頷いた。
少し離れた場所で扉が開く。
様子を見ていると扉から光の奔流があふれ出しそのまま別の扉へと消えていった。
「「「「・・・」」」」
「ああいう状態だったということ?」
「・・・多分・・・」
「この状態を見るとランカスター家の以外の門は多数ありそうですね。」
「そうだとすると思いつくのは2つかな。」
・一つ、比較的門が開きやすい条件が整っていたので魔方陣を置くことで管理しやすくした。
・二つ、何か目的があって魔方陣を使って門を呼んだ。
「そういうことって可能なの?」
「うちにも幾つか異界開きの術は伝わっているし、そもそも神域は異界の一種だし。」
「そう言われてみればそうだな。」
「で、姉さんはどっちだと思っています?」
「ランカスターのご先祖はどういう状況だったのかっていう情報がないので何とも言えないけど。
最初は2で今は1?」
「ああ、一度門が開くと癖になるって聞きますね。」
「癖?」
「ええ、河川管理なんかでも同様なんですが一度氾濫を起こすと同じ場所で氾濫するようになるんですよね。」
「氾濫したことによって氾濫しやすい条件が整ってしまい、ひずみが発生やすくなる。」
「で、対策はというと堤防を高くするとか強度を上げるとかだと何年かする内に耐えらなくなってまた氾濫するって訳。」
「なので逆手に取って被害の少ないところで決壊させて氾濫を起こし、起きてほしくない場所では氾濫させないようにする。」
「ランカスターの門はそれだと?」
「不用意な異界との接触は災いですから。」
「歴史的な疫病とか大地震とか災害の幾つかはこれが原因だと思ってますよ。」
「災害はさておき、何で門は開いて別の世界と繋がるんだろう。」
エドの言葉に教授は答えるる。
「先程の河の氾濫と同じだと思う。」
「溜まった力を逃がすですか?」
「あるいはナイル川の様に川の恵みを大地に齎す。」
「それって僕がジルの薬を望んだこと?」
「それもあるだろうけどあちら側の問題もあったんじゃないかな。」
「猪のこと?」
「それもあるけど、多分世界を閉ざしたことによって閉塞して色々危なくなったいたんだと思う。」
「河も流れなければ淀み腐る。あの世界は綺麗だったけど活気は無かった。」
「大丈夫なのかな。」
心配そうなエドに、ディジーは笑いかけた。
ランカスターと繋がったから色々刺激が入ってくるから問題は解消されんじゃないの?」
「じゃあ最初のエジプトは?」
「教授が知りたいと思ったのと向こうが伝えたいと思ったのがうまく嵌ったからじゃない。」
「あの神殿は近い内に壊される。
それは必要なことだったけど、あの世界に生きる人達に取ってやりたいことではなかった。」
「だから遠い未来に自分達の思いを伝えたかった。
手紙に託してかっての姿を残したかった。」
「あの手紙、凄かったね。」
タイガの言葉にディジーが聞く。
「読んだの?」
「ネットで原文と翻訳を紹介した記事があったから。」
「でどう思った?」
「マザコン!中二病を患うヒーロー擬き!」
「・・・それだけハトシェプト女王が偉大だったということでしょ・・・」
「彼女の功績と状況を思えばそうなるね。
共同統治者になった後に自分の子供や親族に王位を継がせようと思えば出来た筈だったのにしなかったから。」
「僕も見たかったな。壊される前の神殿。」
「その気持ちは理解するけどそんなにいいものじゃないよ。」
「そうだね。帰り方が分かっているなら楽しいだろうけど。」
「突然向こう側に飛ばされてアタフタしていたからね。」
「アタフタしていたんですが?」
エドの言葉に頷いた。
「当たり前でしょ。自分の術ならともかく訳の分からない術で見知らぬ場所に飛ばされたら誰だって焦るわ!。」
「そうは見えなかったんだけど。」
「エ~ド~、後でじっくり話をしましょうね。」
ディジーの言葉にそっぽを向いた。
「・・・ランカスターの門の経緯と過去の件は一旦置いておくとしよう・・・」
「そうですね。ここで話し合ったところで答えが出る訳ではないですし。」
気が付くとティーテーブルに4つの椅子、テーブルに人数分のティーセットが用意されていた。
「今回の状況を整理しよう。」
今度は比較的近い門からかなり離れた門に光の奔流が流れていく。
ディジーとタイガはティーテーブルの位置を門の射線に入らない様に黙って移動させる。
「定まらぬ者の試練は秩序を示す。」
何事も無かったように会話が再開された・・・
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