08_試練の始まり
しばらくここに滞在するのでごゆっくりとローザは奥に引っ込んだ。
エドは年の近いタイガを誘って室内に戻ろうとする。
「ちゃんと勉強しろよ。」
祖父の言葉にはーいと手をふりながら去っていった。
「確認なのですがローザさんは試練の門について知っているのですね。」
「ああ、2度目の試練にローザも巻き込まれていた。」
「ある意味テトラと同じだったと聞いています。」
自分達の力の試練はテトラによって開かれた。
前回はその切っ掛けがローザだったのだ。
マルクスは意味深な視線を教授に向ける。
「彼女ならわし等の知らぬ父親の姿も聞けるかもしれんぞ。」
「この件で父を話をしたんですが父自身は予兆の様な出来事にはあっていないと言っていました。
マルクスさんの方はどうでしょうか。」
「わしも無いな。頻繁ではなかったがそれなりお互い連絡は取っていたがそう言う話は聞いてない。」
マルクスは視線を教授の顔を向けて言葉を続けた。
「龍吾は故郷に戻り、アーサーは結婚してお前が生まれて、・・・
最後の試練はもう無いだろう思っていたよ。」
「そんな矢先にお前は体調を崩し高熱を出した。」
「・・・」
「わしの見立てでは魔力暴走。それを抑える薬のレシピは龍吾から聞いていた。」
「が、素材が手元に無かった。」
「ああ。それで龍吾が来るまでにお前の症状を緩和させることしか出来なかった。」
「素材が無かったのは元凶のせいですか?」
「ああ。あちらの干渉を防ぐ結界や護符やらを作っていたのでな。」
手にしたカップを飲み干す。
「全く、あ奴は死んでも祟りおる。」
「・・・もしかしてジル君の病気も?」
「多分な。あ奴の信奉者はまだ残っている。」
「最後の試練について何か気付いていることはありますか。」
「定まらぬものには秩序を示さん。」
「この言葉以上のことは知らぬ。」
「・・・秩序ですか・・・」
「納得できぬか。」
「ええ、秩序の行きつく先として見せられた世界には近付きたくないので。」
「そうだな。わしも行きたくない。」
「元々八百万の神々の国の出身なので一神教というか唯一神とは相性が悪いです。」
「そうだな。わしも神は信じる気にはなれんな。」
「実家の神様は信じてますけどね。」
「ふむ。」
「家の神様は八百万の神々の中では比較的力のある神様です。
でも出来ないことも多いですし、他の神様達と色々協力してますよ。」
「何か一つだけの秩序は秩序ではないと。」
「1984年の世界の絶対者はどう見ても神じゃないですけどね。
あの社会に属している存在にとっては神なんでしょうけど。
でも私から見れば邪神ですよ。」
「秩序っか」
「どうしました。」
「秩序と言っても色々ある。
絶対者による秩序
話し合いによる調和によって齎される秩序。」
「三国志みたいに三つの力のぶつかり合う三竦みによる秩序なっていうのもありますね。」
「試練の門が示す秩序はどういうものなんだろうな。」
その日の夜、ローザとマルクスは居間でくつろいでいた。
二人の間には酒ではなくハーブティの入ったポットとカップが置かれている。
「懐かしい味だ。」
「あちらでは何かと言ってこうして飲んでましたね。」
「わしは珈琲、アーサーは紅茶、龍吾は緑茶・・・
お互い好き勝手に飲む時もあればこうして誰かの淹れたものを飲んでいたな。」
彼らの試練の時はマジックバックなどない。
龍吾がそれに近いものを持っていたがそう多くのものは入っていない。
結果、現地で手に入るもので淹れたハーブティーになることが多かった。
暫く黙ってハーブティーを味わっている。
「で、何を考えている。」
「何のことでしょう?」
「あの二人だ。」
ローザは柔らかく微笑んでいる。
「もう過去になったのか?」
「どうでしょう・・・良い思い出だと思っていますよ。」
ローザの微笑みが深くなった。
「そもそもそれどころじゃなかったっというのが正直な気持ちですが。」
「ほう?」
「慣れない異国暮らし。龍吾や瑞穂さんは良くしてくれたけど戸惑うことが多かったですし。」
「ふむ。」
「慣れた頃には双子が生まれて・・・」
「それで?」
「やんちゃな双子ですよ?振り回されてアーサーのことを考える暇なんてなかったですね。」
「なるほど、アーサーはかなり引き摺っていたがな。」
「まあ、奥様に失礼じゃないですか?」
「リチャードの母親とは政略、嫌いではないが相思相愛とは言えない夫婦だったよ。
二人共リチャードのことは可愛がっていたようだがな。」
「まあ・・・」
「だからかな。子供の為にと言って試練の間に突撃する妻を止められずああなってしまった。」
「そう・・・」
「そちらはどうだ。」
「龍吾さんは今も一番は瑞穂さんですよ。」
「悔しくないのか?」
「いいえ?私も瑞穂さんのこと大好きですし。
双子は可愛いですし、3人の子供も授かったし。」
「不満は無いか。」
「無いですね。」
手にしたカップをテーブルに置いた。
「子供のことは子供がどうしたいかを決めること。
親がどうこう言うことではないですよ。
あの人にも余計なことはしないように言ってます。」
「なるほど。」
そんな会話の傍らで庭の一角に眩い光が現れていた・・・
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前日、菊音は食堂で荷造りをしていた。
「姉さん、何をしているんです。」
その様子に大虎は首を傾げている。
「明日、教授達が来るからで準備をしておかないと」
「・・・なるほど・・・」
そう言って部屋に戻るとバックを取って戻ってきた。
「何がなるほどなのよ?」
自分と同じように食料や薬、着替え等詰める大虎に呆れたように声を掛けた。
「僕の門の向こうにいってみたいので。」
「・・・最低でも母さんの許可は取りなさい。・・・」
「了解です。」
教授達が来る前日の夜の出来事です。
家族はローザ以外基本、菊音・大虎と呼んでます。




