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ヘキサグラム~我ここに在り  作者:
最終章 我ここにあり・二つの世界

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04_その頃

教授の研究室の片隅でエドは勉強の手を止め、周囲を見回す。

同じように周囲を見回す教授に声を掛けられた。

「エド、お前もか。」

「うん、さっき変なことがあったよね。」

お互い見たものを話し合い、似た体験をしているのが分かった。

「最初は真っ白な何もない場所に居て、気が付くと何かのセットみたいな場所にいた。」

「話していた言葉から多分スペインのどこかの街角だと思う。」

「そうなんだ。随分古臭い衣装だったけど。」

「言葉からして多分200年程前じゃないか。」

「ふーん、僕は気が付かなったけどリチャードやディジーも近くに居たのかな。」

「私もあの場で周囲を見たが、二人共見かけなかったな。」


「今回はちょっと変だよね。」

「そうだな。」

「今まで3人一緒だったし、向こうでもちゃんと触れたけど。」

「ああ、人が思い切りぶつかってきたけどそのまま通り抜けていったな。」

「バーチャルリアリティー?VR眼鏡でもかけていたみたいな気がする。」

見た光景にはまるで現実感が無いのだ。

ただし、夢と言うには鮮明過ぎる。


「ディジーに連絡してみるね。」

エドは手元の端末を操作している。

返事は直ぐに戻ってきた。

グリニッジ標準時20時にTV会議をしたいと言ってきている。

「了解っと」

端末をしまい、教授と向き合うエド

「今回見たのって昔のスペインだって言っていたよね。」

「ああ」

「ディジーと関係あるのかな。」

「直接は無いだろうな。」

「そうだよね。お母さんの出身はフランスだって言っていたし。」


「何でスペインなんだろう?今居るから?」

「カルメン、多分カルメンだろうな。」

「カルメンってオペラの?」

「ああ、前に見たカルメンの原稿に書かれた言葉、そして舞台となるセビリアの街。」

「そう言えば前に学会で行ったって聞いた。」

「ああ、街の雰囲気、見せて貰った資料によく似ている。」

「そうなんだ。僕は行ったことが無い・・・」

「受かったら連れて行こう。」

「本当!頑張る!」


夕方、大学を出て通り道のパブに寄る。

周囲の客はエールを片手にフィッシュ・アンド・チップスを摘まんでいる。

エドが未成年なので二人の前には大皿のフィッシュ・アンド・チップスとジンジャーエールが置かれていた。

揚げたての白身魚はサクサクの衣に包まれている。

「うん、美味しい・・・」

絞ったレモンを掛けたフィッシュを摘まんでエドは幸せそうな顔をしている。

この店はディジーに教わった。

食事は基本自炊だったディジーが時々通っていた唯一の店である。

忙しくて食事を作る暇がない時の御用達だったそうだ。

紅茶以外、特に食に拘りのない教授は教えられて以来大体ここで夕飯を取っている。

何度か付き合って一緒に夕飯を食べていたディジーはよく飽きないねと呆れていた。


食事を終えて教授が借りているアパートに戻る。

「あらすじは理解できたか?」

あの後、時間までエドは課題としてカルメンのパンフレットを読んでいた。

「うん、なんでホセはカルメンを好きになったんだろう?」

そういうエドの頭を教授はポンポンと叩くと今度オペラに連れて行こうと言った。

「えー、退屈だから嫌だ。」

「何事も経験だ。曲は悪くない。」


「ディジーのお母さんは放浪の民、カルメンと同じ立場だったんだよね。」

「立場はね。マルクスが言うには旅芸人の一座に所属していたそうだ。」

「今もあるんだ。」

「キルメスに同行していたそうだからカルメン達の様に密輸やなんだというような犯罪には関わっていないだろうけど。」

エドは昔、病気を発症する前のジルと一緒に家族で遊んだ遊園地を思い出す。

「楽しかったな・・・あれキルメスってドイツじゃなかった?」

「別にフランス出身だからと言ってドイツに居てもおかしくないだろう。

放浪の民に国は関係ない。」

「そうだけど。」

移動遊園地と放浪の民は相性が良いだろう。

遊園地の片隅で占い小屋を建てて商売をしていたそうだ。

オペラのカルメンの様に歌や踊りのショーをしているものもいたらしい。

キルメスの開園期間は1ヶ所大体2週間位。

何もない河原や広場に遊園地が現れるのは驚きだ。

エドは子供の頃、とあるドイツの田舎町に1週間程過ごしたことがある。

ホテルから見える広場に遊園地が出来上がる様はまるで魔法か何かの様だった。


「ああいう人達に移民の人達は多いのかな。」

「どうだろう?一種の技術職だから誰でも簡単に成れるというものじゃないだろう。」

「そうだね。」

キルメス・移動遊園地は夢を売る商売だ。

夢の住人になる覚悟が無いと厳しいだろう。

片言の英語やドイツ語しか喋れない様では雑用係になれれば良い方。

今の移民は家族で定住を望むものが多い。

旅烏の様に街を渡り歩く生活を彼らは望まないだろう。

大体そういう生活では定着のための教育が受けれない。

「キルメスで働く人の子供ってどうしているのかな。」

「大体一座のベースとなる街があるからそこで暮らしているんじゃないかな。」

「ディジーのお母さんもそうだったのかな。」

「どうだろうね。」

閲覧、有難うございます。

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