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ヘキサグラム~我ここに在り  作者:
最終章 我ここにあり・二つの世界

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03_図書館にて

ディジーがスペインの大学に移籍してから半年以上が経過した。

その間に約束していたマヤやテトラを日本に連れて行ったりとかしているし、教授やエドと顔を会わせたりもしているが試練が始まる気配はない。

理由は父の話と自身の経験で想像はついている。

簡単に言えば試練を望んでいないから。

父の時も教授やエドの時も試練の対価を望む理由があった。

30年前、父は瑞穂さんを助ける為、最後の試練を前に日本に戻った。

最後の試練が始まらなかったのは父が日本に居たというのもあるが教授の父親が望んでいなかったというのが大きいのだろう。


ディジーはどうかと言えば自身の今後について迷いはあるし、いずれ立場を決めなくてはならなくだろう。

だからと言って教授達を巻き込んで門の試練を受けたいかと言えば答えは否である。

そもそも自身の悩みに対する相談者として教授やエドが向いているとは到底思えないというのが大きい。


さて、現在ディジーがここで研究テーマとしているのは移民と流浪の民についてである。

文明開化や動力革命を経て現代の移動社会の影響か故郷もまた移民問題を抱えているがそもそも島国なので地続きのこっちと比べると影響度は低い。

教授達の入るイギリスもその部類だったが流石に今は欧州圏という一つの経済圏になっているのでその影響は30年前と比べ物にならないほど大きいだろう。

物理的な距離だけでなく風習や文化、文明で大きく異なる日本ではわざわざ移民しようとする人の数が移民問題が大きな社会問題となっている欧州圏とは絶対数が違うのだから。


現在、ディジーは移民問題を考えるうえで自身のルーツでもある流浪の民を研究テーマにしていた。

今はその流浪の民を主人公にした有名なオペラ、カルメンについて調べている。

カルメンが掛かれたのは1875年、舞台設定はその50年前の1820年頃、流浪の民であるジプシーたちは普通に街で働いていた。

経済問題から定住を希望する現代の移民達とこの時代の流浪の民ではどう違うのか。

母達も定住はしていないが一つの街に数年いることもある。

もっとも母達は束縛を嫌い定住しない方針だがカルメン達はどうだったのだろう。

母達と同じ束縛を嫌って定住しなかったのか?

現代の移民の様に定住を希望しているのに受け入れられていないのか?

そんなことを考えながら図書館で資料を読んでいると周囲の気配が消えた。


周囲を見渡すとさっきまでいた本棚とテーブルが消えている。

手に持っていた文献もだ。

「こういう時はまずは状況確認。」

わざと言葉にして吐き出すが変化はない。

ただただ真っ白な空間が広がっている。

「神域に似ている?」

実家で何度か出入りしている神域は最初の時は何も感じられなかった。

その空間に慣れて神の存在を感じ取れるようになると豊かな大地となった。

その空間を支配する存在に認められない内は無の空間である。

「ここが何かの存在の神域だとしたら・・・」

わざわざディジーをそこに招いたのだ。

その目的を探らなければならない。

ディジーは感覚を研ぎ澄ませ、真っ白な空間に意識を広げていった。


「捕まえた。」

何もない空間に喧噪の気配を感じそちらに手を伸ばす。

その瞬間にディジーはどこかの街角に立っていた。

「カーニバル?」

先程までみていた文献の装束を纏った男女が行きかう通り

賑やかな売り子の声、何かを売る屋台・・・

映画のセットの様な街並み、土埃を上げて走り抜ける馬車。

そしてすぐにおかしいことに気が付く。

見えている聞こえているのに匂いが気配がしない。

まるでバーチャルリアリティーの世界に迷い込んだようだ。

そして誰もディジーの存在に気が付かない。


ディジーは自分の手を目の前に持ってくる。

その手にぶつかる様に人がすり抜け、通り過ぎた。

「うーーん、なんかVRグラスを掛けてその世界を体感しているみたい。」

自分の手は透けているが見えるだけマシだった。

手を顔に当て探っているが何かの機器を付けている気配はない。

「ここでの私は幽霊?」

そう思ったところで何かの回線が切れた様に周囲の風景が揺らいだ。


気が付くとディジーは図書館のテーブルに座って文献を手にしていた。

「元に戻ったか。」

腕時計を見ると15時を指している。

ここに来てから1時間、調べものや考え事をしていたことを考慮するとあの状態は1分程度。

周りも特にディジーを気にした様子もない。

ディジーは呼吸を整えて周囲の気配を探る。

歴史のある大学の古い図書館。

過去の残滓があちこちに沁みついている。

が、・・・今ディジーが感じたような出来事を起こすようなものは見つからなかった。

「それもそうか・・・」

ディジーがここにきて直ぐにその手の調査をしている。

過去の魔術師というか司祭や何かが施した術の残滓は残っているが今に強い影響を与えそうなものはない。

「最後の試練?それにしては今までとはまるで違う・・・」

関係者を無理矢理どこかに飛ばすような大きな力の流れは無い。

というかあの六芒星が現れれば直ぐに分かる。

「2度目の時は警備員が押し掛けてきたという話だったし。」

ディジーは首を横に振って図書館を後にした。

閲覧、有難うございます。

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