13_帰還後
向うで何かさせようと思ったのですがディジーの言うバタフライエフェクトが怖いので現地人とは殆ど接触がなく帰ってきました。
2度目の冒険は現地人と関わるでしょう。
気が付くと六芒星の間に戻っていた。
時計を見ると深夜2時。
日にちを跨いでいないのならばおおよそ1時間程度の時間が経過している。
夢かと思いたいが教授の手には向うで手に入れた筆記用具。
ナップザックを開けると食べ残した果物が入っている。
3人は部屋を出て元来た道を戻り始めた。
「教授、立て替えた金貨10枚、お願いしますね。」
「ああ、分かった。・・・」
「どうかしました?」
「いや・・・こちらの金貨を残して大丈夫なのかと思って。」
「そのことですが?わざと折ったり曲げだり、叩いて形を崩して置いたので大丈夫だと思いますよ。」
「しかし・・・よく受け取ったな。向こうの商人。」
「まあちょっとしたごまかしをしてますので。」
「・・・」
「対価ちゃんと払ってますよ。
相手に損はさせてません。
まあ儲けさせてもいませんが。
もう少し値切ってやろうかとは思ったのですがね。」
その後、立て替えた金貨は倍どころか3倍になって帰ってきた。
「貰いすぎなんですが。」
「あの場でパピルス他を正当に手に入れる手段を持っていたことに対する礼だ。
気にせず受け取って欲しい。」
「はあ・・・」
休み明けの給料以上の大金を手に入れてしまった・・・
1週間後、新聞にタイムカプセルが発見されたと報じられた。
発見者は教授の友人のチャールズ・ギャラウェイ。
考古学が専門の彼は教授の送った謎かけを元に埋められたタイムカプセルを発見。
学会に報告されたそれは世紀の発見として大いに賑やかにしている。
教授は友人特権で写しを手に入れて読解に励んでいた。
「向こうで読んだんじゃないんですか?」
「読むには読んだが後世に残すことを優先して見たままを書き写すだけにした。」
「よくあれだけの量を覚えましたね・・・」
ディジーが買出しに行っていた間、彼らはレリーフを写真に収めていたらしい。
よく見つからなかったなと思っていたらエドが笑う。
教授が作業している間エドが見張りをして兵士や神官がきたら持ち込んだ機械を使って隠れていたとのこと。
その写真と写しを見比べながらぶつぶつ言っている教授をほっとくことにしてエドに聞く。
「ご両親と一緒にいなくて良いんですか?」
「うん。あっちは忙しく色々出かけているからね。」
この3人、ディジーの見たところ仲が悪い訳ではない。
財団の理事として治安の良くないところにも出向いているので子供を連れて行きたくないというのも分かる。
自分も父親が似たような状態なので理解はするが・・・
どこか違和感がある。
とは言え絶賛反抗期中のディジーには何かできることも無かった。
「ところで?」
「どうしました?」
教授の問い掛けにディジーが答える。
「私が写したもの以外もあるんだが。」
「パピルスを買ったところで頼まれた手紙、送る相手のいない書き損じも入れておいたんです。」
「書き損じ・・・ね。」
「何か問題でも?」
「いや、多分書き損じじゃないと思うよ。
内容からするとトトメス三世がハトシェプスト女王に宛てた手紙の様なんだ。」
「えっ?」
「碑文の内容からして私達が居たのはハトシェプスト女王の死後、最初の遠征が終わった辺りだと思う。」
「?ハトシェプスト女王に宛てた手紙って女王は既に亡くなってますよね?」
「ああ、死者に向けた手紙、誓いの様なものだ。」
「・・・」
「これをわざわざディジーに渡したのは何か意味があるのかな。」
「・・・あるような気がしますね・・・」
(部屋の主、こっちの正体をどこまで掴んでいたんだが。
王が神殿を傷つけることも分かっていたようだし。
王の真意を後の世に伝えたかったのか。)
「ねえ、あの場所が今どうなっているか見に行きたいんだけど。」
「そうだね。チャールズは暫くいるようだし調整してみよう。」
旅行の計画を話し始める二人にディジーは言った。
「行ってらっしゃい。」
ディジーの言葉に
「えっ行かないの?」
「私がここで受けた仕事は夏季休暇中のこの館の管理です。」
「費用なら出すが。」
教授の言葉にディジーは首を横に振る。
ディジーからすれば教授達との旅行は厄介ごとの気配しかない。
「そういう問題じゃないです。
行くなら自分のお金で友人か家族と行きますよ。」
受けた仕事はきちっとこなすが終わったら二度と関わるまい。
そう心に誓っていた。
この話を書いている時点で1オンス金貨の値段は1枚約50万円。
それが30枚となると1,500万円
そんなものを10枚持っていたディジーもディジーですが・・・